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顕微授精で受精に成功する確率。リスクと平均的な費用は

      2019/06/18

顕微授精

体外受精をしたのに妊娠反応がでなかった、もしくは検査で顕微授精以外の方法では妊娠が難しいと判明した場合、医師から顕微授精をすすめられることがあります。

 

しかし、生まれてくる子どもに障害の可能性がないのか、また費用がどの程度かかるのかなど、周囲に相談できる人はなかなかいないものです。

 

医療機関でもじっくり話を聞くことができない方のために、顕微授精による妊娠確率やリスク、治療の流れなども詳しく解説します。

顕微授精とは

体外受精と顕微授精の違い

顕微授精とは、卵子に細い針を刺して精子を直接注入し受精させる比較的新しい技術です。「体外受精」と「凍結融解胚移植(とうけつゆうかいはいいしょく)」と合わせて高度生殖補助医療と呼ばれます。

容器の中で1つの卵子と複数の精子を混ぜ合わせて受精するのを待つ体外受精に比べて、顕微授精は受精させる過程でも人工的に手を加える方法です。

顕微授精は体外受精より受精率が高い

体外受精では卵子の細胞膜を破るために運動量の良い精子が一定数必要となりますが、顕微受精は精子の量や運動量に左右されず受精することができます。

体外受精による受精率は70~80%、顕微受精でも70~80%なのでほとんど変わりがありませんが、一般的には顕微受精のほうがやや受精率が良いです。

参考元:
英ウィメンズクリニック/はなぶさブログ/体外受精か顕微授精か
https://www.hanabusaclinic.com/weblog/2018/09/30/体外受精か顕微授精か、その選択と結果について/

医療法人後藤レディースクリニック/体外受精
https://goto-ladies.com/treat/taigaijusei.html

顕微授精の妊娠率

日本での顕微授精による妊娠率は1992年で14.5%でしたが、1996年には21.2%と上昇しました。

生産率(赤ちゃんが生まれる率。妊娠率とは異なる。)を女性の年齢でみてみると、年齢が高くなるにつれて著明に低下しています。

女性が治療を開始した年齢が32歳くらいまでは20%程度だった生産率が、36歳頃からは急激に低下し、40歳になると7〜8%に。

45歳では1%に満たない結果が出ていることからも、顕微授精でも妊娠・出産に女性の年齢がかなり大きく影響していることが分かります。

参考元:
東京歯科大学市川総合病院 リプロダクションセンター/診療のご案内 女性外来/顕微授精は(ICSI)/7.日本または世界の顕微授精の位置づけ
http://www.tdc-repro.jp/medical/gyne_07.html

生殖補助医療〜進歩した不妊治療/妊娠する可能性高いの?
https://saas2.startialab.com/acti_books/1045178467/18329/HTML5/pc.html#/page/72

顕微授精が適応になる場合

顕微授精は他の不妊治療を行なっても、妊娠する可能性が見込めない場合に適応されます。

①受精障害

通常の体外受精を行なってみたものの、受精しなかった場合に受精障害があるとされます。

②無精子症、重症乏精子症(じゅうしょうぼうせいししょう)、精子無力症、精子奇形症など

卵子には異常がなく妊娠できる機能があるのに、精子が受精するために必要な量や運動量が不足している状態です。体外受精では妊娠する可能性が低いと判断されます。

顕微授精の流れとスケジュール

顕微授精の治療は基本的に体外受精と同じ流れです。

採卵

排卵誘発剤を使用もしくは自然排卵によって卵子をいくつか採取し、保存しておきます。

採精

射精や手術によって精巣から精子を採取します。
採精した中から奇形のない運動精子を選定し、溶液を作ります。

受精

体外受精と1番大きな違いは受精の方法です。
溶液から精子を注入用の針へと尾部から吸引しておきます。針で直接卵子を刺して細胞質膜を破り、卵子の中に精子を頭から注入します。

胚培養

受精をした翌日に正常な受精卵を確認できたら、数日間培養しながら発育を待ちます。

胚移植

移植する数は原則1個ですが、顕微授精を繰り返している場合には最大2個までを移植します。

ホルモン補充療法

胚移植後、女性ホルモンを補充して、妊娠が継続しやすい状態を作ります。

妊娠確認

採卵後14日経っても生理がない場合には妊娠しているかどうか判定するために検査(尿検査、超音波エコー検査など)を行います。

顕微授精のリスク

障害児が生まれる確率が高くなるって本当?

インターネットでは、顕微授精により妊娠して生まれてくる赤ちゃんに障害がおこると噂されることがあります。

現時点では顕微授精によって子供に障害(ダウン症、染色体異常、自閉症、奇形児)が起こるという調査結果はありません。

ただし、顕微授精は不妊治療において第1選択ではないので、タイミング療法や体外受精などの治療を経た30代後半から40代の比較的年齢の高い女性が受ける傾向にあります。

一般的に年齢とともに卵子の機能が低下するので、ダウン症や染色体異常起こる可能性があります。そのため、一概に顕微授精と子供の障害を関係づけることはできません。

また体外受精や顕微授精の場合、自然には受精しない確率が高い乏精子症や無精子症でも受精できます。

通常、性行為による受精では受精する機能がない精子や遺伝的に異常のある精子は、競争に勝てないので受精することができません。

ところが顕微授精は人によって精子の選定を行うので、受精機能がない精子や遺伝的に異常のある精子を選ぶリスクがあるのです。

重症な乏精子症や無精子症の男性には、染色体に異常がある確率が2.1〜12%もあります。(一般的な男性の染色体異常の確率は1%未満)

精子の染色体に過不足があると、子供に先天的な異常が起きる可能性があります。また遺伝的なリスクとして、男児には乏精子症や無精子症が遺伝することがあります。

参考元:
東京歯科大学市川総合病院 リプロダクションセンター/診療のご案内 女性外来/顕微授精は(ICSI)/5.問題点・リスク/(1)〜(4)
http://www.tdc-repro.jp/medical/gyne_07.html

顕微授精(体外受精)は双子ができる?

以前は妊娠率を上げるために体外受精で複数個の受精卵を戻していたこともあり、二卵性双生児以上の多児を妊娠しやすいと考えられていました。

多胎の妊娠は早産や胎児の異常、母親への負担が大きくなります。2008年以降は体外受精による多胎妊娠を避けるために、体内に戻す受精卵の数は原則1個に定められました。

受精卵を1つに制限して戻す指針が普及するにつれて双子の出生率は減少しているのですが、依然として体外受精による多胎の妊娠は続いています。その原因として、受精卵を培養することだとされています。

日本産科婦人科による調査で、受精卵を1つだけ戻した体外受精で双子以上の多胎だったのは0.8%。一方、自然妊娠で一卵性双生児だったのは0.4%でした。これにより、体外受精による多胎妊娠の確率は2倍ということが明らかになりました。

参考:
朝日デジタル新聞
http://www.asahi.com/science/intro/TKY201204110772.html

JAMBA/日本における単一胚移植の普及と多児妊娠に対する影響
http://jamba.or.jp/2014/06/27/「日本における単一胚移植の普及と多胎妊娠に対/

顕微授精ができるのは受精のサポートまで

顕微受精によって受精卵を子宮に戻したとしても、無事に着床して妊娠し、さらに妊娠を継続できるかどうかは分かりません。

着床障害や流産を繰り返す不育症の場合は、いくら体外受精や顕微授精を繰り返したところで妊娠する確率を上げることはできません。顕微授精は精子と卵子を受精させて、受精卵の発育を助ける(受精率を上げる)治療法だということを覚えておきましょう。

顕微授精にかかる費用

顕微授精は自費になるため、検査や治療にかかる費用が高額になります。体外受精の費用にプラス5〜10万円くらいが相場でしょう。

採卵(技術費、培養など)170,000〜220,000円
胚移植50,000〜60,000円
顕微授精(5個まで)50,000〜54,000円
※1個増やすごとに3,000〜10,000円追加
ほかに、診察代や検査・薬代、ホルモン補充療法など

病院によっては成功報酬という形にして、1回の治療にかかる費用を抑えてくれるところもあります。自治体でも不妊治療に関する助成金制度が設けられているところもあるので、調べてみてくださいね。

執筆者

小坂 恵
看護師。総合病院(婦人科、外科、脳神経外科、整形外科、放射線科など経験)で6年勤務し、出産を機に退職。その後、美容皮膚科・形成外科クリニックと訪問看護ステーション(ダブルワーク)で看護師として復職し、現在6年目。看護師を続けながら、Webライターとして美容、医療、健康系の記事を主に執筆。美容の認定専門家として記事監修・コメント執筆を行っている。