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高プロラクチン血症ってなに?原因と治療法、不妊との関係は?

2019/05/20

2019/05/20

不妊治療や生理不順時の血液検査で高プロラクチン血症と診断され、その聞きなれない言葉に不安を覚える人も多いのではないでしょうか。この記事では、高プロラクチン血症の原因・症状・治療法や不妊との関係性について解説します。

高プロラクチン血症とは?

脳で分泌されるプロラクチンというホルモンが増えすぎている状態を高プロラクチン血症といいます。高プロラクチン血症は、男女ともに不妊症の原因のひとつとされています。

プロラクチンの基準値は女性で4.91~29.32ng/ml、男性で4.29~13.69ng/ml。検査は月経周期に合わせて複数回行い、すべての時期で20ng/ml以上であれば高プロラクチン血症と診断されます。

引用URL:SLR総合検査案内/内分泌学的検査/視床下部・下垂体ホルモン/プロラクチン
http://test-guide.srl.info/hachioji/test/detail/003860902

プロラクチンの検査結果は、食事や運動によっても変動します。大量の水分を摂取した後や激しい運動でたくさん汗をかいた後は、検査結果に影響する可能性があるので、注意が必要です。

プロラクチンは本来、妊娠が成立した後に分泌が活発になるホルモンです。妊娠期に乳腺を発達させ、産後の授乳期に乳汁を分泌させるなど出産に大きく関わってきます。そのため、妊娠~産後期にはプロラクチンの検査数値が高くなるのが一般的です。
プロラクチン過剰分泌症の診断と治療の手引き
http://square.umin.ac.jp/kasuitai/doctor/guidance/prolactin_surplus.pdf

症状

高プロラクチン血症の症状を男女別にみていきましょう。

女性:生理不順、排卵障害、母乳分泌など

高プロラクチン血症は、無月経と診断された女性の約15%で認められています。プロラクチンが多いと、妊娠している状態と同じようなホルモンバランス(FSHとLHの分泌が抑制)になります。

FSHとLHの分泌量が少ないと卵胞の成長が滞り、排卵することができなくなるのです。

男性:性欲低下、EDなど

男性の高プロラクチン血症は女性に比べると約1/8の発症率。上記症状のほかに、無精子症や下垂体腺腫(かすいたいせんしゅ)、女性様乳房などが認められると検査対象になります。

岡山大学病院
https://www.okayama-u.ac.jp/user/hos/kensa/kasuitai/prl.htm

原因

高プロラクチン血症となる主な原因は3つです。
①薬剤性
ドーパミンの分泌を抑える作用がある薬を服用していることで発症します。ドーパミンにはプロラクチンの分泌を抑える効果があり、ドーパミンが少なくなるとプロラクチンの分泌量が増えます。

例えば、胃薬や睡眠薬、精神安定剤などを使用していると、血中のプロラクチンの量が増加して一時的に高プロラクチン血症となる可能性があります。

②機能性
機能性高プロラクチン血症とは、何らかの原因で脳の機能が低下することによって起こります。プロラクチンの分泌がうまくコントロール(分泌を抑制する働き)ができない状態です。

プロラクチンは脳の下垂体というところで大量に分泌されます。ところが、下垂体は分泌量をコントロールできません。

そのため、同じく脳の視床下部(ししょうかぶ)という部分で分泌されるドーパミンというホルモンによって、下垂体を刺激してプロラクチンの分泌をコントロール(抑制)しています。

視床下部から分泌されるホルモンは不規則な生活やストレス、過度なダイエットなど、さまざまなことが原因でバランスが崩れてしまいます。

すると、下垂体でプロラクチンの分泌を抑えることができなくなり、プロラクチンが大量に産生されてしまうのです。

③腫瘍(しゅよう)性
下垂体に腫瘍ができると、プロラクチンが過剰に分泌されて高プロラクチン血症を発症することがあります。腫瘍にも種類がありますが、ほとんどが良性です。

月経不順の原因として最も多いのが、下垂体腺腫です。下垂体腺腫にはホルモンを過剰に分泌するタイプ(ホルモン産生性)と、ホルモンを分泌しないタイプ(非ホルモン産生性)があります。

ホルモン産生性下垂体腺腫にはプロラクチンを分泌するものがあります。通常の視床下部からのプロラクチンに加えて分泌されるので、プロラクチンがたくさん産生された状態になるのです。

また、非ホルモン生産性下垂体腺腫でも、下垂体のホルモンバランスが崩れると機能性高プロラクチン血症の原因になります。

治療法

高プロラクチン血症の原因や症状、検査数値によって治療の方法はさまざま。それぞれの原因に合った治療が必要です。

①薬剤性の場合
服用している薬が影響しているので、原因となる薬剤を中止または変更することで自然に数値が下がります。

しかし、病気によっては使用を中止できない薬もありますよね。原因になる薬を続けながら治療するとなると、プロラクチンを下げる内服薬を併用することになります。

②機能性の場合
基本的には、プロラクチンの分泌量を下げる作用の薬を使って治療します。よく使われる薬としてはブロモクリプチン製剤、テルグリド製剤、カベルゴリン製剤です。

これらの薬は下垂体に作用して、プロラクチンの分泌を抑える働きがあります。飲み始めは吐き気やめまい、便秘などの副作用が強くでます。一般的にテルグリドの方が副作用は少ないです。

③腫瘍性の場合
・内服療法(ブロモクリプチン、カベルゴリン)
薬を内服して腫瘍を小さくします。ただし、腫瘍そのものがなくなるわけではなく、薬が効かないこともあります。また、内服を中止すると効果もなくなるので継続していかなければなりません。

ブロモクリプチンやカベルゴリンは機能性高プロラクチン血症でも使用する薬剤です。プロラクチンの分泌量を下げると同時に、腫瘍を小さくする効果もあります。

・手術療法
内服薬の効果がない・副作用で薬を使えないときの選択肢です。手術で原因となる腫瘍を切り取るので、完治できる可能性が高い治療といえます。完治までいかなくても、薬の量を減らすことができます。

手術の方法は、頭の骨を一部取ってアプローチする開頭法(かいとうほう)と鼻の下からアプローチする経鼻法(けいびほう)とがあります。腫瘍の位置によって選択されますが、基本的には経鼻的手術が多いです。

・放射線
放射線を腫瘍に当てて小さくします。治療は1~2日程度ですが、半年から1年をかけて効果が現れます。放射線によって下垂体がダメージを受けると、下垂体の機能が低下するリスクも。

広島大学病院
https://home.hiroshima-u.ac.jp/nouge/disease/pituitary/hyperPRL.html

プロラクチンの分泌が活発な授乳中や、プロラクチンの値が基準値より高い人でも妊娠するケースはあります。

高プロラクチン血症の原因だけでなく、個々の状況に応じて不妊治療を進めていくことが大切です。パートナーや医師と相談しながら決めていくと良いでしょう。

執筆者:小坂 恵

看護師。総合病院(婦人科、外科、脳神経外科、整形外科、放射線科など経験)で6年勤務し、出産を機に退職。その後、美容皮膚科・形成外科クリニックと訪問看護ステーション(ダブルワーク)で看護師として復職し、現在6年目。看護師を続けながら、Webライターとして美容、医療、健康系の記事を主に執筆。美容の認定専門家として記事監修・コメント執筆を行っている。