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体外受精周期の漢方のススメ

2023/12/28

2024/02/13

 晩婚化や女性のキャリア進出が進んだことで生殖補助医療によって出生する子どもの割合は徐々に増加し、いまや約12人に1人が体外受精で生まれる時代になったといわれています(2021年現在)。
 昨今の不妊治療の進歩は著しいですが、それでも原因不明の不妊に悩む女性は少なくありません。

 東洋医学では不妊とは「妊娠するための身体ができていない状態」という解釈をされることが多いです。


 体外受精のような生殖補助医療を行う際必ずしも漢方を使用するわけではありませんが、東洋医学では不妊治療において子どもができない現象だけではなく、精神面や生活習慣など不妊を起こす原因を全体的にサポートするので、漢方薬を服用しながら生活習慣を改善することで、「妊娠しやすい身体」にしていくことにつながる可能性が高いと考えられており、結果として不妊治療の効果を上げていくとされています。


 今回のコラムでは体外受精周期に合わせ、いつどの漢方薬を飲むとよりその漢方の効果を発揮することができるか、また生活習慣は何に気を付けたらよいのかをお伝えしていきます。
 

薬剤師 吉井梓

都内総合病院で産科病棟担当薬剤師として勤務後、「妊活中の方へ正しい情報を提供したい」という想いから株式会社ファミワンへジョイン。 特に女性の場合は妊活中から授乳期にかけての薬の使用について慎重に考える必要がありますので、薬剤師の立場から皆さまに分かりやすく情報を発信していきたいと思っています。

漢方薬の選び方

 東洋医学では体のバランスを「気血水」のバランスでとらえます。

 生命活動を営む根源的にエネルギーである「気」、気によって体内を巡らされる赤い液体で西洋医学の血液と同じ位置づけにあたる「血」、血以外の体液を「水」と考え、これらが過不足ないよう体を整えることが重要であると考えられます。そして不妊の人は多くの場合これらのバランスが崩れているため、「妊娠するための身体ができていない状態」と解釈をされるのです。


 また東洋医学において生殖機能は五臓六腑のうち「腎」が関与しており、特に月経周期異常の本態は「腎虚」と考えられます。不妊の原因がはっきりしている場合それに対応した服薬などの西洋医学的対応をとることも可能ですが、不妊で悩む女性全体の10~25%は原因不明だといわれているため対処も難しいとされているのでそのような場合は漢方薬による体質改善を試してみてもよいかもしれません。


 一般に体外受精周期の場合採卵までは質の良い卵子を育てるために排卵誘発剤を使用することが多いですが、卵子の加齢が不妊の原因の一因である場合には、「腎」の機能低下を改善するために八味地黄丸の服用が有効であることが知られており、服用によって卵胞の成熟・排卵が促進されると考えられています。


 もし「瘀血」という身体の中の血の巡りが悪い状態にも該当する場合は八味地黄丸に加えて桂枝茯苓丸を服用することで、排卵や黄体の維持が改善することが期待されます。

 採卵後は移植する受精卵がしっかり着床するよう、子宮内膜をふかふかにする漢方薬を選択したいですよね。温経湯は黄体形成ホルモンの分泌を改善することで黄体機能不全を改善すると考えられています。このような効果から採卵後は温経湯、瘀血体質が強い場合はそこに桂枝茯苓丸を追加することが推奨されます。

 着床障害の要因は様々ですが、子宮内膜の水の巡りをよくすることが有効だと考えられています。そこで、産婦人科領域では最も一般的で補血・利水作用がある当帰芍薬散を服用することで移植後の着床促進を期待します。


 また当帰芍薬散には血行改善作用もあり、胎盤血流を増価させて胎児発育を促す可能性についても知られているため、妊娠が判明した場合は主治医と相談の上継続して服用してもよいかもしれません。一方で桂枝茯苓丸については流産につながる生薬を配合しているため万が一妊娠が判明した時点で服用をしていたら速やかに服用を中止しましょう。

 体質やそれまでの生活習慣によって個人差はありますが、漢方薬は即効性があるものではないので服用したからと言ってすぐに体質改善が見込めるわけではありません。効果を実感するために最低でも約3か月、多くの人が約半年~1年程度かかるといわれています。また卵子のもとになる原子卵胞が排卵するまで約7か月程度かかることからも、ある程度継続した服用が必要であることが分かります。
 

生活習慣について

 そもそも「漢方」とは鍼灸や食養生も含めた医学を意味しており、「漢方薬」とは漢方医学の理論に基づいて処方される医薬品のことを指します。したがって漢方薬の効果を高めるためには、食事や生活習慣を意識的に整えることが大切なのです。


 ここでぜひみなさんもご自身の生活習慣を見直してみてください!


・葉酸やビタミンE・Dなどを意識したバランスの良いお食事がとれていますか?
・日常に適度な運動を取り入れられていますか?
・質の良いまとまった睡眠はとれていますか?
・ストレスは溜まっていませんか?もしくはストレス発散方法を持っていますか?
・毎日入浴できていますか?(移植当日はシャワーのみにしましょう)


 いかがでしたでしょうか?これらはあくまで一例になりますが、ストレスにならない程度に出来る範囲で生活習慣を整えていきましょう。

男性の漢方薬の選び方

 WHOの統計によると、不妊の原因の約半数は男性側にもあることが分かっています。

 不妊治療は夫婦二人のことですから、男性側も積極的に検査を受ける、必要なら治療を受けることが大事だといえますね。


 体外受精周期において「漢方」を取り入れるのであれば、まずは男性側も女性同様生活習慣を見直すことから始めてみてはいかがでしょうか?喫煙している男性の精子は、非喫煙者と比較して量・運動率がともに低下することがわかっています。また過度な飲酒によって体が水分過多になった状態も精子にはよくありません。


 そして女性と大きく異なるのが「体温管理」です。精子は熱に弱いため精巣を温めすぎないことが大切なので、サウナやパソコンの膝上使用、締め付けるような下着の使用には気を付けて過ごしていきましょう。


 食事・睡眠・運動・ストレス管理については女性と同じ考え方で構いませんので、夫婦足並みをそろえて一緒に生活習慣を整えていきましょう。

 

 体外受精周期の男性が漢方薬を取り入れる場合、考え方は大きく3つに分けられます。


 1:体外受精は性交渉が不要なので基本的にEDでも問題はなく、万が一自慰による採精が不可能であったとしても手術によって精子が回収できれば体外受精を行うことは可能です。漢方薬によるEDに関しての対処法はいくつか考えられ、生活習慣が原因の場合は大柴胡湯や防風通聖散を、心因性の場合は柴胡加竜骨牡蛎湯などが選択されます。


 2:東洋医学では精索静脈瘤を血の巡りがよくない「瘀血」の状態と考えるため、血の滞りを取り除く目的で桂枝茯苓丸を服用することがあります、


 3:疲労や病後回復期などで精子の質に影響が出ている場合は補中益気湯や十全大補湯加齢による精子の機能低下に対しては女性同様「腎虚」の代表処方である八味地黄丸を服用すると効果が期待できますよ。

まとめ

 今回は体外受精周期の漢方薬の選び方や生活習慣で気を付ける点についてお届けしました。


 全員が漢方を取り入れる必要はありませんが、もし治療に行き詰っている・体質改善に興味がある場合、まずは生活習慣の改善から取り入れてみてはいかがでしょうか?


 またコラムで示した漢方薬はあくまで一例です。漢方薬は自分の体質に合ったものを服用して初めて効果が出るものであり、体質も常に同じではなく年齢や季節で刻々と変化するものです。その時々自分に合った漢方薬を選択することは難しいので、今回のコラムで漢方薬に興味を持っていただけたのであればぜひ担当医に相談の上、お近くの漢方薬局などでぜひ一度体質診断をしてもらってみてはいかがでしょうか?