30代、働く女性の妊活と不妊治療。直面する悩みとは?
公開日:2019/06/05
更新日:2021/10/27

ネット検索で「妊活 仕事」「不妊 仕事」というキーワードを入力すると、「辞めたい、つらい、ストレス」といった言葉が続いて出てきます。このことからも、仕事をしながら妊活・不妊治療を進めていくことに悩みを抱えている方がたくさんいるという現状がうかがえます。 今回は、働く女性、特に30代後半の女性が仕事と妊活・不妊治療を両立する上で直面する悩みを知るとともに、六本木レディースクリニックの小松先生に両立するためのアドバイスをお伺いします。
30代女性が抱える悩み、不妊治療や妊活との両立
30代は、社会人10年目を過ぎ、慣れた環境でこのままの働き方を維持していきたいと感じている方や、より責任のあるポジションに就くなど、仕事にやりがいを感じている方も多い世代。頑張れば頑張った分だけ成果につながるという反面、仕事の比重を減らせば周囲より遅れを取るのではないかと頑張りすぎてしまうことも多いことと思います。 すでに不妊治療に取り組んでいる方であれば、仕事をしながら通院することに大きなストレスを抱えている方もいるかもしれません。
私生活における周囲の環境の変化で焦りも。
私生活では、同年代の女性が出産や育児に励み、子持ち世帯との生活の差が顕著になったりと、日常的に焦りを感じる場面が増えることもあるかと思います。自分自身の身体に関して言えば、出産のリスクが高まる年齢に近づき、妊活や不妊治療がうまくいかないもどかしさを感じている方も少なくないでしょう。 30代後半になると出産のリスクが高まるといわれますが、具体的にはどのようなリスクが伴うのでしょうか。次項で詳しくみていきたいと思います。
高齢出産のリスクもある。年齢が妊娠に与える影響は?
高齢出産の影響1.年齢と妊孕力
年齢が上がるとともに妊娠する力、医学用語でいう妊孕力(にんようりょく)が衰えるといわれています。健康的なカップルが一年間避妊せずに性交渉を行った場合の妊娠率(自然妊娠率)は、30歳まではおおよそ78%ですが、30代前半では63%、30代後半では52%、40歳を超えると36%と減少していきます。 大元データ日本子ども家庭総合研究所「出産希望年齢と妊よう力知識の関連内『グラフ:M.Sara Rosenthal.The Fertility Sourcebook.Third Edition』」 体外受精を行った場合の妊娠率も、自然妊娠の場合と同様、年齢とともに下がるといわれています。体外受精成功率は20代が最も高く40%ですが、35歳まででは約35%と徐々に下がっていき、40歳になると20%を下回ります。45歳となると約5%と激減してしまうのです。年齢が上がると妊孕力や体外受精成功率が下がってしまうのは、「卵子の老化」が一要因とされています。長い年月を経て、卵子の質が衰えてしまうことで妊娠率が落ちてしまうのです。
高齢出産の影響2.年齢と染色体異常
高齢出産に伴うリスクの一つとして、染色体異常(ダウン症など)児の増加が挙げられます。これは、先述の「卵子の老化」が原因とされているからです。そのため、自然妊娠、体外受精に関わらず、染色体異常児の生まれる確率は高まると言われています。母体年齢別に見てみると、20代では0.1%未満、35歳以降は0.3%、40代では1%程度の割合でダウン症を発症しているというデータがあります。年齢が上がるとダウン症の確率が上がるというよりも、厳密には、年齢が上がることで卵子の質が低下してしまうことが影響していると言えます。
高齢出産の影響3.母体への影響
母体年齢が高まると、妊娠中、出産時に合併症を患うリスクが高まると言われています。年齢とともに発生率が上昇傾向にあるのが、前置胎盤や常位胎盤早期剝離(はくり)、妊娠高血圧症候群です。前置胎盤や常位胎盤早期剥離は、いずれも母体と胎児に危険が及ぶ可能性があります。妊娠高血圧症候群は高齢出産に多くなりますが、症状が重くなると自然分娩が難しくなり、帝王切開を選ばざるを得ない場合があります。また、高齢ですと分娩時の陣痛に耐えられない、胎児を娩出するのに必要な力が出ないことも多く、帝王切開率は上がります。そのほかの合併症は妊娠糖尿病が挙げられ、35歳以上だと多くなる傾向があります。
高齢出産の影響4.子育てへの影響
無事に出産を終えたとしても、その後の子育てが不安だという方もいらっしゃいます。教育費や老後資金のやりくりといった経済的な面での不安や、子育てと並行して親の介護を行う必要が出てきた場合、身体面・精神面での心配事も挙げられると思います。 ここまで述べてきたように、30代後半の女性が妊活や不妊治療をする上で直面する悩みを知ることで、どう向き合うべきか、妊活・不妊治療に望む意識も変わってくるのではないでしょうか。
働く女性、30代後半からの妊活・不妊治療で悩まないために
1.仕事に対するスタンスを見直す
経済的な理由で妊活・不妊治療中でも仕事を辞められない、仕事を続けていくことが生活の張り合いになるなどの理由で両立に取り組んでいる方がいると思います。 昨年行われた、不妊に悩む人を支援するNPO法人「Fine(ファイン)」の調査によると、仕事をしながら不妊治療をした人のうち、両立が困難になって退職した人が5人に1人いるということが明らかになっています。「職場に迷惑をかけられない、休ませてほしいと言えない」といった悩みを抱え、仕事を辞めるか、妊活・不妊治療を諦めるかを決断しなければと自分を追い込んでしまう方もいるのではないでしょうか。どちらかを諦めるといった決断をする前に、両立できる通院方法や治療が行えるクリニックがないか、今一度慎重に見直してほしいと思います。治療と仕事の両立に理解を示し、患者の立場や環境に寄り添って治療計画を立ててくれる医師がいるかなど、できる限り自分の意思が尊重される病院を選んでみてはいかがでしょう。
妊娠に対するスタンスを考える、パートナーと話し合う
自然妊娠で生みたいのか、不妊治療に取り組んでも生みたいのか、といった妊娠に対する自分の意識を改めて明確にしてみることも大切です。どの選択をする場合でも、それぞれメリット・デメリットがあります。自然妊娠を選ぶメリットとしては、通院などによって仕事や今までの生活ペースを乱されることがないということです。デメリットは、妊孕力のところでも触れたように、妊娠する確率が年齢とともに下がるということです。旦那さんが自然妊娠にこだわり、不妊治療を受けたくても、治療に踏み込めずにいるというケースも少なくありません。パートナーの方とクリニックを訪れ、医師を挟んで自分の希望を伝えてみるというのも良い方法だと思います。これらを知った上で、自分が納得のいく選択をしてほしいと思います。 このように、30代後半で妊活/不妊治療に取り組む女性にとって大切なのは、現状を知り、自分の意思で選択していくということではないでしょうか。気持ちばかり焦ってしまうこともあるかもしれません。ですが、そんな時こそ一度立ち止まり、パートナーや医師、そして自分自身と向き合ってみましょう。
六本木レディースクリニック小松院長のご紹介
小松 保則 医師 (こまつ やすのり)
経歴
帝京大学医学部付属溝口病院勤務 母子愛育会総合母子保健センター愛育病院 国立成育医療研究センター不妊診療科 六本木レディースクリニック勤務 資格・所属学会 日本産科婦人科学会 専門医 日本産科婦人科学会 日本生殖医学会 日本産婦人科内視鏡学会
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