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体外受精周期に性交渉を控えたほうがいいこれだけの理由

2024/02/29

2024/02/29

 不妊治療の中でも、特に体外受精などの高度生殖医療(生殖補助医療)を行っている患者様から、「体外受精の治療周期中は、性交渉はどうしたらよいでしょうか?」というご質問をいただくことがよくあります。


 先に結論から言えば、夫婦生活は絶対に持たずに控えるか、あるいは、どうしても持たれるという場合には必ず避妊を行なうように指導をしています(基本的には絶対に控えるようにしていただきたいです)。


 今回は、体外受精周期になぜ性交渉を控えたほうがいいのか。理由をなるべくわかりやすくまとめて、順に解説をしていきたいと思います。
 

胚培養士 川口 優太郎

医療法人社団 鳳凰会 フェニックスアートクリニック胚培養室統括室長。リプロダクティブサポートファーム東京代表。埼玉医科大学卒業。国際基督教大学(ICU)大学院博士前期課程修了(理学修士)。臨床に従事する傍ら、妊活・生殖医療関連のセミナーやイベントで講演を行うほか、妊活や不妊に特化した企業のサービス、アプリケーション、サプリメント、メディア・記事・書籍等の医学監修を行うなど、精力的に活動している。胚培養士として史上初めてJCI JAPAN TOYP『総務大臣奨励賞』を受賞。

卵巣刺激における痛みの原因になる

 体外受精では、排卵誘発剤の投薬によって卵巣刺激を行い、卵巣内に卵胞をたくさん育てていきます。卵巣内にたくさんの卵胞が育ってくると、腹部が張ったような症状が出ることがよくあります。


 この腹部の張りのほか、患者様によっては、まれに卵巣が排卵誘発剤に過剰に反応してしまう卵巣過剰刺激症候群;OHSS(ovarian hyperstimulation syndrome)が誘起されてしまうことがあります。


 OHSSでは、卵巣が過剰に腫れてしまったり、腹腔内に水が溜まったりするなどの症状が出ることがあり、重篤化すると血栓症や腎不全などの合併症を引き起こします。


 日本産科婦人科学会の報告では、生殖補助医療における排卵誘発剤の使用で、約5~12%程度にOHSSの症状が出ると報告されています。
 排卵誘発を行っている時期に性交渉を持ってしまうと、OHSSの症状の有無に関係無く、腹痛や炎症を引き起こす直接的な原因となりかねないため、性交渉は控えた方がいいでしょう。
 

感染症や炎症を誘発する

 体外受精では、卵子を体外に取り出すために『採卵』という手術を行います。
採卵では、長さ約35~40cmもある採卵針(Follicle Aspiration Needle)を、膣から挿入し、卵巣内の卵胞に向かって突き刺します。
 この際に、当然ながら採卵針は膣壁を突き刺し、腹腔内(お腹の中)を通過することになります。また、卵巣の位置や、卵胞が育つ位置によっては、子宮や膀胱をかすめることもあります。
 このように、採卵は膣というデリケートな場所が人為的に傷付けられる手術であると言えます。


 対して、男性側の精液は、尿道というあまり衛生的では無い器官を通って体外に射出されますので、精液中には細菌や白血球などが含まれていることも多くあります。
 採卵が実施される前、または実施した後に性交渉を持ってしまうと、採卵による傷口から精液中の細菌や白血球などが侵襲し、感染症や炎症を引き起こしてしまう原因となりかねません。

 以上から、性交渉は控えた方がいいでしょう。

極めてリスクの高い多胎妊娠を誘発する

 先にも解説した通り、体外受精では、排卵誘発剤の投薬によって卵巣刺激を行い、卵巣内に卵胞をたくさん育てていきます。
 基本的には、採卵の手術によって育った卵巣内に卵胞はすべて採っていきますが、まれに採卵で採り切れなかったり、卵巣が育った場所によっては針が刺せずにお腹の中に残ったままになったりすることがあります。


 複数の卵胞がお腹の中に残ってしまった場合に性交渉を持ってしまうと、複数の卵子と精子が受精して多胎妊娠(双子以上の妊娠)になってしまう可能性があります。
 多胎妊娠は非常にリスクが高く、例えば『周産期死亡率』を見てみると、多胎妊娠では単胎妊娠と比較して死亡率が約12倍も高いことが日本産科婦人科学会により報告されています。また、出生した児にとっても、合併症や新生児死亡などのリスクが顕著に高くなることが報告されています。


 リスクの高い妊娠を避けるためにも、性交渉は控えた方がいいでしょう。
 

移植周期でも同様に性交渉は絶対に控える

 同じような問題は、胚移植周期でも同様に起こります。
自然周期(または、これに近い形)で胚移植を行う場合、卵巣は通常どおり排卵をします。
この時に性交渉を持ってしまうと、この時に排卵した卵子と精子が受精した胚と、胚移植をした胚と、合わせて2個のいずれの胚も子宮に着床・妊娠してしまう可能性があります。


 2個とも着床・妊娠すると、二卵性の双胎(多胎妊娠)となるため、先述した通り極めてリスクの高い妊娠となってしまいます。
 日本産科婦人科学会では、このようなリスクの高い多胎妊娠を避けるため、『生殖補助医療の胚移植において、移植する胚は原則として単一とする』と定めています。
 つまり、基本的には胚移植は胚を1個ずつでしか移植をすることが出来ないということです。


 別の視点からも付け加えると、アメリカ生殖医学会が発行している学術誌Fertility and Sterilityにおいて、『着床の時期に性交渉を持つと、着床・妊娠率を低下させる要因になる』と言う研究論文が発表されています。
 ただし、2000年代に出されたやや古い論文であることや、不妊症では無い一般の女性の月経と性交渉のデータから算出されているため、生殖医療の治療周期にそのまま当て嵌まるかは検討されている段階です。
 ちなみに、ホルモン補充周期(HR周期)による移植では、基本的には排卵することは無いとされていますが、まれにお薬の効きが計画通りにいかないことがあり、卵胞が育ってしまうことがあります。


 自然周期、HR周期に限らず、胚移植周期においても性交渉は控えた方がいいでしょう。
 

男性側にとっても悪影響になる可能性がある

 不妊治療において、妊娠の成立のためには、当然ながら卵子だけではなく精子の状態も極めて重要な因子となります。
 精液の状態は、精液量、濃度(精子の数)、運動率、奇形率などの複数の項目によって評価されます。
WHO;世界保健機関によって、それぞれの項目に基準値が設定されていますが、この基準値は下限値でもあり、簡単に言えば「この値をクリアしないと妊娠は難しい」という最低ラインが示されています。


 精液は、射出する頻度が多いと、精液量や濃度が低下してしまう傾向にあるため、射出してから次の射出までに、おおよそ3~4日程度の禁欲期間を設けるのが良いとされています。
 そのため、採卵予定日の付近で性交渉を持ってしまうと、精液量や濃度が低くなってしまい、採卵日の当日にベストコンディションでは無くなってしまう可能性があります。


 採卵によってせっかく良い状態の卵子が採れても、精子の状態が悪いがために治療の幅が極端に狭くなってしまうというケースも、臨床では多く見られます。
 なるべく良い状態の精子を獲得するためにも、少なくとも採卵予定日の3~4日前は、性交渉、ならびにマスターベーションは控えた方がよいでしょう。
 

最後に

 今回は、体外受精の治療周期中の性交渉について解説をしてきました。
「これまでタイミングをとっても妊娠しなかったから大丈夫!」とか、あるいは「少しでも妊娠の確率を高めたい‥‥」と、体外受精の治療周期中にも関わらず性交渉をとってしまう患者様は結構いらっしゃいます。


 しかしながら、解説した通り様々な危険性があり、クリニックによっては性交渉を持ったらその時点で一度採卵・移植を中止するという厳しい措置をとっている施設もあります。


 なるべくリスクの少ない、衛生的で安全な妊娠・お産へとつなげるためにも、是非、今回の解説を参考にしていただけたらと思います。