FSHとLHってどんなホルモン?基準値より高いとどうなる?
2019/01/21
2019/01/21
不妊治療を始めてまず行うのがホルモン値の検査です。これらの検査結果は卵巣の予備能力や卵胞の発育状況を知るための大切な値ですが、聞き慣れないカタカナの名称がたくさん出てくることもあり、何を表しているのか理解しにくいという方も多いようです。 この記事では、不妊治療を受けるときに必ず知っておきたいホルモンについて解説します。
FSHとLHとは
FSHとLHの働き
FSHは卵胞刺激ホルモンという名前の通り、卵胞の発育を促す働きがあります。卵胞というのは卵子のもとのことです。
卵胞を成熟した卵子に育てる役割があるので、FSHの分泌は月経が始まる頃から排卵までの月経期から卵胞気にかけて活発になります。卵胞がすっかり大きく成長すれば、FSHの分泌も少なくなります。
LHは黄体化ホルモンのこと。黄体化という言葉に馴染みがないかもしれませんが、受精卵が着床しやすいように、子宮を厚くする働きがあります。
子宮内膜を妊娠に適した環境に整える役割があるので、卵胞が成長してから排卵以降に分泌が活発になります。
FSH・LHともに、月経周期によって大きく分泌量が異なります。そして妊娠するためには、それぞれのホルモンが適した時期に必要なだけ分泌されなければなりません。
FSHとLHの値からわかること
FSHとLHの基準値
FSHの基準値は3.12〜14.72mIU/ml、LHの基準値は1.76〜10.24mIU/mlです。
女性は月経周期でFSHとLHの基準値が異なります。ここに示している基準値は、卵胞期の値に限定したものです。卵胞期の検査結果がどちらもこの基準値内であれば、卵巣が正常に機能していることになります。
不妊症のホルモン検査は、妊娠するために必要なホルモンが、適した時期に適した量で分泌されているかどうかをチェックします。LHとFSHの検査を卵胞期にするのは、卵巣の機能を調べるためなのです。
卵胞の成長から排卵までの過程が正常に行われているか、LHとFSHの数値で(月経3日目から7日目頃に採血をして)確認します。
排卵後の黄体期にLHの値を調べると、妊娠を維持するために必要な量のLHが分泌されているかどうかが分かります。LHが少ない場合には黄体機能不全が疑われます。
出典:
株式会社LSIメディエンス/検査項目解説/内分泌検査/下垂体/基準値チャート欄
http://data.medience.co.jp/compendium/chart_pdf/A03020.pdf?t=1547476983
FSHとLHのバランスが良い排卵のポイント
卵胞が順調に成長して排卵に至るためには、通常FSHがLHの量よりも多くなければいけません。このバランスが崩れると、排卵が起こらない可能性があります。
FSH検査では、卵胞が十分に成長するために必要な量の分泌がされているかを調べます。それと同時にLHの検査もするのは、この2種類のホルモンバランスを確認するため。
排卵後の黄体期であれば、LHがFSHよりも高い状態なのが普通です。しかし、LHは妊娠に向けての準備をするホルモンなので、卵胞期にLHが高いと卵胞の成長を妨げ、排卵ができなくなるのです。つまり、卵胞期のLHとFSHのホルモンバランスが逆転していると、排卵障害が疑われるということです。
LHが高い場合、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が原因になっていることがあります。月経周期が35日以上の場合や、無月経を自覚している場合は、医師に伝えましょう。
FSHが高い場合
卵胞期にFSHの値がLHより高いといっても、必ずしも排卵ができるとは限りません。FSHの数値が高すぎる場合は、卵巣機能が低下している可能性があります。
正常に働いていない卵巣を働かそうとして、FSHが過剰に分泌されすぎているかもしれないのです。検査結果の数値が、基準内にあるかどうかも大切なポイントになります。
エストラジオールとは
エストラジオールはエストロゲン(卵胞ホルモン)のひとつ。エストロゲンなら聞いたことがあるかもしれませんね。
エストラジオールの働き
排卵が近くなると、受精卵が着床する可能性を高めるため子宮内膜や子宮頸管の準備をします。
子宮頸管であれば分泌物の量が増え、性状(粘り、pH)にも変化があります。子宮であれば内膜が厚く変化するというわけです。
エストラジオール(E2)値からわかること
エストラジオールは成熟してきた卵胞から分泌されます。排卵前のエストラジオール値を調べれば、卵胞の発育状態がわかるのです。
排卵期のエストラジオールは150〜400pg/mlが基準値になっています。
日本産婦人科医会/4.排卵の予測/血中estradiol値
http://www.jaog.or.jp/lecture/4-排卵の予測/
プロゲステロンとは
プロゲステロンの働き
プロゲステロンは黄体ホルモンです。プロゲステロンは子宮を妊娠しやすい状態に変え、妊娠を継続するために欠かせないホルモンです。妊娠しなかった場合には、分泌量が減って月経が始まります。
プロゲステロン(P4)値からわかること
血液中のプロゲステロンの値から、受精卵が着床した場合に妊娠を維持できるのか、また妊娠の有無を確認することができます。
プロゲステロンの基準値は、黄体期なら2.05〜24.2ng/ml。検査結果がこの値に達しない場合には、不妊治療として「黄体ホルモン補充療法」が必要です。
不妊治療後に月経がない場合には妊娠反応を調べます。その検査のひとつがプロゲステロン。妊娠初期(4〜13週)には13.0〜51.8ng/mlが基準値となります。
SLR総合検査案内/内分泌学的検査/プロゲステロン
http://test-guide.srl.info/hachioji/test/detail/004410902
排卵誘発剤の仕組み
排卵がうまく起こっていないと判明したときには、 不妊治療に排卵誘発剤を使用します。排卵誘発剤には内服と注射の2通りがあるので、それぞれ代表的な薬剤について簡単に解説します。
内服薬
クロミッド(クエン酸クロミフェン)
FSHを分泌する脳の視床下部というところに働きかけて、十分な量のFSHが分泌されるように促す作用があります。
月経5日目から5日間内服しますが、卵胞の成長がいまいちであれば内服する量を少しずつ増やすこともあります。服薬は自己管理にはなりますが、通院の負担が少ない治療です。
卵胞が成長しているのに自然排卵が起こらないときには、違う種類の排卵誘発剤を注射して排卵を起こします。
クロミッドには顔面紅潮や尿量の増加などの副作用があり、治療が長期にわたると子宮の壁が薄くなったり、子宮頸管粘液が少なくなったりする可能性があります。効果が薄い場合は半年~1年で注射の治療に切り替える必要があります。
セキソビット(シクロフェンル)
クロミッドと同じく、脳の視床下部に働きかけてFSHの分泌を促す作用があります。クロミッドとの違いは作用が緩やかな点です。副作用も出にくいです。
クロミッドを使って副作用が現れたら、セキソビットに変更して治療を続けることができます。とはいえセキソビットにも頭痛や卵巣過剰刺激症候群などの副作用が起こる可能性はあります。
注射薬
ゴナドトロピン療法
排卵前の月経期から卵胞期の間にhMGとhCGをそれぞれ1回ずつ注射することで、卵巣に直接働きかけて卵胞の成長を促します。内服薬で効果がないときの選択肢で、高い確率で排卵が起こすことができる方法です。
月経5日頃から注射を開始しますが、薬剤の量が適切かどうか超音波や血液検査も受けるので頻回に通院することになります。
しかし副作用として、1度の排卵で複数個の卵子が排出されるリスクがあり多児妊娠の原因にもなります。また、卵巣過剰刺激症候群の発症率も高くなります。
hCGとは
hCGはLHと同じ作用をもち、成熟した卵子の排卵を促します。注射をした34~36時間後に排卵が起こるので、排卵日の特定が必要な不妊治療(タイミング療法、人工授精)ではよく使用される薬です。
黄体機能不全など黄体期のLH分泌量に異常がある時には、排卵後にhCGを注射することで妊娠を維持できるようになります。
徳島大学病院/産婦人科/不妊について/不妊治療[4]不妊症の治療/排卵誘発法
http://www.tokudai-sanfujinka.jp/Patient/treatments.html
排卵検査薬の仕組み
排卵日を予測する方法の中に、自宅で手軽に行える排卵検査薬があります。正式な名称は「排卵予測検査薬」です。薬局では妊娠検査薬の隣に陳列されているのを見かけます。尿中のLHの量から排卵日を予測することができます。
排卵が起きる前には必ず、LHの分泌量が急激に上昇・下降する「LHサージ」という現象が体内で起こります。
血中LHサージの持続時間は48時間で、ピークから10〜12時間で排卵します。尿検査でも血液検査から数時間しかズレがなく、正確性が高いです。
月経予定の17日前から、毎日ほぼ同じ時刻に1回検査します。検査をする前に水分をたくさん飲む、大量の汗をかく行為は正確な判定ができなくなることがあるので控えましょう。
排卵検査薬が陽性になったら、90%以上の確率で2日以内に排卵が起こります。
出典:
ロート製薬/商品情報サイト/ドゥーテスト
https://jp.rohto.com/dotest/products/lh/
日本産婦人科医会/4.排卵の予測/
http://www.jaog.or.jp/lecture/4-排卵の予測/
執筆者
小坂 恵
看護師。総合病院(婦人科、外科、脳神経外科、整形外科、放射線科など経験)で6年勤務し、出産を機に退職。その後、美容皮膚科・形成外科クリニックと訪問看護ステーション(ダブルワーク)で看護師として復職し、現在6年目。看護師を続けながら、Webライターとして美容、医療、健康系の記事を主に執筆。美容の認定専門家として記事監修・コメント執筆を行っている。
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