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排卵誘発剤の種類と効果は?副作用はある?

2019/02/04

2019/02/04

排卵障害の治療に用いられるものとして、排卵誘発剤があります。排卵誘発剤という言葉を聞いたことがあっても、具体的にどんな種類や効果があるのでしょうか。副作用についてもしっかりと理解し、安心して治療に臨めるよう解説していきます。

排卵誘発剤とは?

排卵障害や無排卵症など、卵胞が育ちにくい人に使用される薬です。また体外受精などにおいて、より多数の卵胞を発育させ、複数の卵子を得るために用いられることもあります。

卵胞が育ちにくい理由は、女性ホルモンのバランスが崩れて卵巣の機能が正常に働かないからです。排卵誘発剤は種類によって、女性ホルモンの分泌を促したり、抑えたりする作用があり、卵胞を育てて排卵させる卵巣の働きを助けます。

排卵誘発剤にはいくつか種類があり、排卵障害を起こす原因や治療目的、副作用によって薬剤が選択されます。

排卵誘発剤の種類と副作用は?

経口薬


排卵誘発剤の経口薬には「クエン酸クロミフェン(クロミッド®錠など)」と「シクロフェニル(セキソビット®錠など)」「レトロゾール(フェマーラなど)」などが多く使われています。

同じ経口薬でも、薬の作用・副作用などはそれぞれに特徴があります。今回は代表的な3つの薬について説明していきます。

クエン酸クロミフェン(クロミッド)


不妊症の治療では、タイミング療法や人工受精などでクロミフェンがよく使われています。

脳の視床下部(ししょうかぶ)に作用して、下垂体(かすいたい)から卵巣刺激ホルモンの分泌を促します。ホルモンによって刺激された卵巣は、卵胞の発育や排卵に関する機能が活性化されるのです。

身体への影響はそれほど強くないので、基本的には顔が赤くなる、頭痛がするなどの軽い副作用でおさまることが多いです。

長期に使用することで子宮頸管の分泌物が少なくなる・子宮の内膜が薄くなるなどの副作用があげられます。卵巣に刺激を与える薬なので、まれに卵巣が腫れるなどの卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を発症することも。

シクロフェニル(セキソビット)


クロミフェンと同様、視床下部に作用して卵胞の発育を促します。薬の効果としてはクロミフェンよりもマイルドで、副作用もさらに軽い症状ですむことが多いです。

長期投与でも子宮頸管の粘液や子宮内膜には変化がなく、OHSSのリスクは非常に少ないです。クロミフェンの服用で副作用がみられた場合に、シクロフェニルに変更することがあります。

レトロゾール(フェマーラなど)


視床下部と卵巣の2箇所に作用して排卵を起こします。クロミフェンを服用しても効果がない場合にも有効で、より高い排卵効果が期待できます。さらに、子宮内膜が薄くなる副作用もなく、妊娠率が高い薬として最近注目を集めている薬です。

レトロゾールと他の排卵誘発剤の大きな違いは、卵胞を成長させていく過程で1個の卵子のみを成熟させることができる点です。これにより多胎妊娠のリスクを下げることができます。

また、本来レトロゾールは閉経後の乳がんの治療薬として使用される薬です。残念ながら不妊症の治療では保険適応ではなく、自己負担になるため高額になります。

欧米ではレトロゾールを用いた不妊治療に関する研究も進んでいるので、近い将来には保険適応になるかもしれませんね。
参考URL:排卵誘発剤としての応用/1.臨床的背景
http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/jkpum/pdf/118/118-1/kitawaki.pdf

点鼻薬


GnRHアゴニスト製剤(スプレキュア、ナサニールなど)


GnRHアゴニストは卵胞の成長には関与しないホルモン製剤で、排卵をコントロールする際に使われます。下垂体に作用して黄体化ホルモン(LH)の分泌を抑えることで、卵子をしっかり成熟させた状態にして排卵させるのです。

通常、卵胞が十分に成長・成熟するとLHが急激に増えて(LHサージ)排卵します。ところが、成長途中でLHサージが起こると、卵子が未熟なうちに排卵されてうまく受精できないのです。長期に使用する場合に副作用として、めまいやほてり、肩こりなどの更年期症状が現れることもあるといわれています。

注射薬


ゴナドトロピン製剤(注射剤の総称)


脳から放出される卵巣を刺激するホルモンのことです。ゴナドトロピン製剤は、閉経女性の尿由来のhMG製剤/FSH製剤と、遺伝子組み換えによって製造されたリコンビナントFSH(rFSH)製剤に分類されます。
内服薬で効果がみられないときにも注射薬なら排卵を起こすことができます。
卵巣への刺激性が強く、一度にたくさんの採卵を目的とする生殖補助医療(体外受精・顕微授精)でよく使用されています。効果が高い反面、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)や多胎妊娠などの副作用が起こる確率も高いといわれています。
※OHSSについては後ほど詳しく説明しますね。

排卵誘発剤の排卵効果・妊娠率は?

経口薬と注射薬の排卵効果


同じ経口薬であっても、薬によって排卵効果に多少の差があります。代表的なクロミフェンの排卵誘発率は、作用がマイルドでありながら60〜90%という高い効果があります。

注射薬はさらに卵巣を強く刺激することになるため、排卵効果も高く、ほとんどの場合で排卵することが可能です。ただし、1度の排卵でたくさんの卵子が排出されるリスクがあります。

経口薬と注射薬の妊娠率


不妊でない30歳の女性が性交渉を持った場合であっても、1周期あたりの妊娠確率は20〜25%程度です。

クロミフェンは排卵には高い効果を発揮しますが、妊娠率となると10〜40%程度。決して良い結果とはいえません。これは子宮頸管の粘液が少なくなる、子宮の壁が薄くなるといった副作用が原因です。

注射薬を使うとたくさんの卵子を排卵できるので、体外授精などの採卵が必要な治療ではよく使用されます。

タイミング療法で注射薬を使用する場合には、排卵のタイミングもほぼ特定することができます。治療方法によっても異なりますが、注射薬の妊娠率は20~40%(そのうち多胎率は20%)です。
参考URL:徳島大学病院産科婦人科・周産母子医療センター/不妊について/[4]不妊症の治療
http://www.tokudai-sanfujinka.jp/Patient/treatments.html

排卵誘発剤のリスクについて

基本的に経口薬は注射薬に比べて効果がマイルドなので、副作用も出にくい傾向にあります。

多胎妊娠(双子以上の胎児を妊娠)


クロミフェン服用による多胎妊娠の確率は4%程度。服用の際は多胎妊娠のリスクを知っておくことが重要です。同じ経口薬でも、レトロゾール(フェマーラなど)では多胎妊娠の可能性はより低いでしょう。

注射薬になると卵巣への刺激性が高いので、一度にたくさんの卵子が成熟して排卵されてしまいます。そのため、経口薬よりも多胎妊娠のリスクが高く、20%程度と報告されています。

多胎妊娠がなぜリスクになるのかというと、妊娠中の合併症が起こりやすく、母体への負担が大きくなるからです。今ではできるだけ1度の排卵数を少なくする方向性になっていて、体外授精でも原則として一つの受精卵を体内に戻すことになりました。
参考URL:徳島大学病院産科婦人科・周産母子医療センター/不妊について/[4]不妊症の治療
http://www.tokudai-sanfujinka.jp/Patient/treatments.html

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)について


排卵誘発剤を使用するうえで、注意しなければならない副作用の一つです。薬を使って卵巣を刺激することで卵巣本来の働きを活性化するのですが、刺激が強すぎると過剰に反応し過ぎてしまいます。

薬で卵巣が反応し過ぎると、卵巣が腫れて大きくなります。早い段階では症状がない人もいますが、お腹が張ったような感じや軽い腹痛に始まり、ひどくなるとお腹や肺に水が溜まることがあります。

重症化すれば、脳梗塞や心筋梗塞などの血栓症を引き起こす可能性もあるので、体調の変化には十分に注意しましょう。

クロミフェンのOHSS発症率は3%と低く、重症化することはほとんどありません。ところが、注射薬ではOHSSの発症率は12~40%でかなり高くなります。それだけ卵巣にも負担がかかると考えられます。

最近では、注射薬を使用した後は定期的に卵巣のチェックをして薬の量や使用する時期を調整するようになっているので、発症率は下がっています。
参考URL:徳島大学病院産科婦人科・周産母子医療センター/不妊について/[4]不妊症の治療
http://www.tokudai-sanfujinka.jp/Patient/treatments.html

排卵誘発剤の費用について(1周期あたり)

一般的には注射薬よりは点鼻薬。点鼻薬よりは経口薬で治療するほうが、費用が抑えられるでしょう。

経口・点鼻薬を使用した場合


例えばクロミッドを1日1錠(2錠)内服するなら、1錠×5日分=550円(2錠×5日分=1,100円)です。保険適応の経口薬は1,000円前後。点鼻薬であれば1本8,000~12,000円が薬代としてかかる費用です。

経口・点鼻薬は、治療の日以外は特に検査や処置が必要ないので、治療全体の費用としてはやや少ない傾向です。

注射薬を使用した場合


注射薬の金額は50,000~100,000円と、薬の種類や使用量によってかなりばらつきがあります。また、自宅で注射できる自己注射とクリニックに通院して注射を受けるパターンがあります。

高い薬代に加えて、治療の日以外にも通院による診察・検査代が必要です。自己注射になると指導料、通院でも診察や注射手技料なども加算されます。

執筆者

小坂 恵
看護師。総合病院(婦人科、外科、脳神経外科、整形外科、放射線科など経験)で6年勤務し、出産を機に退職。その後、美容皮膚科・形成外科クリニックと訪問看護ステーション(ダブルワーク)で看護師として復職し、現在6年目。看護師を続けながら、Webライターとして美容、医療、健康系の記事を主に執筆。美容の認定専門家として記事監修・コメント執筆を行っている。