不妊治療の平均費用はいくら?保険は適用?助成金と医療費控除
2019/01/24
2021/04/26
夫婦生活を行っているのになかなか妊娠しないと、不妊症ではないかと不安になる方は多いでしょう。不妊治療を検討し始めると気になるのがその費用です。
不妊治療は保険適用になるものと適用外のものがあり、手法によって料金が大きく異なります。高額な治療費を思い浮かべがちな不妊治療ですが、治療の初期ステップであれば比較的安価と言えます。安心して治療を受けるために、あらかじめ費用の相場を知っておきましょう。
不妊治療は保険適用される?
不妊治療には大きくわけて3つのステップがあります。
検査で排卵予定日を予測し医師にタイミングを指導してもらうタイミング法、採取した精子をカテーテルで子宮に送る人工授精、採取した卵子と精子を体外で受精させて子宮に戻す体外受精です。
2021年度末までは、公的医療保険が適用になるのはタイミング法のみです。人工授精と体外受精は、事前の検査や投薬も含めてすべて自費診療となります。人工授精までは比較的安価ですが、体外受精からは大きく費用の負担が増えます。
2022年度からは公的医療保険適用に
政府は、2022年度から不妊治療に公的医療保険を適用する方向性を示しています。これが実現すれば、高額になりやすい体外受精や顕微授精の治療においても、治療費の3割負担が適用されるようになります。
それぞれの不妊治療にかかる平均費用
タイミング法の平均費用
タイミング法は、医師が予測した排卵日に合わせてタイミングをとる治療法です。不妊治療におけるファーストステップで、多くの病院で最初に提案されます。
月経や基礎体温などの問診と超音波検査や血液検査の結果から、排卵がうまくいっていないことがわかる場合は排卵誘発剤が処方されます。これらも保険が適用されるので、平均的な合計費用は数千円〜3万円程度になります。
また、全国一律の制度はありませんが、自治体によっては助成金を申請できる場合があります。お住まいの自治体のホームページや役所窓口で確認してみましょう。
人工授精の平均費用
人工授精とは、採取した精子から雑菌を取り除いて濃縮し、カテーテルという医療用の管で子宮に送る不妊治療です。
「人工」という言葉の響きからハードルが高い治療と思われがちですが、体内で精子と卵子を自由に受精させるという点では自然妊娠と同じです。平均費用も1−3万円と、比較的安価です。
注意が必要なのは、2021年現在では人工授精以降の治療は公的医療保険の適用外ということです。日本では保険適用と適用外の治療を同時に行うこと(混合診療)ができませんので、事前の検査や排卵誘発剤の処方などもすべて自費診療となります。
なお、タイミング法と人工授精を合わせて一般不妊治療と呼びます。助成金制度などの説明で「一般不妊治療を対象とする」という記載があれば、人工授精までの治療法が助成対象ということです。
体外受精の平均費用
身体的にも費用的にも大きく負担が増えるのが体外受精です。
体外受精とは、採取した精子と卵子を容器の中で混ぜ合わせて受精させ、数日培養してから子宮に戻して着床させる治療法です。顕微鏡下で卵子に精子を直接注入する手法は顕微授精といい、体外受精の応用的治療法です。
採卵・受精・培養・胚移植(受精卵を子宮に戻すこと)などの施術ごとに料金が設定されており、1回の治療周期につき30〜60万円程度になります。顕微授精を行う場合はさらに平均で5〜10万円ほど高くなります。
また2021年現在では、人工授精と同様に体外受精も公的医療保険の適用外です。事前の検査や排卵誘発剤の処方もすべて自費扱いになります。特に体外受精では、1回の採卵で多くの質の良い卵子を採取するために排卵誘発剤をたくさん使って排卵をコントロールする場合があります。これらの投薬も自費診療になるため、合計金額が100万円を超す場合も少なくありません。
病院やクリニックの料金表は「施術費」のみ書かれている場合も多いので、不安な場合は医師や看護師に費用について相談してみると良いでしょう。
体外受精と顕微授精でかかった費用の平均は?
妊活中女性専用SNSの「妊活ボイス」の調査によると、体外受精と顕微授精を含む高度生殖補助医療経験者の治療費総額の平均は193万円となり、300万円以上かかった方も約6人に1人いたそうです。
この中には、採卵と移植を複数回行って妊娠に至った方も含まれるので、必ずしもすべての方がこの金額になるわけではありませんが、家計にとってはかなり大きな負担となることがわかります。
予測できない出費は不安なものです。治療に安心して取り組めるように、予め不妊治療の費用について夫婦で話し合っておけると良いですね。
出典: 妊活ボイス 高度不妊治療にかかる費用は平均190万円以上!~妊活・不妊治療に関するアンケート結果 http://curucuru.co.jp/portfolio/%E9%AB%98%E5%BA%A6%E4%B8%8D%E5%A6%8A%E6%B2%BB%E7%99%82%E3%81%AB%E3%81%8B%E3%81%8B%E3%82%8B%E8%B2%BB%E7%94%A8%E3%81%AF%E5%B9%B3%E5%9D%87190%E4%B8%87%E5%86%86%E4%BB%A5%E4%B8%8A%EF%BC%81%EF%BD%9E/19年1月24日最終閲覧
不妊治療の費用は助成金の対象になる
不妊の検査と一般不妊治療には自治体独自の助成金がある
不妊検査と一般不妊治療については、国ではなく自治体が独自に制度を設けています。一般不妊治療とは、タイミング法と人工授精のことです。
自治体とは、都道府県の場合もあれば、市区町村の場合もあります。都道府県と市区町村の制度は同時に受けられない場合があるようです。まずはご自身が住まわれている自治体の助成金について、都道府県・市町村の両方とも調べてから申請するのが良いでしょう。
体外受精と顕微授精には特定不妊治療助成金制度がある
高額な費用がかかる高度生殖補助医療を必要とする方が増えたことを受けて、国は特定不妊治療助成金制度を設けています。特定不妊治療とは体外受精と顕微授精のことです。全国一律の条件・金額で、各都道府県に対して申請します。
2021年1月から不妊治療の助成金の拡充がなされ、助成内容について大きく変更がありました。 助成金については以下のページでも触れているので、参考にしてみてください。
▶特定不妊治療助成金|対象治療は?いくらもらえる?気になるあれこれを解説
▶2021年から不妊治療の助成拡充|所得制限や助成回数が変更?気になる変更点について解説
助成額
助成額は、1回当たり最大30万円受け取ることができます。助成金は1子ごとに6回まで(40歳以上43再未満は3回)まで受け取ることができます。
適用条件
厚生労働省のHPによると、助成金受け取りの対象者は、「特定不妊治療以外の治療法によっては妊娠の見込みがないか、又は極めて少ないと維持に判断された夫婦(治療期間の初日における妻の年齢が43歳未満である夫婦)」とされています。
申請方法
必要書類を揃えて、都道府県の担当部署に郵送します。1回の治療が終わった日の年度末(3月31日)が申請期限です。1〜3月に治療が終了した場合には、6月末まで待ってもらえます。
住民票や戸籍謄本、所得額を証明する書類など、必要書類が多いため、期限ぎりぎりになって慌てないように少しずつ準備しておきましょう。特に、領収書は捨てたり紛失しないようにまとめて整理しておくのがベターです。
不妊治療の費用は医療費控除の対象になる
体外受精や顕微授精などの高度生殖補助医療は健康保険が適応されないため、治療費が高額になります。そんな時助成金と同時に利用できるのが、医療費控除です。
医療費控除とは
医療費控除は1年間の不妊治療費が10万円を超えていたり、所得金額の5%を超えていたりする場合、確定申告をすることで医療費の一部を所得額から差し引くことができる、というものです。所得額が下がるため、税金を下げることができます。 医療費控除は過去5年間をさかのぼって申請することも可能です。
医療費控除の対象
不妊治療に伴う、医療費控除の対象として認められているものの一例として以下のようなものがあります。
- 不妊治療の検査、治療、薬代
- 不妊治療のために受けた鍼灸の費用
- 通院にかかる交通費やタクシー代
不妊治療の他にも、別の病気での通院や薬局で購入した風邪薬なども対象となりますので、レシートや領収書はとっておくと良いでしょう。
一方、妊娠検査薬や排卵検査薬などについては、対象外となっています。医療費控除の対象外となる項目もあるため、確定申告前に調べておくことが必要です。
医療費控除の申請
確定申告することで医療費控除を受けることができます。会社員の場合は年末調整と別に確定申告を行う必要があります。領収書の原本の提出は必須ではなくなりましたが、5年間は保管しておきましょう。
体外受精や顕微授精などの生殖補助医療は治療費が高額になるため、助成金制度や医療費控除をうまく使いたいですね。