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多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは?|妊娠できる?

      2018/04/16

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TBSの吉田明世アナウンサーも抱えていたという「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」ですが、その言葉を聞きなれない人は多いのではないでしょうか。英語名の Polycystic ovary syndrome を略してPCOSとも呼ばれています。欧米では不妊の大きな原因の一つとされていますが、日本ではまだあまり認知が進んでいないようです。今回はその症状や原因、発症していても妊娠できるのか、完治できるのかといったことをお伝えしていきます。

PCOSとは?

排卵障害の原因の1つとされ、月経異常や卵胞の発育に時間がかかり、排卵が起こりにくくなるなどの症状があることをいいます。PCOSという名前から、何か大きな病気なのではと思う人も多いかもしれません。PCOSは、病気というよりも体質の一つと捉えた方が適切だとも言われていて、実は婦人科系疾患の中でも最も患者数の多い症状の1つと言われています。人によって症状が出なかったり、自覚しづらいことがPCOSの特徴でもあるようです。

PCOSとは?|どんな症状があるの?

代表的な症状としては、
・月経不順や無月経
・不妊
・卵胞中の男性ホルモン増加によって引き起こされる多毛、にきび、低音声など
・肥満
などが挙げられます。ただし、人によってはこれらの症状が出ないため、自分では判断しにくいようです。また、上記の男性ホルモン高値や肥満の症状は欧米人に多く見られるもので、日本人の場合はその症状が現れる人の割合が少ないと言われています。

PCOSであるかどうかの判断基準は?

PCOSの人の場合、超音波検査で卵巣をみると2mm~9mmほどの大きさの卵胞が卵巣に沿って1列に並んでいる様子が見られるそうです。この卵胞をネックレスサインと呼び、少なくとも一方の卵巣にこうしたちいさな卵胞が10個以上みられるものを多嚢胞性卵巣(Polycystic ovaries, PCO)と呼ぶそうです。

pcosネックレスサイン

日本産婦人科学会が設定しているPCOSの判断基準は以下の通りです。
①月経異常
②多嚢胞性卵巣
③血中男性ホルモン高値、またはLH基礎値高値かつ FSH基礎値正常
上記の①~③すべてを満たす場合をPCOSとするとされています。
超音波検査で多嚢胞性卵巣が見られるからと言って、PCOSの診断を受けるわけではなく、血液中のホルモン検査の結果も判断材料となるようです。

そのため、生理不順で病院に行って原因を調べてみた結果、PCOSだったという人も多いようです。日本では生殖年齢女性の約20人に1~2人に認められるという研究があるものの、あまり知られていないのは、症状がはっきりと表れず、自覚しづらいからなのかもしれません。

PCOSとは?|原因は?完治する?

原因はいったい何?

PCOSの原因については、現時点では明確には分かっていないそうです。一般的には、「内分泌異常」と「糖質代謝異常」の2つが関係があると言われています。

内分泌異常とは

PCSO分泌流れ

脳下垂体からの指令により、卵胞の発育を促進するLH(黄体化ホルモン)とFSH(卵胞刺激ホルモン)が分泌されます。多嚢胞性卵巣では、その後、LHの分泌が増えてFSHとの分泌バランスが乱れ、卵胞がうまく発育できなくなることで、排卵が起きにくくなると考えられています。

糖代謝異常とは

すい臓から分泌されるインスリンには、血中の糖濃度を調節する機能があります。しかし、血糖値が高い状態が続くと次第にすい臓の働きが鈍り、インスリンが効かなくなります。
こうしたインスリン抵抗性が卵巣などでも起こるようになると、インスリンの分泌量とともに男性ホルモンが増加することで各臓器の働きが悪くなり、PCOSといった排卵障害を招くと考えられています。

PCOSの症状は完治する?

PCOSの完治を報告している個人ブログなどもまれに見受けられますが、一般的には完治しない症状であり、体質として付き合っていくものと言われています。そのため、根本的な治療法も明らかになっておらず、治療は対症療法になるようです。生活習慣の改善から病院でのホルモン療法まで、正常な排卵を目指すためのいくつかの方法があるようです。療法については後半部分でご紹介しますが、排卵しにくい体質とされるPCOSの人にとって一番気にかかるのは、妊娠できるかどうかということではないでしょうか。

PCOSでも妊娠できるの?

多嚢胞性卵巣(PCO)を持つ女性の7割が排卵に問題を抱えていると言われていまが、うまく排卵が促されれば、他の不妊原因を持つ人よりも妊娠しやすいと言われています。
また、排卵の頻度が少ない傾向にあるものの、うまく排卵していれば妊娠することも可能なので、PCOSだと気づかないまま自然妊娠している人もいるようです。

PCOSの人が妊娠できる確率は?

海外で行われたPCOSと診断された91人の女性の追跡調査では、86.7%の女性が1人以上の子どもを出産したという結果が出ているそうです。また、91人の女性のうち自然妊娠したのは63.8%だったそうです。ただし、この結果は9年かけて行われた調査によるものなので、PCOSの人の妊娠率に関しては、時間はかかるが、妊娠する確率は決して低くはないと捉えることができそうです。芸能人の方でもPCOSと診断されながらも、妊娠・出産をされている方がいます。

PCOS|症状緩和の治療法は?

悩む女性

上記でも触れたようにPCOSの根本的な治療法は、まだ明らかになっていないとされています。ですが、排卵しにくい体質でも、排卵を促す治療や排卵しやすい体質に導く方法があるそうです。基本的には月経周期とホルモン値を正常にすることを目指した方法がとられ、妊娠を希望する人としない人では、その方法もまた異なってくるようです。

今すぐ妊娠したい場合の治療法は?

PCOSの人それぞれの状況に合わせて治療が行われ、人によっては下記の治療法のうちいくつかを併用することもあるようです。

一般的な治療法
○クロミッド(成分名:クロミフェン)の服用
月経がなかなか来なかったり、反対に、月経が止まらない、周期が一定でないといった症状があり、排卵に問題がある場合、排卵誘発のためにクロミフェンの服用を行うことが多いようです。クロミフェンは脳の視床下部に働きかけ、卵胞刺激ホルモンの分泌を促す働きがあると言われています。クロミフェン自体に、排卵を強制的に行う作用はなく、副作用のリスクも少ないと言われています。クロミフェンを継続して使用することで、約70~75%の確率で排卵が起こり、妊娠率は25~30%になるとされています。25~30%という妊娠率は、不妊治療を必要としない女性の妊娠率と同じと言われているそうです。しかしクロミフェンには、子宮内膜が薄くなったり、女性ホルモン効果を減弱させる作用があったりするなどの副作用がみられることもあるようです。
内服薬で排卵できれば、タイミング法や人工授精、体外受精が行えるそうです。

○性腺刺激ホルモン剤の注射投与
クロミフェンの服用で反応があまり見られない場合には、注射による排卵誘発へとステップアップしていくようです。ただし、性腺刺激ホルモン剤の注射を行った場合、いくつもの卵胞が同時に急に大きくなってしまうと、卵巣が腫れ腹水や胸水が溜まってしまう卵巣過剰刺激症候群(OHSS)とよばれる副作用をおこす傾向もあり、注意が必要だとされています。

○凍結胚移植
PCOSによる不妊の女性を対象として、凍結胚を使うことで出生する割合の調査が行われました。結果、凍結胚移植のほうが新鮮胚移植よりも出生が多かったようです。しかし、妊娠・出産に関わるリスクも見られたと言われています。予想されるリスクについてもよく理解し、万一の場合を考えておくことも大切だと言えるでしょう。
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肥満・2型糖尿病の人向けの治療法
○体質改善(減量、運動療法)
PCOSの人でも、特に肥満が見られる方の場合には、まず減量や運動療法を行うそうです。BMIを正常値に戻すことで排卵が再び起こるという実証が多くあるので、BMI 値25以上の人は肥満の解消だけでも効果が期待できるようです。ただし、急激な減量は月経異常の原因になるため、6か月間で5~10%の減量を目標として減量を行うのが理想的とされています。

○メトフォルミン
インスリン抵抗性がある人の場合、直接肝臓に働きかけて血糖値を低下させるメトフォルミンの摂取がすすめられているようです。血糖値を下げることでインスリンの分泌が抑えられ、卵巣での男性ホルモンの分泌も抑えられるそうです。その結果、卵巣内のホルモンバランスが改善され、正常な排卵がしやすくなるようです。メトフォルミンの投与によって、インスリン抵抗性であったり、クロミフェンが効かなかったりした患者の排卵率・妊娠率が上昇したという事例が多数報告されているようです。

体質改善以外の治療法には少なからずも副作用があることに留意しなければなりません。医師から治療のメリットと、副作用などのデメリットをしっかりと聞いておくことが重要かもしれません。

今は妊娠を希望しない場合の治療法は?

さしあたりすぐに妊娠を希望していない場合、月経を周期的におこすような治療を行うようです。無月経が続き、子宮内膜が女性ホルモンの刺激を受け続けると、子宮体がんが発生しやすくなる可能性があると言われています。そうしたリスクを低減させたり、排卵抑制により卵胞の増加を防いだりするために、低用量ピルや黄体ホルモンなどの治療を行うことがあるようです。
また、インスリン抵抗性がある人は、上記のようにメトフォルミンを使用することで自然排卵が起きる可能性もあるため、服用をすすめられることがあるようです。

PCOS|放置したらがんになることも?

無排卵月経のように排卵していない状態が続くと、子宮内膜が増殖し続けてがんになりやすいことが知られています。また、排卵障害は長期間続くと、障害が進行し、排卵を促す薬が効きにくくなってしまうということが懸念されます。
「生理がきているから排卵している」とはとらえずに、生理不順であったり、基礎体温が二相になっていないなど、自分の生理サイクルに異常を感じている方は一度医師に相談してみるのがよさそうです。

*出典:https://academic.oup.com/humrep/article/24/5/1176/710946