多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)で妊娠した芸能人|体験談や改善方法まとめ
2018/11/21
2023/06/06
無排卵の最大の原因とされる多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)ですが、2017年に妊娠を報告したTBSの吉田明世アナウンサーをはじめ、芸能人の中にもその症状を抱えながら妊活・不妊治療を経て、妊娠・出産をされている方がいらっしゃいます。
今回は、多嚢胞性卵巣症候群を抱えながらどのように出産までいたったのかをご紹介していきます。また、多嚢胞性卵巣症候群の治療の第一歩とされる「生活習慣の改善」方法もお伝えします。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは?
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん/PCOS)とは、排卵障害の原因の1つで、卵巣で男性ホルモンがたくさん作られてしまうせいで月経異常や卵胞の発育に時間がかかり、排卵が起こりにくくなる症状があることをいいます。
多嚢胞性卵巣症候群は、病気というよりも体質の一つと捉えた方が適切だと言われており、実は婦人科系疾患の中でも最も患者数の多い症状の1つと言われています。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の主な症状
多嚢胞性卵巣症候群の代表的な症状としては、
・月経不順や無月経
・不妊
・卵胞中の男性ホルモン増加によって引き起こされる多毛、にきび、低音声など
・肥満
などが挙げられます。
ただし、人によってはこれらの症状が出ないため、自分では判断しにくいということも多嚢胞性卵巣症候群の特徴です。 生理不順で病院に行って原因を調べてみた結果、多嚢胞性卵巣症候群だったという人も多いようで、日本では生殖年齢女性の約20人に1人程度にみられるといわれています。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)で妊娠・出産した芸能人
多嚢胞性卵巣症候群から不妊治療を経て妊娠|TBS吉田明世アナウンサー
2017年12月に妊娠を報告した吉田明世アナウンサーは、2018年3月に出演したラジオ番組内で、多嚢胞性卵巣症候群であることや、不妊治療を経て妊娠したというお話をしています。
多嚢胞性卵巣症候群の発覚には、生理後のホルモン値や排卵前のホルモン値の測定など、半年ほどかかったそうです。排卵誘発剤の服用や人工授精にも取り組まれた経験もあったそうですが、結果的に結婚してから1年以内に妊娠することができたようです。
18歳で多嚢胞性卵巣症候群と診断された|矢沢心さん
もともと生理不順だったという女優の矢沢心さんは、高校生の時に多嚢胞性卵巣症候群と診断されたそうです。生理周期を正しくするためにと処方されたピルを飲み、結婚後にピルをやめてからしばらく経っても妊娠せず、半年、1年と過ぎ、病院に相談しに行ったそうです。
当時矢沢さんは20代半ば。その時の医師の回答は、「(まだ若いから)そんなに焦らなくても大丈夫」というものだったそうですが、「夫の遺伝子を受け継ぐ赤ちゃんが欲しい。そのためにできることがあるなら、早いほうがいい」と思った矢沢さんは不妊治療をスタート、まず人工授精から始めることにしたそうです。
その後、体外受精へとステップアップし、4年の不妊治療を経て、第1子を授かりました。以前は全く来ないこともあった生理は、長女を出産してからは少し改善され、2か月に一度のペースでくるようになったそうです。そして第2子は自然妊娠で出産されたそうです。多嚢胞性卵巣症候群でも不妊治療を経て妊娠、さらに自然妊娠も可能だということを矢沢さんの体験から言えそうです。
無理なダイエットで生理が数か月来なかった?|モデルの尾崎紗代子さん
モデルの尾崎紗代子さんは、多嚢胞性卵巣症候群の原因はいまだに解明されていないと言及しながらも、無理なダイエットと偏った食生活にあったのではないかと自身のブログでつづっています。
ピルを飲まないと自力では生理が来ないという生活の繰り返しに気づき、思い切って一度ピルをやめ、食生活を徹底的に改善して自然に生理がくるようになったそうです。
その数か月後には自然妊娠し、2016年に男児を出産されています。多嚢胞性卵巣症候群を抱えながら妊娠を報告した尾崎さんの当時のブログには、同じように多嚢胞性卵巣症候群と診断された方からのコメントが多く寄せられたそうです。
生理がやっときたと思ったら無排卵月経・・・|釈由美子さん
釈由美子さんの場合も、もともと生理不順で、半年こないこともあり、医師に相談に行った際、多嚢胞性卵巣症候群が発覚したそうです。 自力で生理をこさせようという目標を持ち、食事の見直しや運動、体温を上げるための「温活」など、体質改善に励んだそうです。その後自力で生理がくるようになったものの、医師からは無排卵月経だと告げられてしまいます。
食事や運動、葉酸サプリの摂取など、妊活にいいと思われるものを続けながら病院では排卵誘発剤の内服薬を処方してもらったそうです。
長期戦を覚悟していた釈さんですが、排卵誘発剤による不妊治療を始めてから2周期目で妊娠が発覚したそうです。自身の38歳の誕生日に第1子を出産されました。
妊娠・出産した芸能人に共通していることは?
この4名以外にも、モデルでタレントの神戸蘭子さんや女優の大和田美帆さん、元フリーアナウンサーの山本モナさんなど、多嚢胞性卵巣症候群と診断されながらも妊娠・出産されている芸能人の方がいるようです。
妊娠された芸能人の方の事例を見ると、病院での診断を受けて早期に多嚢胞性卵巣症候群の改善に対応しているということが共通点としてあげられそうです。
大切なのは「放置しない」ということ
排卵障害は長期間続くと、障害が進行し、排卵を促す薬が効きにくくなってしまったり、無排卵月経のように排卵していない状態が続くと、子宮内膜が増殖し続けてがんになりやすいと言われています。 自分の生理サイクルなど、少しでも不安がある場合は、早期に受診に行くことが大切だとされています。
症状改善に必要なこととは?
多嚢胞性卵巣症候群の人の場合、現在妊娠を望んでいる・望んでいないによって、治療法が異なってきますが、どちらの場合であっても、「生活習慣を改善すること」は重要だとされています。
①適度な運動
運動不足の人は、定期的な有酸素運動を取り入れることがすすめられているようです。また、BMI値が高く、肥満の人は特に、適度な運動をして減量することで、インスリン抵抗性や代謝が改善されるようです。
ヨガやピラティス、軽いダンベル運動、早歩きなどの運動を週に5日、30分行うのがいいとも言われています。 運動をしなければと、気持ちに負荷をかけすぎずに、気分がリフレッシュできる程度の自分に合う運動方法を見つけてみてはいかがでしょうか。
特に肥満の人は生活習慣の改善が効果的という研究も
減量と運動が、多嚢胞性卵巣症候群の人の排卵機能を高め、生殖能力を向上させる可能性を示したという米国の研究(*1)があります。
研究は、過体重者または肥満者の多嚢胞性卵巣症候群の女性149人を対象に、4カ月間にわたり
①ピルの投薬
②生活習慣の改善
③その両方の介入
を受けたグループに分けて調査が行われました。
介入後に対象者すべてに4周期の投薬で排卵を誘発させた結果、出産に一番成功したグループは、②生活習慣の改善を行ったグループだったそうです。 次いで成功率が高かったのが③のピルと生活習慣の改善を併用したグループで、②と③のグループはピル投薬のみのグループと比較して、インスリンの感受性と排卵機能の改善が見られたそうです。
この研究からも肥満の方は特に、生活習慣の改善を通して減量したり、運動したりすることが、妊活・不妊治療において重要なアプローチの1つになるといえそうです。
②食生活
多嚢胞性卵巣症候群の方が食事管理を行う上で重要なのは、インスリンを過剰分泌させない食生活を心がけるということです。
インスリンが分泌されるのは血糖値が上がったときですが、インスリンが過剰に分泌されると、卵巣内の男性ホルモンが増えてしまいます。卵巣内の男性ホルモンが異常に増えてしまうと排卵しづらくなってしまうため、男性ホルモンの分泌を抑え、卵巣内のホルモン環境を改善することで、排卵しやすくなると考えられています。
血糖値を急激に上げないようにすることでインスリンの分泌が抑えられ、卵巣での男性ホルモンの分泌も抑えられるため、糖質を少し控えめに、タンパク質を多く含む食事を摂取することが大事だといわれています。
▶妊活中の人必見!食事と血糖値のコントロールで妊娠しやすい体質に?
▶妊娠のためにやめた方がいい食事とは?|専門家からのアドバイス
③ストレスからの解放
人はストレスがたまると、血糖値が上がると言われています(*3)。ストレスがかかると、アドレナリンなど、血糖値を上げるホルモンが多く出るようです。 多嚢胞性卵巣症候群の人の場合は、先に述べたように血糖値があがったままの状態でいると、卵胞の成長を阻害してしまう男性ホルモンの分泌が増えてしまいます。そのため、多嚢胞性卵巣症候群の症状を改善するためには、ストレスとのつき合い方も重要と言えそうです。
ストレスから心も体も開放するための方法として、家でゆっくりとテレビやDVDを見たり、外へ出て買い物をして友人との食事を楽しんだり、ウォーキングやストレッチ、ヨガなどで体を動かしたりするなどが挙げられます。 自分に合った好きな方法を取り入れることが、ストレスの解消と同時に、多嚢胞性卵巣症候群の改善への近道となるかもしれません。
(*1)Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism, online September 24, 2015
(*2)Human Reproduction, Volume 32, Issue 5, 1 May 2017, Pages 1075–1091
(*3)朝日新聞「血糖値上げるストレス」より
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