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体外受精の成功率は?20代、30代、40代の年代別妊娠確率

      2019/01/21

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 体外受精は体にも家計にも大きな負担がかかるため、可能な限り少ない回数で妊娠に成功したいものです。そのため、体外受精を考え始めたときに気になるのが、その成功率です。体外受精の成功率は、女性の年齢に大きく左右されます。この記事では年代別の成功率について統計をもとに解説します。

体外受精とは

まずは、体外受精について簡単に説明します。

体外受精は、卵子を卵巣から採取し、体の外で精子と合わせて受精を行う治療のことです。
培養液の中で精子と卵子を混ぜ合わせ、自由に受精させるという点は自然妊娠と変わりません。

特殊な受精の方法として、「顕微受精」という手法もあります。体から卵子と精子を取り出すところまでは同じですが、受精方法が異なります。顕微受精は、細い針状のガラス管に精子を1匹吸引し、それを直接卵子に注入する方法です。

体外受精などを行っても受精ができなかった場合や、他の治療では妊娠が見込めない(その可能性が極めて少ない)時にこの治療が選択されることがあります。

体外受精の年代別成功率

同じように体外受精を行っても、成功率には違いがあります。

体外受精の成功率を大きく左右するのが、女性の年齢です。日本産科婦人科学会が発表した、ARTについての調査データがあります。ART(Assisted Reproductive Technology)とは、体外受精・顕微受精・新鮮胚移植・凍結胚移植など、高度な技術を使用した生殖補助医療のことです。

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複数のグラフがありますが、女性の年齢が上がるにつれて明らかに妊娠率・生産率が下がり、流産率が上がることが見て取れると思います。

妊娠率を示す青と赤の2つのグラフの違いは、分母です。

ETとは、胚移植のことです。「妊娠率/総ET」は、胚移植を行った人の中で妊娠できた割合を表しています。受精卵を培養し、成長を確認して無事に胚移植できた治療例のみを分母にしているのです。

一方で総治療は、卵子の採取ができなかったり受精卵が成長しなかったりと、止むを得ず中止になった治療もその中に含まれています。そうなると、総ETに比べ必然的に分母が大きくなります。

そのため、妊娠率としては総ETが高く総治療が低くなっているのです。

病院やクリニックが公開している妊娠率のデータを見る場合は、分母を確認すると良いでしょう。

出典:日本産科婦人科学会
https://plaza.umin.ac.jp/~jsog-art/2016data_20180930.pdf

20代の体外受精成功率

20代の総治療に対する妊娠率は約23~28%といったところです。妊娠率は、20代前半ではなく27~28歳でピークを迎えています。他の年代と比べてみても、20代の妊娠率が高いことがわかります。

30代の体外受精成功率

30代の妊娠率は、35歳前後で変化が大きくなります。
30代前半では、20代後半の妊娠率とほぼ同じくらいを保っていますが、36歳あたりから妊娠率の下がり方が大きくなっていることが分かります。

流産率も36歳から上がり方が急になっています。

40代の体外受精成功率

40歳と41歳の総治療数に対する妊娠率は、10%以上を維持していますが、42歳からは1桁台となっています。
特に43〜45歳を境に妊娠率が0.5~1%へ下がると同時に、妊娠した場合の流産率がぐんと上がっています。

総ET数における妊娠率は、40~41歳では20%以上となっています。しかし、こちらも45歳以降は1桁台の妊娠率となっており、治療期間や費用、肉体的・精神的にも大きな負担がかかることが予想されます。

厚生労働省では、不妊治療への助成金制度を2016年から43歳未満という年齢制限を設けました。年齢が上がるにつれて不妊治療の成功率は確実に下がります。「まだ大丈夫」と楽観視しすぎず、ご自身の体と向き合うようにしましょう。

出典:厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000047270.html

新鮮胚移植と凍結胚移植の成功率

新鮮胚移植と凍結胚移植の違い

受精卵(胚)を子宮に戻す方法はふたつあります。

受精卵を女性の子宮内に戻すことを胚移植と言います。採卵したその周期内で移植することを「新鮮胚移植」、冷凍して別の周期で移植する方法を「凍結胚移植」といいます。

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近年では、新鮮胚移植よりも凍結胚移植(FET)が多く用いられています。2008年以降、凍結胚移植が新鮮胚移植の出生数を抜き、2016年の段階で出生数の80%以上を占めるまでになりました。

凍結胚移植は採卵後の別周期で行うため、子宮内膜が着床にとってベストなタイミングで移植を行うことが出来ます。

かつては胚の凍結・融解の過程で胚に対してストレスがかかると言われていましたが、最近では凍結・融解技術も向上しています。

出典:日本産科婦人科学会 データブック2016 「年別 出生児数」
https://plaza.umin.ac.jp/~jsog-art/2016data_20180930.pdf

新鮮胚移植と凍結胚移植の妊娠率

それでは新鮮胚移植・凍結胚移植それぞれの年齢別妊娠率のデータを見てみましょう。

卵子と精子がうまく受精すると細胞分裂がスタートします。この状態を「胚」と呼びます。始めは1つの塊だった受精卵が2つ4つと細胞分裂し、最終的に受精卵が子宮内膜に着床できる状態が「胚盤胞」です。

近年の医療技術の向上により、受精卵を胚盤胞まで成長させてから移植することが可能となりました。胚盤胞を子宮に戻すことで、着床率が高くなる・良質な胚を選ぶことができるなど、様々なメリットがあります。
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初期胚移植の場合、新鮮でも凍結でも妊娠率にそこまで差はないように思われます。
しかし、胚盤胞移植においては凍結の妊娠率がより高いことが分かります。

新鮮胚盤胞移植の妊娠率が平均29%なのに比べ、凍結胚盤胞は平均38%とその差は歴然です。SET(Single Embryo Transfer)とは「1個胚移植」を意味します。

日本産婦人科学会の見解では、胚移植は3個以内とし、特に35歳未満の治療では1回に1個を原則とするとされています。
もちろん、それぞれの治療歴や年齢によって担当医師がその個数を検討することになります。

このデータでは、1個の胚移植の場合の妊娠率を示しているので注意してください。

出典:日本産科婦人科学会 データブック2016 「移植ステージ別・年齢別の移植あたり妊娠率」https://plaza.umin.ac.jp/~jsog-art/2016data_20180930.pdf

体外受精の受精率と着床率

体外受精の受精率

全国単位での体外受精率・顕微受精率は公表されていないようですが、各産婦人科や不妊治療クリニックが独自にとっているデータによると、体外受精率・顕微受精率はおおよそ70%以上です。

つまり、10個の卵子を体外受精した場合、7個以上は受精するという計算になります。

体外受精でも顕微受精でも受精率に大きな差はないようですが、男性因子での不妊においては顕微受精の方が受精率は高くなります。

男性因子の場合、精子無力症や無精子症など精子自体に卵子に入っていく力がなく、体外受精を行っても受精しづらいためです。そこで、人の手で直接卵子内に注入してあげることで、受精の確率が上がります。

アメリカの論文によると、男性因子の不妊の場合、体外受精でのキャンセル率(受精できていなかったり、受精できても分割が起こっていなかった割合のこと)が13.6%なのに対して顕微受精では6.3%と、体外受精よりも顕微受精の方が移植キャンセル率が少なかったという結果が報告されています。

ただし、不妊の因子が男性でない場合は移植キャンセル率に変化はありませんでした。

出典:
医療法人浅田レディースクリニック
https://ivf-asada.jp/huninqa/ivficsi/index_4.html
2011年7月掲載時点

医療法人後藤レディースクリニック
https://goto-ladies.com/treat/taigaijusei.html

英ウィメンズクリニック 公式ブログ
https://ameblo.jp/hanabusa-clinic/entry-12408113716.html?frm=theme

JAMA January 20,2015 Volume 313,Number3
https://preview.thenewsmarket.com/Previews/JOUR/DocumentAssets/362625_v3.pdf

体外受精の着床率

次に、着床率についてお話ししていきます。
着床率は、着床後胎嚢が確認できた数÷移植胚の個数×100で求められます。

少し難しいので具体的に説明します。例えば、20人に対して合計24個の胚を移植したとします。そのうち、10個が子宮に着床し胎嚢が確認されました。これを計算すると、着床率は約41%となります。

この着床率は、全国的な統計結果が出ていません。そのため、各クリニックが提示しているものや海外のデータに頼る部分が多くなってしまいます。そうなると、どうしても症例数や結果に違いが生じてきます。

データによって若干の差はありますが、胚盤胞まで育った受精卵において、平均的に30代前半で約35%、30代後半で約25%、40代で約10%という結果です。

これは胚盤胞でのデータですので、初期胚の場合着床率はもっと低くなる可能性もあります。

なぜなら、良質な受精卵の中でも限られた胚しか胚盤胞に到達することができないからです。また、胚盤胞は自然に着床する時の胚に近い状態なので、初期胚に比べ着床率は約2~3割高くなるとされています。

日本全体で統計を出す際の基準にあいまいな点があるなど、不妊治療における調査はまだまだこれらかといったところです。しかし、少しずつではありますが各クリニックが情報を共有しより質の高い治療を提供できるように進みつつあります。

出典:
杉山産婦人科 新宿
https://www.sugiyama.or.jp/shinjuku/consult/ivf

横浜HARTクリニック
https://yokohama-hart.jp/blog/染色体が正常な受精卵の割合/

金山レディースクリニック
http://klc.ne.jp/fertilitytreatment/informedconcent01.html

セントベビークリニック
http://stbaby.org/ivf/

体外受精の成功率を上げるには

体外受精の成功率を上げるには、どうしたらよいのでしょうか。

1つには、体内環境を整える事がとても大切です。体内環境を整えることによって良質の卵子が作られ、子宮の内膜も厚くなるので、体外受精の成功率が上がりやすいと言われています。バランスの良い食事と十分な睡眠、早寝早起きなど規則正しい生活、そして適度な運動を心がけましょう。

ストレスをためない事や、体を冷やさない事も大事だと言われています。ストレスはホルモンバランスの乱れにつながり、冷えは血流の悪化につながります。

また、煙草を吸っている人は禁煙を始めるとよいでしょう。副流煙でも影響は大きいので、喫煙者の多い環境はなるべく避けるのが理想です。パートナーが吸っている場合には精子の質に影響が出るそうなので、二人で禁煙する事が望ましいとされています。

執筆者

嶋津佑亮
大学院修士課程修了。看護師・保健師免許保有。
都内の総合病院で看護師として勤務する傍らで、医療系ライターとしても活動中。
根拠に基づいた正確な情報をわかりやすい形でお届けさせていただきます。