これからの妊活・不妊治療は2人でが常識。二人で取り組むメリットも大
2019/04/26
2019/04/26
近年、日本では不妊を心配するカップルが増え、その割合は夫婦のおよそ3組に1組にのぼると言われています*。世界保健機関(WHO) の報告によれば不妊の原因の約半数は男性にある事が分かっているものの、多くの男性は何も行動を起こしておらず、妊活の初期 段階では女性だけが行動を起こしているケースが多い現状があります。そんな中、先日行われたスマホ精子セルフチェック『Seem』主催のセミナーで、産婦人科医 宋 美玄(ソン ミヒョン)先生が妊活世代に対し「これまでの妊活の課題とこれからのふたり妊活のススメ」と題してお話をされました。
女性が社会進出をして、生殖医学的にみるといいことばかりではない
女性の就業率が平成30年の時点で7割を占め、近年女性の社会進出によって、晩婚化・晩産化が進んでいるのは周知の事実。実際に、共働き世帯も、平成元年に約780万世帯だったところこの30年で1.5倍以上の約1200万世帯に増えています。
宋先生によれば「女性もライフステージにかかわらず、働き続ける時代になっており、共働きも増えている。片働きでは食べていけない、という時代になっている。不景気でお金がないから、結婚できない、それによって初婚年齢も上がってきているという背景がある。キャリアを積んだり、まだまだお金に余裕がないという若いころに、生殖年齢が重なるという事が現在の妊活世代の抱える問題ではないか」とのこと。
Seem主催セミナー提供資料より
年齢とともに卵子の数は減っていく
女性の生殖的な観点で、まず卵子の数という部分にフォーカスをしてみると、実は卵子の数は生まれる前がその数ピークでおよそ700万個あると言われています。生まれる前にピークだった卵子の数は、生まれた頃は200万個へと減っていきます。思春期近くになると、2、30万個近くまで減少。その後は出産をしても、ピルを飲んでも、毎月1000個くらいの細胞が死んでいく、といいます。女性の場合は、閉経すると卵子はなくなってしまう、という卵子の数の問題がある、と宋先生は指摘します。
Seem主催セミナー提供資料より
卵子の数より質、「卵子の老化」のほうが問題?
実は数の問題ともう一つ、質の問題があります。以下の図は卵子提供してもらった人と、自分の卵子で体外受精を行った場合の出産率のグラフです。縦軸は、体外受精を行って胚移植(受精卵を子宮内に戻す)を行った後、赤ちゃんが生まれてきた割合を示しています。青の折れ線グラフは、自分自身の卵子で体外受精をして、妊娠・出産した場合の率を示しており、30代後半から減少しています。赤いグラフはドナー提供を受けた卵子で妊娠・出産をした場合の出産率(生産率)を示しており、30代後半になってもその率にあまり差はみられません。子宮が年齢を重ねても、卵子が若ければ、妊娠は可能ということを示しているわけです。つまり、卵子の年齢、質が大切だということです。
Seem主催セミナー提供資料より
卵子が年齢とともに量も質も低下していくということが最近知られるようなってきています。一方、男性は60歳でもお父さんに、という方が多いので、男性はいつまでもいける、と思われがちです。
タイムリミットは男女ともにある
宋先生曰く「女性が妊活にあたって、様々な検査をすると痛い検査や体に負担のかかる検査、針を刺す検査など様々なものがある。男性の場合は、基本、精液の検査というのは、精液を出し、運動率や量、濃度などを顕微鏡で見る検査なので体の負担が少ない。男性の場合『これで種がないと言われたら僕はどうしたらいいんだ』と、病院に行って容器をもらって精子を提出するというのは大きな負担のようで、相手の方が精液検査を受けてくれないまま、女性が高齢という年になってしまう、というケースも非常によくみかける」とのこと。
Seem主催セミナー提供資料より
男性の方でも検査をしたり、すぐに治療にアクセスしてもらえればいいのだが、年齢とともに妊娠をさせずらくなるといいます。不妊治療の成功率も、女性の加齢とともに低下していく、だからこそ、妊活は二人で早期に取り組むことが大切ということです。
Seem主催メディア向けセミナー提供資料より
不妊の原因は女性だけではありません。WHOの報告によれば、男性のみに不妊原因があるケース、男女ともに不妊原因があるケースを合わせればほぼ、不妊原因のほぼ半数は男性側にもある、ということが分かっています。
宋先生によれば「必ずしも精子だけではなく、勃起や射精など、性機能にも関係するが、性交渉の時点で、年齢とともにセクシャルアクティビティが低下していくため、夫婦生活のハードルが高くなってくるという問題も現場では見かける」とのこと。
二人で妊活や不妊治療に取り組むメリットとは?
二人で妊活、不妊治療に取り組むメリットには、時間、費用面でも大きなメリットがあります。それは、女性が妊娠しやすい年齢の時から男性も一緒に取り組むことで、より早く妊娠しやすくなる点や、不妊治療に至った場合でも、高い治療費を費やすことなく短期間で治療を終えることができるケースも考えられるためです。それは、お互いの夫婦関係や、精神的な面でもプラスの影響を与えるともいいます。
Seem主催セミナー提供資料より
宋先生は最後に「妊活というのはやっていると、いいことばかりではない。生理がくるたびに落ち込む、がっかりした妻の姿を見てプレッシャーを感じるなど。色々あるんですが、二人で一緒に取り組むことで、いろいろ共感したり乗り越えたり、さらにはめでたく授かった後は今度は育児をすることになる。その時から片側に当事者意識が物凄く薄れていたら、ハッピーな育児にはつながりにくいと思うのでそういったことを見据えて参画していくのが良いと思います」と結んでいます。
女性だけが頑張りがちな妊活や不妊治療。これからの妊活は、二人で取り組むを基本にしていくことが、これからの夫婦の在り方にも繋がっていくのではないでしょうか。
*出典:国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」(Seem提供情報より)
編:不妊治療ネット編集部/巌香奈
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