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不育症の特徴とは?流産の原因と検査・治療方法

2018/12/31

2018/12/31

妊娠に喜んだのも束の間、何らかの理由で妊娠が継続できず流産してしまった女性のショックはとても大きいものです。

まして流産を繰り返してしまったとなると、心と体へのダメージは計り知れません。赤ちゃんは欲しいけど、また流産するのではないかと妊娠が怖くなってしまう方もいらっしゃいます。

流産の原因にはいくつかありますが、今回は「不育症」の原因と検査方法、治療方法をまとめました。

不育症とは?流産の回数と妊娠週数で判断

不育症については、日本産婦人科学会でもまだはっきりとした定義は決まっていません。通常は連続して2回以上流産や死産、新生児死亡をした場合に不育症が疑われます。

特に流産を2回以上繰り返すと、女性の精神的なダメージも大きいため、検査を考え始めるケースが多いようです。

22週未満の流産が2回以上連続した場合


まずは「流産」の定義です。妊娠反応を確認するも、22週未満で胎児が母体から娩出されてしまうことをいいます。

流産を複数回経験する場合、2回繰り返すと「反復流産(はんぷくりゅうざん)」 、3回以上連続すると「習慣流産(しゅうかんりゅうざん)」と診断されます。

不育症と流産を区別することは難しいとされていますが、大きな違いとして不育症は妊娠期間で区別されていません。妊娠22週を境に胎児の娩出は流産と早産に分けられていますが、不育症は流産に加えて妊娠22週を過ぎた早産の場合も数えられます。

妊娠12週以降の後期流産もしくは死産


通常妊娠12週以降は流産の確率が下がることから、もしも妊娠12週以降の流産が1回でもあれば、不育症に限らずお母さんの体に“妊娠が継続できない原因”がある可能性も考えられます。

子宮の入り口から細菌などが入り込んで炎症を起こす「子宮内感染症」や、胎児や子宮の重みで子宮の入り口が勝手に開いてしまう「子宮頸管無力症(しきゅうけいかんむりょくしょう)」などです。

流産の原因を検査して原因を突き止めておくことで、次回の妊娠で流産や早産を防ぐことができるかもしれもしれません。

2人目以降で続けて流産・死産になった場合


例えば、1人目を妊娠し無事に出産したとしても、2人目以降の妊娠で2回以上連続して流産した場合には「続発性不育症」と診断されます。流産の原因を調べる検査を行い、妊娠に向けて治療をしていくことになるでしょう。

化学流産は不育症に含まれない


妊娠検査薬で陽性反応がでたのに、病院で超音波エコー検査をしても胎嚢(たいのう)など妊娠が確認できないことを「化学流産」といいます。

化学流産は流産のひとつですが、不育症には分類されません。病院で胎嚢が確認された後の流産であれば不育症に含まれます。

不育症の原因

不育症の割合


まだ日本全体での不育症の割合は明らかになっていません。しかし、妊娠や出産を経験したことがあれば、誰でも不育症になる可能性があります。

実は1回の妊娠で流産する確率は15〜20%もあります。厚生労働省が行なった調査によると、日本の一部地域では、妊娠経験がありながら流産も経験したことがある人は41%もいます。

そのうち流産を2回以上経験した人は6%、3回以上でも2%いました。流産を繰り返して不育症とされている女性は、妊婦の16人に1人の割合でいるのです。

毎年、妊娠が確認されるうちの数万人が不育症のリスクがあるということになります。(出典:ふいくラボ/不育症研究についてhttp://fuiku.jp/study/index.html)

不育症の約半数は赤ちゃんの染色体異常


流産の約80%が受精卵の染色体異常という報告がされています。これは「偶発的流産」。つまり偶然染色体異常が起こって流産に至ったということです。
(出典:ヘルスケアラボ/不育症/不育症の頻度http://w-health.jp/fetation/rpl/)

例えば3回流産を繰り返した人の約50%(0.8×0.8×0.8=0.512と計算されます)は、原因不明の染色体異常で流産を繰り返していることになります。

流産の原因が染色体異常ということは、不育症の原因がないということでもあります。

流産を繰り返すと妊娠することが怖くなってしまうかもしれません。でも明らかな原因がなければ、何も治療をしなくても約80%が次の妊娠で出産できるのです。流産の原因や確率を正しく知ると、少し気持ちが楽になりませんか。(出典:ふいくラボ/不育症研究についてhttp://fuiku.jp/study/index.html)

残りの約半数は詳しく検査を


染色体異常とされる偶発的流産以外にも、流産を繰り返すのには何らかの原因が別にあります。それを突き止めるのが不育症の検査です。

前述のように流産の多くは赤ちゃん(受精卵)の染色体の問題なので、検査を受けたからといって必ずしも原因が分かるわけではありません。

不育症の検査項目と費用

不育症検査の前には、流産の経験や妊娠中の経過、流産した際に行った染色体検査について話を聞かれます。その後、女性・男性ともに必要とされる不育症の検査が行われます。

男性は染色体異常を調べる血液検査が基本ですが、夫婦一緒に検査をすることが多いでしょう。夫婦で染色体検査をした場合の金額は、だいたい44,000〜48,000円です。

女性は血液検査だけでも染色体以外に血液凝固因子、内分泌、リン脂質抗体など項目がたくさんあります。染色体以外の血液検査の合計金額は、25,000〜30,000円程度です。

必要であれば、子宮内膜検査(約2,400円)や子宮卵管造影(約1,200円)、子宮鏡検査(4,000円)が保険適応で行われます。

また男性も必要に応じて、精子検査を行うなど検査内容は多岐にわたることがあります。

不育症についてはほとんどの治療と検査が自費です。行う検査は治療経過によっても異なりますので、負担にならないように事前に主治医に相談してみましょう。

不育症の原因と治療方法


不育症になるかもしれないとされている原因(以下、リスク因子)にはいくつかあります。

血液が固まりやすい体質や、子宮の形や内膜に異常がある場合、またホルモンの分泌によるものなどさまざまです。

これらリスク因子をもっているからといって、不育症になるわけではありません。あくまで不育症になる可能性が高くなるということです。

検査でリスク因子を特定することができれば、適切な治療によって出産できる確率が上がります。

自己免疫機能に異常がある


自己免疫機能を担う「抗リン脂質抗体」が陽性反応だと、血栓が作られやすい状態といえます。血液循環が悪いと、妊娠を継続することが難しくなってしまうことが分かっています。

血液検査で陽性と判定され、さらに血栓症や妊娠合併症(子宮内胎児死亡、妊娠高血圧症、子癇・胎盤機能不全による早産、習慣性流産)があった場合には「抗リン脂質抗体症候群」と診断されます。

抗リン脂質抗体症候群は、不育症のリスク因子の中でも高い割合を示す10.2%です。胎盤で血栓をつくると胎児への循環障害が起こり、流産に繋がります。

診断が確定されれば、血液を固まりにくくするための低用量アスピリンとヘパリンの治療(自己注射)が必要になります。どちらも保険適応なので、負担が少なく済みます。(出典:ふいくラボ/不育症とは/不育症のリスク因子http://fuiku.jp/fuiku/risk.html)

血栓が作られやすい体質


私たちの体には血液が固まるのを防ぐ第XII因子、プロテインS、プロテインCがあります。これらの血液凝固因子(けつえきぎょうこいんし)が不足してると、血栓ができる可能性が高くなります。

血液凝固因子の不足よる不育症のリスク因子の割合は合わせて14.8%です。流産や早産を引き起こしやすくしているという報告があるとはいえ、はっきりとしたことは分かっていません。(出典:ふいくラボ/不育症とは/不育症のリスク因子http://fuiku.jp/fuiku/risk.html)

子宮の形に異常がある


生まれつき子宮の形に異常がみられる、また子宮筋腫など何らかの理由で子宮の形が変わったものを「子宮形態異常(しきゅうけいたいいじょう)」といいます。

子宮の形が受精卵の着床を妨げてしまうのです。不育症の因子になっている割合は7.8%。中でも中隔子宮(ちゅうかくしきゅう)は流産になる確率が高く、手術の対象になることがあります。(出典:ふいくラボ/不育症とは/不育症のリスク因子http://fuiku.jp/fuiku/risk.html)

夫婦のどちらかに染色体異常がある


染色体異常が不育症のリスク要因である割合は、4.6%です。夫婦のいずれかが染色体異常であれば、卵子もしくは精子に異常が引き継がれるため受精卵にも異常が起こります。

正常な受精卵を得る可能性もありますが、染色体異常のある受精卵はほとんどが流産になります。着床前診断はできるものの、結局は根本的な治療がないため出産できる割合に差はありません。(出典:ふいくラボ/不育症とは/不育症のリスク因子http://fuiku.jp/fuiku/risk.html)

ホルモンに異常がある


ホルモンの分泌が不育症のリスク要因である割合は6.8%。甲状腺機能や糖尿病に関する検査をします。もしも数値に異常があれば、薬物療法や食生活など生活習慣の改善などを行います。(出典:ふいくラボ/不育症とは/不育症のリスク因子http://fuiku.jp/fuiku/risk.html)

子宮内フローラに異常がある


腸内フローラと同じく、子宮にも細菌がいて「子宮内フローラ」が存在していることが分かってきました。子宮内フローラ検査は、最近不妊症治療でも注目されている比較的新しい検査項目です。

着床障害や不育症の原因として「子宮内膜炎」があります。受精卵ではなく、子宮内膜の環境に原因があるケースです。この子宮内フローラのバランスが崩れることで、子宮内膜炎が生じます。

原因不明の不育症で悩んでいる人の中には、慢性子宮内膜炎を合併しているケースが少なくありません。今後さらに子宮内フローラが注目され、不育症の治療として期待されています。(出典:さっぽろ不育症・着床障害コンソーシアム/「子宮内フローラ研究会」の立ち上げhttp://sapporofuikusyotyakusyosyogaiconsortium.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=73269

不育症検査の助成金制度

不育症など妊娠に関しては保険適応とならない検査や治療が多く、金銭的に大きな負担を感じることもあるはず。

自治体によっては、妊娠したい夫婦を支えるために助成制度が儲けられています。検査や治療の内容によって対象にならないこともありますが、事前にチェックしておきましょう。

不妊症の専門医やカウンセラーに相談するには

1度でも辛い流産を何度も繰り返すのは、体はもちろん心にもダメージが大きいですよね。プライベートな問題なので、なかなか周囲にも相談できず1人で抱え込んでしまう方もいらっしゃるようです。

とはいえ次の妊娠のためにも、できるだけストレスを上手に解消することが大切です。勇気を出して、専門医やカウンセラーに相談してみるのもひとつの手です。

自分でもどうすれば良いか分からない場合には、かかりつけ医に相談して紹介してもらうのも良いでしょう。不育症に関する相談窓口もあります。

厚生労働省サイトの全国の不妊症相談窓口一覧(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-hoken/funin-02-01.html

執筆者

小坂 恵
看護師。総合病院(婦人科、外科、脳神経外科、整形外科、放射線科など経験)で6年勤務し、出産を機に退職。その後、美容皮膚科・形成外科クリニックと訪問看護ステーション(ダブルワーク)で看護師として復職し、現在6年目。看護師を続けながら、Webライターとして美容、医療、健康系の記事を主に執筆。美容の認定専門家として記事監修・コメント執筆を行っている。