【不妊治療ネット|不妊治療net】不妊治療口コミ&ランキング 妊活と不妊治療をサポート!口コミから探せる

妊活と不妊治療をサポート!口コミから探せる

体外受精の妊娠率を上げる!!?先進医療、アシストハッチング(AHA)とは

2025/03/14

2025/03/18

 2022年から先進医療であるアシストハッチングも保険対象となり、国内の多くの医療機関において、アシストハッチングが実施されるようになりました。
 体外受精や顕微授精の着床を手助けし、着床率を上げることで妊娠率を上げる取り組みであるアシストハッチングがどのようなものかを今回は見ていきましょう。
 

アシストハッチングとは

 アシストハッチング(AHA)とは、体外受精や顕微授精を行う際に、排卵直後に卵子や受精卵を保護する役割である胚の外殻である透明帯に人工的に穴をあけたり、薄くすることで胚盤胞が胚から離脱し孵化し、着床を行う事を補助する技術のことです。
 透明帯からの孵化(ハッチング)を補助(アシスト)ことからアシストハッチングという名前が付けられています。

アシストハッチングの目的とは

 胚は通常、多数の精子が侵入するのを防ぐ、受精卵を保護するために透明帯という外殻に包まれて保護されています。胚が子宮内膜に着床する時になると、胚が成長し、透明帯を破って孵化します。
 しかし、高齢や胚を凍結しているなど様々な理由で透明帯が硬質化してしまい、胚が透明帯を破れない、破れたとしても時間がかかってしまい、着床ができない状態になることがあります。
 着床ができないと受精卵が発育することができず、妊娠が不可能になってしまいます。
 そのため、アシストハッチングで胚の透明帯の一部を削ったり穴を開けたりすることで羽化しやすくすることで着床率と妊娠率を向上させていきます。
 

アシストハッチングの対象とは

 アシストハッチングは基本的には体外受精で良好な胚を移植しても妊娠につながらなかった方が対象になります。
 胚などの凍結融解しての移植により常の胚に比べると透明帯が硬くなることがあります。また、高齢で胚が硬質化してしまった方や体外受精で良好胚を何度も移植したものの着床しない方が対象となります。


 2014年のASRM(米国生殖医学会)のガイドラインでは、38歳以上の高齢患者、体外受精(IVF/ふりかけ法)を数回行っても妊娠継続に至らない反復不成功の方、胚の質が不良な方が適用対象と定義されています。
 ただし、アシストハッチングには国内では多くの施設で実施されている治療ですが、海外では妊娠率を向上する明らかなデータがないため承認をしていない国もあります。
そのため、アシストハッチングは医師が有効と判断した症状のみを対象として治療を行います。
 

アシストハッチングのリスク

 日本では2007年から全国の生殖補助医療施設で行われた治療法を登録し分析を行っています。
 その結果、アシストハッチングには2人以上の赤ちゃんを同時に妊娠する多胎妊娠の確率が高まる可能性があることが示唆されています。
 自然妊娠での一卵性双生児の発生率は0.4%程度と言われていますが、アシストハッチングでこのパーセンテージが高まる可能性があります。
 胚盤胞移植そのものが多胎妊娠の可能性もあるといわれていますが、アシストハッチングでの多胎妊娠のリスクを否定できる根拠はないのが現状です。
 

胚移植とは

 胚移植とは夫婦から精子や卵子を採取し、体外受精や顕微授精で受精を行い受精卵になった後に培養し胚になった後に超音波検査で確認しながら女性の体内に戻すことです。
 数日かけて、胚が子宮内膜に潜り込めば着床となり妊娠が起きます。
 胚移植には大きく分けると、新鮮胚移植と胚を冷凍させ保存させる凍結融解胚移植の2つがあります。

新鮮胚移植とは

 採卵後に受精卵を培養し、胚になった後に良質な胚を選別し、同じ周期内に子宮に胚移植を行う方法です。
 胚を凍結せずにリアルタイムで移植するため新鮮と定義されています。
新鮮という響きなので妊娠率が高く見えそうですが、採卵の際に子宮や女性ホルモンが負担を受けている直後のため妊娠率は凍結融解胚移植に比べて低いのが現状です。
 採卵した周期に移植し、7~10日後に妊娠ができたか確認が可能です。
卵巣刺激方法や子宮内膜の状態によっては新鮮胚移植はできないことがあります。

 

凍結融解胚移植とは

 冷凍胚とは、体外受精や顕微授精で卵子と精子を採取し受精させ、受精卵を培養した胚を液体窒素中で凍結して、液体窒素タンクで保存したものです。
凍結融解胚移植では採卵した周期の次の周期以降に冷凍した胚を融解させ、子宮内に移植していきます。
 子宮内膜が薄い女性や、月経不順などで排卵日が特定できない方に有効な治療法です。
胚を凍結することで、卵子や精子の老化を防ぎ、受精率が下がる前に保存できます。そのため、第2子や第3子を検討する際にも、保存時の年齢で受精・培養された胚を使用でき、妊娠率の上昇につながる可能性があります。
 採卵をしなくてよいので、身体的・金銭的負担が緩和され、妊娠に都合の良い時期に胚移植を行う事が可能です。

 

アシストハッチングの種類

アシストハッチングには大きく分けて3種類の方法があります。

レーザーアシストハッチング

 レーザーアシストハッチングは安全で簡単に行えることもあり現在のアシストハッチングでは主流と言えます。
透明帯に赤外線レーザーを照射し、受精卵を覆う透明帯に穴をあけたり薄くしたりする治療です。
 レーザーを照射することで精密かつ迅速に処理が行われ、透明帯にのみ照射できるので胚に対して最小限のダメージで済みます。
 透明帯を薄くしたり一部に穴をあけることで胚が孵化するのを手助けします。
レーザーアシストハッチングでは、レーザー照射を行う際に熱がわずかながら発生するため、ほとんどありませんが胚に熱の影響が及ぶ可能性があります。

 

機械式アシストハッチング(PZD法)

 機械式アシストハッチング(PZD法)とは、初めてアシストハッチングを考案したCohen氏がした方法で、PZDピペットという鍼状のピペットを透明帯と胚盤胞本体の隙間に刺しこむことでホールディングピペットと透明帯をこすり合わせ物理的に切れ目を入れていきます。
難度が高いため、培養者の技術力が求められます。

 

化学式アシストハッチング

 化学式アシストハッチングとは、酸性タイロード液など酸性の溶液を使用し透明帯を一部、溶かして透明帯を薄くしたり穴をあけます。
薬液が胚にダメージを与える可能性があるため、現在ではほとんど行われていません。

 


 

レーザーアシストハッチングの種類

 現在ではほとんどレーザーアシストハッチングが主流となっています。
レーザーアシストハッチングは、胚の状態によって3つの方法が現在では行われています。

透明帯開孔法(ZD法)

 透明帯の一部に穴を開けて孵化をしやすくしていきます。
レーザーによる熱の影響や穴をあけるダメージを最小限にするため、少ない照射でなるべく大きく開口にすることが重要です。
ダメージを気にしすぎて開口部が小さすぎると内部細胞塊が分断され、多胎妊娠の可能性が高くなります。

 

透明帯菲薄化法(ZT法)

 受精卵を覆う透明帯の一部を薄くするアシストハッチングです。
赤外線レーザーを透明帯に照射し、受精卵を覆う透明帯を薄くしていくことにより、胚が孵化しやすい状況を作ります。
 この方法では実は菲薄化していないところからハッチングする卵もあるため、アシストハッチングの効果が薄れていく可能性があります。

 

完全菲薄化法(AZT法)

 赤外線レーザーを透明帯に照射し、受精卵を覆う透明帯を完全に取り払う方法です。
非常に手間がかかりますが、効果としては一番効率の良い方法です。
 

まとめ

 アシストハッチングは多胎発生などのリスクや効果が確実に立証されていないため、状況を見て、医師が必要であれば行う治療です。
 体外受精や顕微授精で良質な胚を移植して妊娠につながらない場合は着床の窓の見直しなどと同じように効果があるともいわれている治療のため、良く医師と相談して治療を検討していきましょう。