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着床障害と言われたら。着床障害の原因と治療法を医師がお教えします

      2018/12/26

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不妊治療に取り組む患者さんの中にはなかなか着床せず「なぜ着床しなんだろう」「なぜ妊娠出来ないんだろう」と悩まれている方がいらっしゃいます。着床不全や着床障害には様々な原因があり、その原因によって治療法も異なっています。

今回は、着床不全や着床障害について詳しいリプロダクションクリニック大阪の院長、北宅弘太郎先生にお話を伺いました。

なかなか着床しない。着床障害とは?

不妊症領域のなかで「着床」は分かっていないことが最も多い分野のひとつです。着床の瞬間・過程をリアルタイムでとらえる検査・診断法がまだ無いことが最大の理由です。良い胚を繰り返し移植したにもかかわらず妊娠が成立しない「着床不全・着床障害」は患者さんの落胆も大きく、不妊診療に関わるわれわれの悩みでもあります。

それでも「着床不全・着床障害」の克服へ向けてさまざまな取り組みが行われており、中にはかなり期待できるものも出てきました。これらの取り組みについて紹介します。

着床障害の原因は何?卵子?子宮?

「着床障害・着床不全」の正式な診断基準はまだありません。3回以上の良好胚移植の後、妊娠が確認できない状態と一般的に考えられています。
「着床不全」の原因は ①胚の問題 ②胚と子宮内膜両方(相互作用)の問題 ③子宮内膜の問題の3つに大きく分類されます。

3つの中で最大の原因といえるのが①胚の問題でしょう。そのなかでも特に「染色体異常」が大きな比重を占めます。染色体異常胚のほとんどは発生のどこかの過程で成長を止めてしまい、9割方は着床できないと考えられています。ほかにも胚の代謝産物や酸化ストレスの影響が考えられており、その診断法について研究が進められています。

②胚と子宮内膜両方(相互作用)の問題については、これまでの研究から、胚と子宮内膜はシグナルを送りあい、お互い助け合って着床に有利な子宮内環境を作りあげていく(クロス・トーク仮説)と考えられています。胚と子宮内膜のシグナル交換がうまく出来ないために着床しないという可能性が考えられています。この仮説に基づいた対策法がいくつか確立されています。

③子宮内膜の問題については、着床を妨げる様々な要素がわかってきています。最近新しい診断法・治療法がいくつか出てきており、さらに盛んに研究が続けられています。後ほど詳しく述べていきます。

着床障害の原因に対する治療法は? 検査方法は?

①胚の問題
胚染色体解析は、胚盤胞の細胞の一部を採って調べます。遺伝子を解析する次世代シークエンシングという方法を用いた解析が現在の主流です。出産率を改善するという報告から、効果がなかったという報告まで、意見が分かれています。

海外では広く普及しはじめていますが、国内ではガイドラインが作られていません。モザイク胚(染色体正常細胞と異常細胞が一つの胚の中に混在する状態)の取り扱いや、細胞を採ることによる胚へのダメージ、などの未解決問題があります。

モザイク胚盤胞

酸素消費量がより多い胚ほど、より早く胚盤胞へと成長することが知られています。まだ研究段階ですが、胚の酸素消費量測定が、臨床へ導入されようとしています。

胚の分割

②胚と子宮内膜両方(相互作用)の問題
胚からのシグナルが子宮内膜の胚受容能を高めるという観点から、同じ周期に初期胚、続いて胚盤胞を移植する二段階移植という方法があります。

また凍結融解移植周期に限られますが、患者自身の胚培養液をあらかじめ凍結しておいて、融解胚盤胞移植に先立って、初期胚の代わりに子宮に注入するSEET(Stimulation of Endometrium Embryo Transfer)法なども行われています。ほかに胚移植直前のHCG製剤の子宮内注入が有効という報告もありますが、今後の大規模研究による確認が必要です。

SEET法

③子宮内膜の問題
子宮内膜ポリープ、粘膜下子宮筋腫、子宮形態異常(中隔子宮や子宮内膜癒着/アッシャーマン症候群)、帝王切開瘢痕などが着床を妨げる病変として知られています。
これらの異常が見つかった場合には、「子宮鏡を用いた内視鏡手術による治療」が有効です。そのため、「子宮鏡による子宮の内側の観察」は非常に重要です。ソノヒステログラムという検査(子宮の中に生理食塩水を注入し超音波で観察する方法)も行われます。
ソノヒステログラム

子宮内膜の厚さは胚の着床の成功に重要な因子であると考えられています。「内膜が厚い方が着床には有利」と報告されており、「低用量アスピリン、GnRHアゴニスト製剤、ビタミンEとC、L-アルギニンなど」にその効果が確認されています。これらの薬剤やサプリメントによって、妊娠成績まで改善するかどうかについては今後のさらなる研究が必要です。

まだ実験的な治療ですが海外では骨髄由来末梢血幹細胞を子宮動脈から自家移植するといった「再生医療」も試みられています。また「地中海式ダイエットや全粒穀物」に子宮内膜を厚くする可能性がレポートされています。

地中海式ダイエット

まとめ

ご紹介したようにこの10年で「着床不全・着床障害」の診断や治療は大きく進展しています。よい胚を移植してきたにもかかわらず、結果が出ていないカップルの方々は、専門医にご相談されることをお勧めします。

  • 「着床不全」の原因として ①胚の問題 ②胚と子宮内膜両方(相互作用)の問題 ③子宮内膜の問題の3つが考えられる。
  •  ①胚の問題について:胚染色体解析では、胚盤胞の細胞の一部を採って調べる。次世代シークエンシングを用いた解析が現在の主流。
  •  ②胚と子宮内膜両方(相互作用)の問題について:胚からのシグナルが子宮内膜の胚受容能を高めるという観点から、二段階胚移植や凍結融解移植周期のSEET法という方法がある。
  •  ③子宮内膜の問題について:「子宮鏡による子宮の内側の観察」が大切で、子宮内膜ポリープ、粘膜下子宮筋腫、子宮形態異常など着床を妨げる病変がないか調べる。

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北宅弘太郎先生のご紹介

北宅先生リプロダクションクリニック大阪 院長
略歴
1995年 3月京都府立医科大学医学部卒業
1995年 5月京都府立医科大学附属病院 研修医
2001年 3月京都府立医科大学 大学院修了
2003年 4月京都府立医科大学 大学院医学研究科 助手
2007年 4月京都府立医科大学 大学院医学研究科 助教
2008年 4月関西医科大学 助教
2010年11月 オーク会産婦人科 勤務
2010年11月 関西医科大学 非常勤講師
2011年 4月 京都府立医科大学 非常勤講師
2014年 8月 リプロダクションクリニック大阪 婦人科部長
◆資格・免許
医学博士
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
日本生殖医学会 生殖医療専門医
日本生殖免疫学会 評議員
母体保護法指定医
American Journal of Reproductive Immunology, Editorial Board Member
BioMed Research International, Editorial Board Member
Advances in Medicine, Editorial Board Member
Fertility and Sterility, Ad-hoc Editorial Board Member
Minerva Gynecology, Editorial Board Member