禁欲期間って何日くらいがいいの?
2023/12/04
2024/02/13
精子は貯めておけば量が増える?でも貯めすぎると古くなってしまう?
ベストな禁欲期間とは一体どれくらいなのか、不妊治療に取り組む方なら悩んだ経験があるのではないでしょうか。
精液検査の結果を改善するために
世界保健機関(WHO)によると、不妊の原因の約50%は男性側にあることがわかっており、質の良い精子を作ることが男性の妊活ではとても重要となってきます。実際に不妊治療の現場では、精液検査の結果をよくしたい、という相談を受けることが非常に多くあります。
精巣内では毎日精子が作られ、1日に約1億個が作られています。精子は、元となる精粗細胞から約75日(2ヶ月半)ほどかけて作られます。つまり、現在射精される精子は大体3ヶ月ほど前に作られ始めたものと言えます。
そのため、精液所見を改善するには、日頃から質の良い精子を作る生活習慣を心がけることが大切です。生活習慣については、1日3食バランスの取れた食事を摂ること、長風呂や長時間のサウナを避けること、お酒を飲み過ぎないこと、禁煙することなどがあり、こちらのコラムで詳しく紹介しています。ぜひご覧になってみてください。
禁欲期間にも気を配って
禁欲期間とは、一度射精を行った後、次の射精を行うまでの期間を言います。精液所見を改善するためには、生活習慣だけでなく、禁欲期間にも気をつけていただくことが大切です。不妊治療に取り組まれている方の中には、必要以上に禁欲期間を長く設ける方がいるため、注意が必要です。
精子は精巣で毎日作られ、精巣上体というところに蓄えられます。禁欲すると多くの精子が蓄えられるため、精子の数は増えます。しかし、精子は蓄えられている間に酸化ストレスによるダメージを受けるため、禁欲期間が長すぎると精子のDNA損傷率が高くなり、運動率が低下してしまいます。
最適な禁欲期間とは
WHOが発行したガイドラインによれば、2〜7日間の禁欲期間が推奨されています。一方、ヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)は3〜4日間を推奨しています。適切な禁欲期間については未だコンセンサスが得られておらず、これまで様々な研究が行われてきていますので、いくつか紹介したいと思います。
2017年の報告では、禁欲期間2〜7日のグループと7日以上のグループを比較した結果、2〜7日のグループの方が、体外受精での妊娠率や出産率が有意に高い結果でした。(Periyasamy AJ, et al. Fertil Steril. 2017 Dec;108(6):988-992.)
2020年の報告では、禁欲期間が4〜7日間のグループに比べ、4日未満のグループの方が着床率や妊娠率が有意に高かったとしています。(Jinhong Li, et al. Am J Mens Health. 2020 Jul-Aug; 14(4): 1557988320933758.)
2023年には、24個の論文を分析したレビューが発表されました。24個の論文では、例えば1〜3時間と3〜7日間や、1日間と20日間など様々な禁欲期間を比較検討しています。分析の結果、長い禁欲期間に比べ、短い禁欲期間の方が妊娠率は高く、出生率も報告している3つの論文全てで短い禁欲期間の方が高かった、としています。(Freja S, et al.J Clin Med. 2023 Mar; 12(6): 2219.)
最近注目されている「非常に短い禁欲期間」
2023年、イタリアの研究チームから1995〜2022年までの7つの論文を分析したレビューが発表されました。(Barbagallo F, et al. Antioxidants (Basel). 2023 Mar 20;12(3):752.)
この論文では、4時間以内という非常に短い禁欲期間ではART(体外受精や顕微授精)後の着床率、臨床妊娠率、出産率が有意に増加した、と報告しています。また、一度射精をしてから4時間以内に再度射精を行うと、精子の濃度や運動性が大幅に増加した、ということも報告しています。
4時間以内という非常に短い禁欲期間が、なぜ精子の量や質、さらにはARTの成績にまで良い影響をもたらすのか、というメカニズムはまだ明らかにされていませんが、一つの可能性として、酸化ストレスが減る可能性を挙げていました。禁欲期間が短いことで、精巣で作られた精子が精巣上体を通過する時間が短縮され、活性酸素(ROS)にさらされる時間が短くなる可能性があるとのことです。
精子が酸化ストレスを受けると、運動率が低下したり精子のDNAが損傷されることによって受精率などが低下し、男性不妊の要因となることが知られています。禁欲期間を極端に短くすることで酸化ストレスによる精子への悪影響が軽減され、精子がより若く、より健康になるのではないかと、この論文では述べられていました。乏精子症の患者さんでは、非常に短い禁欲期間がART成績を改善する一つの方法になるのではと考えられ、さらなる報告が待たれます。
おわりに
様々な研究から、禁欲期間は短い方が良いということが明らかになってきました。精液所見を少しでも良くするために、生活習慣の見直しだけでなく、禁欲期間にも気を配って妊活に取り組んでみてくださいね。
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