凍結胚移植とは?移植スケジュールと着床時期、妊娠率
2019/02/22
2019/02/22
体外受精や顕微授精といった生殖補助医療(高度不妊治療)によって卵子と精子が受精した場合、その受精卵を子宮に戻すときには、採卵と同じ周期で胚移植を行う「新鮮胚移植」と、一旦受精卵を凍結保存し、後の周期で移植する「凍結(胚融解)胚移植」があります。
今回は「凍結胚移植」について、移植の流れやメリット・デメリット、費用、妊娠の確率までを解説します。
凍結胚移植とは?
体外受精などの治療のために採卵・受精し、いくつかの胚が培養に成功したとしても、1回に移植できる胚の数は原則1つ。これは、不妊治療で多胎児妊娠を避けるために決められています。 治療回数や女性の年齢などを考慮しても、最大2個までしか胚を子宮に戻すことはできません。 しかし、治療の度に排卵誘発や採卵をするのは、女性の体に負担がかかります。そこで、1回の採卵で複数個の良質な胚が育った場合に、質の良い胚を複数個凍らせて保存するのです。 凍らせた胚は希望すれば数十年にわたって保存することができ、次回以降の胚移植で使用します。
凍結胚移植|全胚凍結と余剰胚凍結
・全胚凍結 凍結胚移植では採卵した同じ周期には胚移植を行わず、全ての胚を凍結することがあります。この方法を「全胚凍結(ぜんはいとうけつ)」といいます。 母体の健康状態が良くない場合(OHSSの発症など)や、移植予定時期に子宮内膜が着床しやすい状態になっていないなど、移植のタイミングが適切でないと判断されたときに適応されます。
・余剰胚凍結 前述した全胚凍結と異なり、採卵した同周期に胚を1つだけ移植します。この周期では選ばれなかったけれど、質の良い胚を凍結して保存しておく方法を「余剰胚凍結(よじょうはいとうけつ)」といいます。
凍結胚の移植方法
凍らせた胚は移植時期に合わせて融解(解凍)して使用します。胚を移植する時期については基本的に、排卵後の子宮内膜が着床しやすい状態になっていることが目安です。 融解胚移植をする際には、受精卵の日齢と内膜の周期を同期させる必要があり、その方法には「自然周期(排卵周期)」「ホルモン補充周期」の主に2種類があります。
・自然周期(排卵周期) 個人の月経周期から排卵時期を特定して、着床しやすい時期を推測します。超音波検査によって排卵を確認しながら胚を移植するタイミングを決めるので、スケジュールが組みにくい方法ですが、ホルモン剤を使用しない、もしくは使用しても短期間なので、自然に近い方法です。 ただし、月経周期がバラバラだと胚移植の予定が立たないので、周期が一定でないと選ぶことはできません。移植のスケジュールによっては、排卵を確実に起こすためにHCG注射をすることも。 妊娠確定後は、妊娠維持に必要な黄体ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)が自然に分泌されますが、一時的に黄体ホルモンを補充することがあります。
・ホルモン補充周期 2種類のホルモン剤(エストロゲンとプロゲステロン)を毎日使用することで、排卵を起こさずに月経周期を作り出します。移植後も着床しやすいように子宮内膜を厚くする効果も。 あらかじめ移植する予定日を決めておき、そこを目標に効果が出るよう薬を使います。胚を移植するタイミングを人工的に調整することができるので、仕事をしている人にはスケジュールを組みやすい方法です。 移植までに子宮内膜の厚さが十分にあると確認された場合に、胚移植の日を確定。十分な厚みに満たない場合には薬を増量する、または変更することがあります。 もし胚が着床したとしても、実際には排卵が起こっていないので妊娠を継続するために必要な黄体ホルモンを分泌できません。そのため、妊娠が確定した後も妊娠9~12週ころまで黄体ホルモンを補充する必要があります。
凍結胚移植のメリットとデメリット
凍結胚移植のメリット
・新鮮胚移植に比べて、妊娠率が高く、流産率が低い。 ・多胎のリスクを減らすことができる ・OHSS(卵巣過剰刺激症候群)を回避する可能性が高い。
凍結胚移植のデメリット
・治療が採卵周期よりも1周期以上遅れる・・・採卵後に一旦凍結するため、採卵周期の次週期以降での移植になる。 ・凍結・融解による胚の変性・・・一定の確率(5-10%程度)で融解後の胚に変性が見られるという報告があるそうです。 ・費用負担・・・胚の凍結・保存・融解操作などのコストがかかるうえ、移植が急にキャンセルになった場でもキャンセル料がかかるなど、費用が高額である。
参考URL:一般社団法人 日本生殖医学会 / 不妊症Q&Aよくあるご質問 / Q14.受精卵の凍結保存とはどんな治療ですか?http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa14.html 最終確認日:2019年2月12日)」
凍結胚移植のスケジュール
凍結胚移植から妊娠判定までのスケジュール
通常、胚移植を行う日は排卵後の5~6日目。凍結保存した胚を融解するのは、移植前日から当日までの間に行われます。移植後、2週間で妊娠判定(採血)のためにクリニックを受診します。 クリニックによっては、移植後1週間目にホルモンの状態などをチェックするために受診する必要があります。
凍結胚移植にかかる費用は?
ここではいくつかのクリニックでの凍結胚移植にかかる費用を参考にしています。凍結胚移植をうける大体の費用として参考にして下さい。 ・採卵料:106,400~150,000円 ・卵子と精子、受精卵などの調整液、培養:120,000~140,000円 (調整液:約50,000円 初期培養(採卵後1~3日目):約50,000円 胚盤胞培養(採卵後」4~6日目):約20,000円) ・受精卵凍結保存技術料1年保険(3~4個まで):50,000~70,000円 (*受精卵1個追加につき6,000円 または 5個以上は75,000円 など) ・凍結受精卵融解技術料:約40,000円 ・胚移植料:54,000~60,000円 以上、凍結胚移植にはだいたい300,000~400,000円かかる計算になります。 これに、移植キャンセル料や1年ごとに受精卵凍結保存延長料(30,000~40,000円)がかかるので、治療が長期にわたるとさらに費用はかかるでしょう。 当然それぞれのクリニックによって凍結胚移植にかかる費用は異なるので、必ず事前に確認してくださいね。
凍結胚移植の妊娠確率
2007年以降、凍結胚移植の妊娠確率は30~35%。一方、新鮮胚移植の妊娠率は20~25%です。つまり、採卵と同じ周期で移植するよりも胚を凍結してタイミングを見計らう方が妊娠率が高いことが分かっています。
「参考URL:第66回日本産科婦人科学会学術講演会 専攻医教育プログラム 生殖補助医療 / 年別妊娠率・生産率 http://jsog.umin.ac.jp/66/handout/8_1Dr.shibahara.pdf (最終確認日:2019年2月12日)」
凍結胚移植の高い妊娠率については、まだはっきりとした理由は解明されていません。凍結される胚は妊娠する可能性があるとして選ばれている上に、凍結や融解の刺激にも耐えることができる良質なものだという意見があります。 また、採卵周期はホルモンの状態が通常よりも高いので、同周期で移植を行っても、子宮内膜が着床のための準備が整っていない可能性があるという意見など、さまざまです。 凍結胚移植の方法では、「自然周期(排卵周期)」と「ホルモン周期」による違いは妊娠率に違いはないとされています。どちらの方法を選ぶかは、自分の状態やライフスタイルなど負担ができるだけ少ない方法を選ぶと良いですね。
執筆者
小坂 恵 看護師。総合病院(婦人科、外科、脳神経外科、整形外科、放射線科など経験)で6年勤務し、出産を機に退職。その後、美容皮膚科・形成外科クリニックと訪問看護ステーション(ダブルワーク)で看護師として復職し、現在6年目。看護師を続けながら、Webライターとして美容、医療、健康系の記事を主に執筆。美容の認定専門家として記事監修・コメント執筆を行っている。
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