糖尿病と不妊症
2024/11/21
2024/11/24
糖尿病は不妊症の原因の一つと考えられています。
不妊症の男性が糖尿病を患わっている関係は35~51%と高い傾向があります。これらをよく見てみると糖尿病は精巣に対する影響と精巣に働きかけるホルモンに対する影響の2通りが見て取れます。
女性の場合、糖尿病は排卵障害や月経不順に影響が出ていることがうかがえます。これは排卵に重要なインスリンが糖尿病では代謝が障害されるためと考えられています。
糖尿病とは
糖尿病には1型と2型があります。
1型は膵臓のインスリンを分泌するβ細胞が何らかの原因でこわされインスリンが作られなくなることで引き起こされる状態です。インスリンを体内で自己生成ができないため、注射でインスリンを補う必要があります。
2型はインスリンの分泌が少なくなったり、働きが悪くなることで引き起こされる状態を指します。糖尿病患者のほとんどが2型糖尿病となります。
日本人は遺伝的にインスリン分泌が弱い傾向にあり、肥満やストレス、運動不足などの生活習慣病や加齢が原因で発症するといわれています。また、内臓脂肪が多いメタボが原因でも引き起こされます。
血糖値が高い状態が続くことで体の細胞が常に過剰になり痛み続けます。不妊症以外にも動脈硬化による脳梗塞・心筋梗塞、知覚障害、不整脈などを引き起こす可能性が高まります。
また、妊娠糖尿病というものがあり、妊娠中に初めて判明した糖代謝の異常で、 妊娠が終わると多くの人は血糖の値が正常値に戻ります。 妊娠糖尿病の基準値より高い血糖が出た場合は妊娠中でも明らかな糖尿病という診断が出ることもあります。糖負荷試験をした際に、空腹時血糖92mg/dL以上、1時間値180mg/dL以上、2時間値153mg/dL以上のいずれか1点以上を満たした場合に診断されます。
妊娠糖尿病は、妊娠後に胎盤から分泌されるホルモンの影響でインスリンが働きにくくなることから引き起こされます。
糖尿病と女性の不妊症の関係
月経不順や不妊症の原因の一つとして糖尿病が上げられます。これは統計的に見て取れるのですが直接的な原因としての理由はまだわかっていません。
糖尿病が原因で不妊症が引き起こされる主な要因として、インスリンが関係していると考えられています。インスリンは血糖を下げる働きがありますが、それとは別に排卵において重要な働きがあります。糖尿病はインスリンの分泌を抑制する働きがあり、2型糖尿病や妊娠糖尿病などはインスリンは作用が効きにくくなるインスリン抵抗性を引き起こすと考えられています。
インスリン抵抗性が起こることで卵胞が成長障害を起こしてしまい、排卵がしにくくなるといわれています。その結果、多胞性卵巣症候群を引き起こし、無月経や月経不順などが認められます。
この場合の治療法としては排卵誘発剤を使用したり、FSH製剤を注射する治療を行います。また、腹腔鏡下卵巣開孔術を検討する場合もあります。また、インスリン抵抗性改善薬を投与することで排卵障害が解消され、妊娠率が上がり流産が減るというデータが出ています。また、食事療法や生活習慣の見直しにより体重を管理することで月経不順が解消されたという報告もあります。
糖尿病と男性の不妊症の関係
前述してあるように血糖値が高いと細胞にダメージを負います。精子も細胞のため、例外ではなく、精子の形成や、精子を形成する周囲の細胞に影響が出てしまいます。
男性不妊に関連すると細胞や神経の機能障害により勃起障害、神経の調律ができずに逆行性射精などの射精障害、精巣に障害が出ることで下垂体や精巣関連のホルモンの乱れが引き起こされ、精子形成の低下などが引き起こされます。
勃起障害
勃起障害とは性交時に挿入できない、もしくは最後まで勃起できない状態を指します。加齢と共に勃起能力は落ちていきます。米国の研究グループの見解では糖尿病の男性の勃起障害は糖尿病でない男性よりも2〜3倍高いという報告がされています。
実は勃起障害は男性の10人に1人が経験する深刻な問題となっています。血糖値が高い状態が続くと細小血管が痛み、陰茎への血流に支障がでてしまいます。また、神経にも問題が起こり、神経線維から脳への伝達が悪く性的反応に対して支障が出てしまいます。
バイアグラなどの薬効治療や生活習慣の見直しにより改善が可能です。
射精障害・逆行性射精
逆行性射精とは、射精時に外ではなく膀胱側に対して射精する状態を指します。精子の量が減っていることで症状が引き起こされている可能性を判別できます。逆行性射精は痛みがあるように際には痛みを伴いません。代わりに射精後に尿が白く濁る、射精後に尿と一緒にどろっとしたものが出てくるなどの症状がある方もいます。精子の量が少なくなるため、妊娠率は低くなります。
精巣障害
糖は精子に対して栄養を与える重要な要素です。精子も細胞のため細胞活動と、運動性や受精などの機能を維持するために糖を栄養源として使用します。糖を栄養とするためには一定の濃度で糖があることが重要で高濃度になると精子の働きは逆に低下してしまいます。また、精子を形成する重要なセルトリ細胞の働きにも関係しています。セルトリ細胞は精子を作るうえで糖を利用・分解して乳酸を生成するのですが、高血糖はこれらの機能を阻害してしまいます。
また、高血糖は酸化や炎症を引き起こしてしまい精巣細胞に影響し精子の低下を引き起こします。高血糖では化学物質の代謝が上手く行われず、糖を代謝する際に出来る老化物質である終末糖化産物が分解されず、酸化ストレスを過剰に算出したり活性化させることで細胞にダメージが生まれます。身体全体に炎症のような状態を引き起こしてしまうため、炎症性物質がうまれ細胞にダメージを与えてしまいます。
糖尿病の原因
ホルモンの影響
甲状腺ホルモンの分泌が何かしらの理由で低下することで代謝が低下し、糖尿病になる危険を高める可能性があります。糖尿病患者約10%が甲状腺機能低下症を患わっているデータがあります。
また、血糖値を低下させる機能はインスリンしかないのに対し、血糖値を高めるホルモンはグルカゴン、成長ホルモン、コルチゾール、アドレナリン、甲状腺ホルモンなど様々なホルモンがあります。この血糖値を上げるホルモンが何かしらの理由で促進された場合、インスリンとのバランスを崩してしまい血糖値が上がってしまいます。
糖とインスリンの関係
人間が食事を行うと栄養の一部は糖として腸に吸収されます。また、食事以外でも肝臓から糖が作られ、常に血液中に糖が流れており、内臓や細胞、筋肉などに吸収されエネルギーとして働いていきます。 この吸収されるときに血液に流れているインスリンが働きかけることで細胞内に問題なく吸収され、血液中の糖の濃度が一定の範囲にとどまることになります。
糖尿病になると、インスリンが阻害されることで糖が細胞に上手く吸収されない状態になっています。この状態はインスリン分泌低下とインスリン抵抗性と言われる2つの状態に分かれています。
インスリン分泌低下とは膵臓が上手く働かないことでインスリンを作ることができない状態を指します。
インスリン抵抗性ではインスリンは作られていますが、運動不足や肥満などの生活習慣病などが原因でインスリンが上手く働かない状態を指します。
このどちらの状態でも血液中から糖があふれてしまう状態になっています。
糖尿病の治療法
糖尿病の治療の目的は血糖値のコントロールです。継続が重要なため、生活の質(QQL)を維持しながら血糖をコントロールすることが重要です。血糖値を下げることは可能ですが、上がる要因を治療することは難しいため、病気とうまく付き合っていくことが重要です。
糖尿病の治療は患者様一人一人の体質や症状により違うため、一律には言えませんが主に糖尿病1型の方は自分でインスリンが作成できないため注射による薬物療法、2型の方は食事療法と運動療法の2つを中心に生活習慣を改善し、血糖をコントロールしていきます。
薬物療法
注射による薬物を用いて血糖値をコントロールし、合併症の進行を予防していきます。薬物療法で重要なのは運動や生活習慣の改善と食事療法を並行で行う事です。生活習慣や食事が乱れると、薬物療法を用いても改善することが難しい状態になります。
インスリン注射
膵臓からインスリンが分泌されない、分泌量が少ない、効きが悪いなどの症状を改善するために注射によりインスリンを補っていきます。
このインスリン投与は糖尿病の合併症の進展が抑えられることは証明されており、効果の高さは保証されています。しかし注射などでインスリンを補う療法にはリスクもあります。インスリンが正常な場合、インスリン分泌量は適切にコントロールされ、過剰になることはありません。しかし注射で外部からインスリンを補充した場合にはそれらを全て吸収されてしまうため、血糖値のコントロールができません。そのため、血糖値が下がり続けるリスクが内包してしまいます。そのため、低血糖の予防や対策を医師の判断の元しっかりと行う事が重要です。
食事療法
調理法
栄養素の補完のために少量ずつ、品数を多めにしていきます。食物繊維は第6の栄養素と言われ食後の血糖値の急上昇を抑えてくれる作用があります。1日20~25gを目安に摂取していきましょう。
肉類は脂身が少ない赤身肉を摂取するなどの工夫が重要です。また、脂身や鶏肉の皮をとったり、煮たり、蒸したり、網で焼くことで余計な油を落としてカロリーを抑えることも大切です。
油も植物性を多く使用するようにしていきましょう。牛脂などの飽和脂肪酸は動脈硬化の原因となります。意外かもしれませんが胡椒などの香辛料は塩分が少ないため塩や醤油の代わりに使用することで塩分を抑えることが可能です。
食べ方
ダイエットで広く知れ渡りましたが、まず野菜をとることで食物繊維が血糖値を抑えて余分なカロリーの吸収を抑えましょう。また食事を1日3回、できれば均等か夜を少なく食べることが重要です。
食事の量に差があると食後の血糖量がばらつきがでてしまいます。朝ご飯を抜く人がいますが、吸収率が上がり昼や夜にその分カロリーが吸収され、血糖値が上がってしまいます。
まとめ
不妊症において糖尿病は女性の、卵子の老化排卵障害や月経不順、また男性の精子に関わる大きな原因です。糖尿病は先天的なインスリンの分泌障害もありますが、生活習慣病が大きな原因となっていることもあります。
生活習慣や食生活を見直すことで体の改善を行うことで糖尿病の症状や発症を抑えていきましょう。
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