排卵がある人、年齢が高い人は自然周期法が向いている?
2019/09/26
2022/12/06
JR神田駅から徒歩1、2分に位置する「あいだ希望クリニック」。自然周期法を中心とした不妊治療を行うクリニックです。今回院長である、会田先生に自然周期法について、どんな方が向いているのか詳しくお話をお伺いしています。
日本初「体外受精培養後期負担金制度」を設けたクリニック
ー 貴院は2014年に開院されて6年目となります。ご来院の患者様の年齢層は平均で何歳位の方が多いのでしょうか。
会田先生:私どもの患者様は、40歳を超えていらっしゃる方が多いです。
ー 貴院は日本で初めての料金体系 「体外受精培養後期負担金制度」を設けていらっしゃいますが、こちらはどのような制度なのか教えて下さい。また、どのような経緯で設けられたのでしょうか。
会田先生:通常、治療が体外受精胚移植まで進むと、その後、妊娠に至らない場合であっても、だいたい平均40万円、またはもう少し費用がかかる位だと思います。
しかし「妊娠しないのに何故そんなにかかるの」という、患者様の心の声が聞こえてくるような気がしたのです。
妊娠に至らない事が続くと、あと1回か2回で妊娠するだろうなという方も経済的な理由で諦めざるを得ないといった問題もあったので、妊娠しなかった場合は、半額程に設定して経済的負担を減らすようにしよう、と。
自然周期法はどんな方法?メリットは?
ー貴院は「自然周期法」と呼ばれる治療方針でいらっしゃるかと思いますが、具体的にどのような方法になるのか、メリットも含めて教えて下さい。
会田先生:具体的に言うと、本当の意味の自然周期法というのは、自然に排卵するであろう卵子を排卵直前に採卵し、精子と出逢わせるというのが本当の意味なんです。
自然周期法の良い点は、そもそも自然に成長してきて排卵される卵子が、精子と出逢って赤ちゃんになる卵子なので、卵子で言えば本来の自然妊娠と遺伝子的には一緒だということです。
そもそも体外受精を何故行うのか、という話になるのですが、体外受精というのは「卵管の中で精子と卵子が出逢えてない」とか「受精しない」または「体の中で受精卵になっていないであろう」という方に行うというのが本来の意味だと思うのです。
ご自身の排卵がきちんとある方は、ちゃんと排卵してくれる卵子が一番いいよ、という事で行っている方法なのです。 薬などを使って無理やり卵子を育てると、卵子にしてもちょっといい迷惑な話です。
例えば「私の出番は来月だから、今月はエステにでも通って自分磨きでもして、来月のお見合いパーティーに備えよう」と思っていたのに、いきなり寝起きを連れ去られて突然お見合いをさせられたら、どんなにいい人でもうまくいかない、ということが多いと思うんですよ。
それから、沢山取ると、質が落ちるだろうというのは、桃などと同じで、一つの枝に実が10個なるのと、1個なるのと、どっちが美味しいのかっていう話なんです。 1個のほうが美味しいんです。そのために、桃園の人は1個のために剪定をしているんです。
その原理でいくと、卵子も、本来だと何個かある複数の卵子の中から、生理が始まって1週間くらいかけて自分の体で排卵されるたった1個を選んできているんですね。その選ばれた卵子というのは、こちらで無理やり薬で育てるよりは良いのではないかと。
40代でも加藤レディスクリニックから妊婦がやって来る。どんな秘密が?と思った
今から、20年ほど前に、私は順天堂大学の大学病院で不妊治療を行っていたのですが、当時、加藤レディスクリニックから体外受精をされた方が妊婦さんでいらっしゃっていたんですね。
その多くの方の年齢は42、3歳の方でした。その当時、順天堂大学では、40代というのは不妊治療をしても難しい、という認識だったんですね。
ところが加藤レディスクリニックだと40代でも普通に妊娠されていたので、そこに一体どんな秘密があるのだろう、という想いがあったんです。
そこで、実際に加藤レディスクリニックに研修に伺わせて頂いたのですが、自然周期法で自然に出てくる1個の卵子を採って、普通に体外受精しているだけだったんです。
加藤レディスクリニックの培養技術はしっかりしてるし、世界一だと言ってもいいのだと思うのですが、それ以上に自然に出てくる卵子がいかにいいのか、ということになるわけですね。
40代でも自然妊娠する方も普通にいるし、なぜ、刺激周期法*で体外受精を行うと逆に妊娠しないんだろう、と考えると、薬を使って余計なことをしているからなのではないかと。
だから、採卵時の(卵子の)質が下がっているのではないか、という想いに至って、無理矢理育てる卵子だから、質が下がっているのではないか、という考えになり、ある意味、自然周期主義者になっていますね。
当院では、今まで不妊治療をしていなかった42歳位の方がいらっしゃると、1回か2回で妊娠していく方が多いのです。そういう意味で行くと、年齢が上がってきた場合は自然周期の方が良いのではないかと思います。
年齢が高い40代は自然周期法の方がおすすめ?
ー 年齢が高い方は自然周期の方が向いていると?
会田先生:そうだと思います。
ー 具体的に年齢が高いというのは何歳くらいのことを指しますでしょうか。
会田先生:40代ですね。逆に若い方の場合は、排卵誘発を使えば、卵子は沢山採れるので、1回で妊娠出来る確率は高いと思うのですが、そうはいっても、若ければ自然周期法で1回か2回で妊娠する事が多いのです。
そう考えてしまうと、無理矢理、注射を打たなくても、1回か2回で妊娠するんだったら、自然周期法でもいいのかな、という想いも少しあります。
ー 逆に自然周期法が向いていない人というのはあまりいないのでしょうか?
会田先生:そう思いますね。向いていない人は、なかなか排卵しない人です。
そういった人には薬を使わざるを得ないので。 AMHが低い方は、もともとの残っている卵子の数が少ないということは正しいと思うので、それを無理やり、注射で育てようとすると、余計、数が減り、AMHが一気に下がるという問題もあるので、そういう方こそ、使わない方が良いのではないかと。
もともとAMHが高い方は、注射で刺激をしてもしなくても、それは、患者様のお考え次第です。採卵を出来るだけ1回で終わらせたいという方は、刺激周期法の方が有利かなと思います。
自然周期法は高齢の方にこそ向いている、AMHが低い方にも向いている、というのは意外でした。若い方やAMHが高い方は刺激周期法でもいいけれど、自然周期法でも妊娠しやすい、ということで、若い方の場合は考え方によって決められる、ということですね。会田先生ありがとうございました。(不妊治療net編集部)
*刺激周期法・・・注射や内服で卵巣刺激を行い、複数の卵子を育てて採卵を行う方法。複数の卵子を採卵し、複数の受精卵が得られる可能性が高まる。胚移植や凍結保存ができる可能性も高い。一方で刺激による体への負担、通院回数が多く、費用も高額となる。
会田先生のご紹介
会田 拓也
経歴
1997年3月 順天堂大学医学部卒業
1997年4月 順天堂大学医学部産科婦人科教室入局
2002年10月 山王病院リプロダクションセンター
2003年3月 順天堂大学大学院医学研究科卒業
2006年1月 越谷市立病院産婦人科
2006年12月 高崎ARTクリニック院長
2009年12月 加藤レディスクリニック
2011年9月 Shinjuku ART clinic 診療部長
2014年7月 あいだ希望クリニック 院長就任
所属学会・資格
順天堂大学医学博士 日本産科婦人科学会専門医 日本生殖医学会 日本受精着床学会 日本卵子学会 日本IVF学会
※あいだ希望クリニックは、2022年11月30日をもって閉院しております。
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