不妊症の検査項目と流れとは?初診のタイミングと生理中の受診も解説
2019/01/21
2021/05/31
不妊症ではないかと不安を抱えているのなら、不妊の原因を見つける検査を受けてみませんか。不妊かどうか分かるだけではなく、今後の治療方針を決めるための大切な検査です。
不妊症の検査はその項目の多さや医療用語の難しさから、何について調べているのか分からない方も多いようです。しかし検査結果は治療に深く関わるため、理解できるようにしておきましょう。
不妊の検査内容は何を知るためのもの?
不妊の原因はさまざま。女性側もしくは男性側に原因があるカップルもいれば、どちらにも原因があるカップルもいます。“自分が原因だったらどうしよう”と不妊検査に抵抗を感じる人もいるでしょう。
しかしながら、不妊検査は男女のどちらに原因があるかを探すために受けるのではありません。妊娠する過程のどこに問題があるかを特定するものです。
もしも不妊の原因が特定できれば、それに対する治療を受けることができます。治療が効果を発揮すれば、次の妊娠にも期待がもてます。
特に自覚症状や不妊の原因になるリスクがなければ、女性側と男性側それぞれに検査をします。不妊検査で妊娠しにくい原因が分かれば良いのですが、実際に原因を特定出来ないケースが約10~25%ほどです。
まず確認する基本的な検査項目
妊娠するためには、卵子の成長から受精卵の着床までにいくつもの過程があります。
不妊検査は、ヒトが妊娠するまでの流れのなかで、どこに問題があるのかを特定することができるのです。
たくさんの検査項目に困惑してしまったら、その検査によって「妊娠までの流れのうち、どこのポイントがつまづいているのか」と考えると検査結果を整理しやすいでしょう。 不妊検査では、大まかに下記の項目をチェックしています。
- 卵巣に妊娠できる機能が十分にあるか
- 卵胞がきちんと成長して、排卵されているか
- 卵子が子宮まで届いているか
- 精子の量や運動率は十分か
- 卵子と精子の相性が悪くないか
- 受精卵が着床できているか
- 受精や妊娠を阻む遺伝的な要因がないか
たとえば、AMH(アンチミューラリアンホルモン)は卵巣機能を知るための代表的な検査項目で、卵子のもとである卵胞がどの程度卵巣に残っているかを表すホルモン値です。「少ない=不妊」というわけではありませんが、今後どのくらいの時間の猶予があるかが分かるため、治療の方針を決める重要な値です。
FSH(卵胞刺激ホルモン)・LH(黄体化ホルモン)は、主に「卵胞がきちんと発育しているか」を知るための検査です、PRL(プロラクチン)は排卵が阻害されていないかどうかがわかります。
エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)は、卵胞の発育状況を知るのに加え、受精と着床を促す役割があります。
参考元URL: 公益社団法人 日本産婦人科医会/5.不妊の原因と検査/(4)原因不明 http://www.jaog.or.jp/lecture/5-不妊の原因と検査/ 東邦大学医療センター/男性不妊の検査診断治療の手順4(方針) https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/omori/repro/patient/man_sterility/inspection.html
不妊検査の初診のタイミング
生理中でも初めての診察や不妊検査は受けられる
不妊クリニックを訪れる場合、特に指示がない限りは生理中でも診察や検査を受けることはできます。基本的にどのタイミングでも、何かしらの検査は受けられるはずです。
しかし、目的をもって実施する検査に関しては、クリニックから時期を指定されます。例えば子宮卵管造影は、生理開始日から10日の間にしかできないので予約には注意が必要です。
またホルモン検査は1回の生理周期で何度か通院する必要があります。それぞれの検査には最適な時期はありますが、多少ズレても問題のない範囲であれば受けることは可能です。
どれくらい妊娠しなければ不妊の検査を受けるべき?
日本産科婦人科学会では、妊娠を希望する男女が約1年妊娠しなければ不妊と定義しています。しかし、加齢によって妊娠率は下がっていきます。35歳以上であれば、なるべく早く受診しましょう。
もし女性に子宮内膜症、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)などの婦人科疾患があれば、1年を待つ必要はありません。
人気のクリニックに通いたいと考えていても、初診まで数ヶ月待ちのことがあります。原因を調べる不妊検査も数ヶ月かかることもあるので、少しでも早く受診できるクリニックを検討してみるのも良いですよ。
不妊の検査項目
不妊検査がそれぞれにどういった検査になるのか、妊娠するために問題となるポイントや検査の方法、痛みなどについて詳しく説明します。
AMH(抗ミューラ管ホルモンまたはアンチ・ミューラリアン・ホルモン)
AMHは不妊治療の検査でも近年注目されている新しい検査です。簡単に説明すると、これから成長する卵子がどれだけ卵巣に残っているかが目安として分かります。卵子が残りが少ないということは治療を急いだ方が良いということなので、医師が最初に確認する数値でもあります。
女性が産まれたときから卵巣には原始卵胞が存在し、毎月複数の卵胞が成長し、そのうちのひとつだけが卵子として排卵されます。このとき卵巣で待機している卵子の数の数とAMHの値が相関しています。
あくまで目安であってAMHの値が低いからといって卵巣で待機している卵子がないということではありません。血液中に反映されていないだけで、妊娠する可能性は十分にあります。
とはいえAMH検査では卵子の質や、このまま順調に育って排卵されるかということまでは分かりません。検査結果の数値が高いから妊娠できるということでもないのです。
一般社団法人AMH普及協会/AMHとは http://www.amh.or.jp/amh/index.html
FSH(卵胞刺激ホルモン)・LH(黄体化ホルモン)・PRL(プロラクチン)
FSHとLHは脳から分泌されるホルモンで、卵巣が正常に機能しているかチェックする検査です。FSHとLHがバランスよく分泌されていると、質の良い卵胞が育ちます。卵胞を育てる働きをするホルモンなので、生理2〜5日目に検査を行います。
LHの値が高い場合に疑われる代表的な疾患は多のう胞性卵巣(PCOS)です。
PRLは通常、妊娠すると分泌が活発になるホルモンです。PRLの値が高いと、体が妊娠していると思いこんで排卵されない状態になるので不妊になってしまいます。
エストロゲン(卵胞ホルモン)・プロゲステロン(黄体ホルモン)
エストロゲンは排卵を促し、プロゲステロンは受精卵が着床しやすい子宮環境を整えるホルモンです。
それぞれのホルモンの役割が異なるため、生理周期に合わせて採血をします。エストロゲンは生理3日目、プロゲステロンは排卵の7日後がそれぞれに最適なタイミングです。一般的に生理周期の間に2〜3回採血をします。
妊娠に関わるホルモン分泌のバランスは、非常に複雑に絡み合っています。それぞれ必要な時期に適切な量が分泌されて妊娠ができるため、そのバランスが大切です。
不妊の血液検査は通常の健診などでは行われない特殊な項目ですが、採血の流れは同じです。針を刺す際の痛みも変わりません。
楠原ウィメンズクリニック/不妊症治療ガイド/② http://www.huninsho.jp/sp/examination/
内診・経腟超音波検査
産婦人科の内診台(ないしんだい)という開脚する診察台で検査を受けます。腟から触診や超音波検査を行い、子宮や卵巣に異常がないか確認することができます。
また、生理周期3~5日に膣から超音波検査で両卵巣をチェックすると、成長過程の卵胞の数を計測することができます。卵子の成長や成熟度が分かり、排卵の予測もできます。
一般的な検査ですが、腟に指や器具を入れるので軽い痛みを感じることがあります。
公益社団法人 日本産婦人科医会/5.不妊の原因と検査/2不妊症検査の流れ/(1) http://www.jaog.or.jp/lecture/5-不妊の原因と検査/ 日本生殖医学会/不妊症Q&A/検査/1)女性側/((1)一般的な検査/① http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa07.html
子宮卵管造影(HSG)
順調に卵子が成長して排卵されていたとしても、卵管が詰まるなどの異常があると卵子が子宮に届きません。また子宮に奇形や病気があると、受精卵が着床しにくいことが分かっています。
HSGは子宮内に造影剤を注入して、レントゲンで子宮と卵管の形を確認します。子宮なら奇形や筋腫、ポリープの有無が分かり、卵管には狭くなった部分や詰まりがないか分かるのです。
ただし、デメリットが2点あります。卵管の通過性に関しては腹腔鏡検査のほうが診断が明確です。また注入する造影剤の種類によっては、刺激性があるため軽い腹痛を伴うこともあります。
造影剤を使用するので、甲状腺の病気がある人は実施できません。また卵子に影響しない生理終了から10日目に検査をすることがおすすめです。
公益社団法人 日本産婦人科医会/5.不妊の原因と検査/2不妊症検査の流れ/(2) http://www.jaog.or.jp/lecture/5-不妊の原因と検査/ 日本生殖医学会/不妊症Q&A/検査/1)女性側/((1)一般的な検査/② http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa07.html
クラミジア検査
クラミジア感染症にかかったことがあるかどうかを調べます。クラミジア感染症は卵管に異常を引き起こす可能性があり、感染している場合には本人と同時にパートナーも治療をしなければなりません。
クラミジア検査は子宮頸管をこすって細胞や分泌物を採取して抗原検査をします。感染していても抗原検査が陰性のことがあるので、治療をした経験がなければ採血による抗体検査が陽性の場合には治療が必要です。
公益社団法人 日本産婦人科医会/5.不妊の原因と検査/2不妊症検査の流れ/※、①、② http://www.jaog.or.jp/lecture/5-不妊の原因と検査/
精液検査
一定量の精液から精子の量と形状、運動率などを顕微鏡で確認します。受精するために必要な精子の基準をクリアしているかを調べます。ただし精子の遺伝的な部分を調べることはできません。
精液を専用の容器に採取したら、運動が活発な間(精採2時間以内)に提出。男性の体調や禁欲状況によっても結果が異なるため、良くない結果の場合は何度か検査をすることも。
精子の量や運動率が特に悪い場合、自然妊娠は期待できません。早めに人工授精に切り替える必要があるでしょう。
日本生殖医学会/不妊症Q&A/検査/2)男性側/(1)精液検査 http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa07.html
抗精子抗体
抗精子抗体は精子を異物として認識して攻撃してしまう免疫力です。男性に抗体があると作られる精子の運動率が悪くなり、また女性に抗体があると子宮頸管や卵管で精子の活動が低下します。
男女どちらか一方でも抗精子抗体が陽性と判断されれば、自然妊娠は難しいので人工授精や顕微授精の検討をすすめられます。
日本産科婦人科学会/不妊症/不妊症の検査/女性側の原因/免疫因子 http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=15
フーナーテスト
精子と子宮頸管粘液の適合試験です。膣内に射精された精子が、粘液の中で活動できているかを調べます。運動率が低いと精子が子宮口を突破できないので、精子が卵子に出会うことが難かしい状態といえます。
フーナーテストは排卵期に実施します。性交後3~12時間以内に粘液を採取し、顕微鏡で精子の運動を確認します。精子に運動性がないようであれば、抗精子抗体の検査が必要になります。
公益社団法人 日本産婦人科医会/5.不妊の原因と検査/2不妊症検査の流れ/(3) http://www.jaog.or.jp/lecture/5-不妊の原因と検査/ 日本産科婦人科学会/不妊症/不妊症の検査/女性側の検査/性交後試験 http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=15
染色体検査
精子の数や運動量は顕微鏡で調べることができますが、精子の遺伝的な異常は分かりません。通常、精子の数や運動率がほとんど確認されない場合に染色体異常の可能性があります。
精子と卵子どちらかに染色体異常があると、自然妊娠が難しくなります。卵子と出会い受精できたとしても、着床した状態を維持できずに流産してしまう可能性が高いのです。
子宮鏡検査
腟から小型カメラを挿入して、子宮の内膜を観察できる検査です。子宮内のポリープや筋腫などの病気や内膜の様子を確認し、受精卵が着床できるかどうか評価します。
麻酔などは必要なく短時間で実施できます。体への負担が少ないので外来で検査が可能です。検査結果もすぐに説明してもらえます。
日本生殖医学会/不妊症Q&A/検査/1)女性側/(2)特殊な検査/① http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa07.html
腹腔鏡検査
小さな傷をお腹につけて小型のカメラで子宮や卵巣を外側から観察します。ほかの検査では分からない骨盤内の臓器異常を発見できるのが特徴。
卵巣嚢腫や子宮筋腫、多嚢胞性卵巣症候群に対して摘出術や卵巣多孔術(らんそうたこうじゅつ)といった手術を同時にできます。体への負担が大きいために全身麻酔です。
日本生殖医学会/不妊症Q&A/検査/1)女性側/(2)特殊な検査/① http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa07.html
自宅で卵巣年齢(AMH)を測定できるセルフチェックキットとは?
上でもご紹介したAMH検査は、実は自宅で簡単に行うことが可能です。卵巣年齢チェックキットである「F check」を使えば、Webサイトで購入するだけで自宅にキットは届くので、自分の時間の都合に合わせて検査をすることが出来ます。
自宅に届いたキットで採血を行い、採取した血液を検査センターに郵送するだけで、後日検査結果をスマートフォンで手軽に確認することができるので、検査や結果の受け取りのため病院に行く手間がないことも魅力です。
将来的に赤ちゃんを望んではいるものの、なかなか忙しくて婦人科に行く時間がないという方は、是非F checkを使って自分の卵巣年齢をチェックしてみてはいかがでしょうか?
執筆者
小坂 恵 看護師。総合病院(婦人科、外科、脳神経外科、整形外科、放射線科など経験)で6年勤務し、出産を機に退職。その後、美容皮膚科・形成外科クリニックと訪問看護ステーション(ダブルワーク)で看護師として復職し、現在6年目。看護師を続けながら、Webライターとして美容、医療、健康系の記事を主に執筆。美容の認定専門家として記事監修・コメント執筆を行っている。
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