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採卵って痛いの?~現場で勤務していた私の採卵の体験談から感じたこと~

2024/01/31

2024/02/13

 採卵って聞くと痛そうに感じますか。
 どうやって卵をとることができるんだろう。そんな疑問をもって採卵について調べる方も多いかもしれません。


 採卵の方法について調べると、痛みを伴いそうな手術だと感じると思います。
この痛みに対して気になる方、これが理由で不妊治療をなかなかステップアップできない方ももしかしたらいるかもしれません。
 まだそこまで積極的な不妊治療を考えてはいないけど、痛いものなのか気になるという方も読んでいただいているかもしれません。


 体外受精までステップアップすることになった方からも採卵時の痛みなどの質問や相談を受
けることも少なくはありません。
 しかしながら、実際に採卵日が決まると、痛みに対する怖さだけではなく、不妊治療における大きなステップアップへの期待も重なり、怖さを忘れる方がいるのも事実です。

 これもママになりたいという女性の勇気、強さがあってこそだと私は感じます。
今回は、不妊治療専門施設で勤務していた医療者として採卵の現場に関わっていた私が、実
際に採卵を受けて思ったことや感じたことを体験談として綴ります。

助産師・不妊カウンセラー 橋本七奈子

思春期から生理不順で婦人科に通い、大学生で卵巣腫瘍、片方摘出、結婚と同時に不妊治療開始、妊娠したら切迫早産になって⻑期入院とずっと産婦人科に通ってきました。どの時も産婦人科の助産師さん、看護師さんが寄り添ってくれました。私は全ての女性の味方になりたいという想いで助産師になりました。頑張りすぎないあなたらしさを大切できるライフステージを一緒に考えましょう。どんな小さなことでもいいです。ぜひあなたのお話聞かせてください。

採卵周期に感じる痛み

 私は、不妊治療の現場で勤務していたので、いざ自分が採卵を受けると決まった時、採卵することへの躊躇はありませんでしたが、痛みに対する恐怖を感じて、採卵を受けたみなさんの強さと勇気に対してしみじみ尊敬したことを覚えています。


 採卵周期にはいると同時に、毎日卵胞を育てるための刺激をするための注射が始まりました。
ここで少し余談ですが、私は痛みにとても弱いのです。現在は医療者として強くはなりましたが、元々看護学生の頃まで採血ですら痛みに対する緊張で血圧が下がり、意識をなくすことが数回ありました。
 学生同士の採血の練習も友人から刺されて痛みが強く、顔面蒼白になりました。
教員達には、看護師や助産師になることを考え直してみてはどうかと言われたこともありました。


 こんな私でも採卵に対する痛みよりも毎日の筋肉注射で卵が育ってほしい、1個でも多く、質のいい卵が育ってほしい、という期待や希望の方が大きく、採卵における痛みへの不安より期待や希望の方が勝っていました。

 
 次の診察の時の卵胞チェックにいい結果が聞けるようにという思いで毎日の注射の時間を心待ちにしていたほどでした。
 注射による刺激途中の外来では、卵胞の大きさや数をみながら、医師と刺激方法を調整したりしていました。


 採卵に対する知識がある私でもやはり、治療中は治療を受ける患者となるため、採卵に対する不安や心配はありました。その時は医師や診察、注射をしてくれる看護師には本当に精神的に助けてもらいました。
 痛みを感じやすくなる要因の一つは、心配や不安などの精神的な面から影響されるので、ぜひ医療スタッフへの相談はお勧めします。
もし通っている施設のスタッフへの相談がしづらければ、私たちも頼ってください。

採卵当日から採卵後までの痛み

 採卵当日の朝は、いくつ採卵できるかということで頭の中がいっぱいで痛みに対して不安に感じたのは採卵室に入る直前に点滴を開始した時でした。
 急に緊張した私でしたが、担当してくれた看護師さんの優しさや声かけで緊張を多少和らげることはできましたが、痛みに対する不安が頭をよぎっていました。

 実際の採卵は痛かったかといいますと、採卵中は麻酔で寝ており、起こしてもらった時には採卵室のベッドからストレッチャーへ移動する時でした。
 麻酔が完全に切れる前に起きた時に生理痛のような痛みは感じましたが、それから2時間ほど、うとうと寝ていました。
 施設によって違いがあるのですが、採卵の時には何らかの鎮痛や麻酔を使用することが多いです。


 採卵できる卵胞の個数が多いか少ないかなどにも違いはあるかもしれません。
 坐薬による鎮痛剤の使用で1−2個の採卵を試みることもありますが、採卵中は寝たいと希望される方が多いので、点滴による静脈麻酔を取り入れる医師や施設が多い印象です。
 麻酔を使って寝てしまうので、採卵中は痛みはないですが、それに伴って呼吸管理が必要となるので、採卵中は血圧計や酸素飽和度を調べるために指を挟むモニターを使用します。これで緊張感を感じるかもしれませんが、安心して採卵へ臨んでください。


 そのあとは2日ほど鈍痛などの痛みは確かにありましたが、それと同時にそろそろママになれるかもしれない、赤ちゃんがきてくれる日が近いかもしれないという希望があり、治療に対しての達成感を感じていたのを覚えています。
 

 採卵後の痛みについては、私の場合は卵胞を育てるために打っていた注射の影響で腹水が少し溜まったりして採卵翌日までは下腹部に違和感を感じていました。
 その後は、予想以上に早い回復で採卵後の痛みを引きずることはありませんでした。
これも、周囲の理解やサポートがあり、無理をしないで休息しながら過ごせていたからかも
しれません。
 

 最近では、採卵というと不妊治療だけでなく、卵子凍結を希望するために受ける方もいるの
で、今までよりも注目度が上がっていると思います。


 採卵は、身体の侵襲が高い治療です。それに採卵時だけでなく、卵を育てるために打つ複数回の注射による身体の痛み、保険や助成金などがでてもまだまだ自己負担が高額な治療の一つで精神的な痛みもあります。それだけでなく、短期間に複数回外来に通ったりする必要もあったりと時間的な拘束も大きく、ストレスがかかる治療になるので、どうしても痛みを感じやすい治療となってしまいます。


 これらの痛みに対して1番効果的に感じるのは、周囲のサポートや理解です。
不妊治療をされている方であれば、パートナーや家族と治療のスケジュールを共有することで、家事のサポート、治療に通う時の送迎のサポートなど直接的なサポートを得ることもできます。また、治療内容などを話して共有するだけでも精神的に気持ちが軽くなるなどのソフト面でのサポートを得ることもできます。

 卵子凍結が目的で採卵される方も同様に、今現在積極的な妊活や不妊治療を受けていなくても、家族や話せる友人がいたら精神的なサポートを得られると思います。
 しかしながら、卵子凍結が目的な方の場合だと、体外受精が目的で採卵されている方に比べると周囲の理解やサポートを得にくいこともあるかもしれません。
 そんな時は、専門家を上手く活用してください。

最後に

 実際に体験した痛みの弱い私からのご提案があります。


 採卵はママになる日に近づける大きなステップ、大きな階段を登ることができると、自分のことを褒めてください。また、実際に大きなステップなので、ママになれる日が近いことを楽しむこともおススメしたいです。
 辛い治療期間が続いている方がこの話を聞くと、少し疑問に感じる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、あなたが頑張っていることは事実です。あなたがママになるために治療を続けている、医療の力をかりて向き合っていることは事実です。

 そんな自分を認めてあげる、褒めてあげる時間は大切にしてほしいなと思います。
 私も思ったように卵が育たない時は、この局面を乗り越えて強いママになる、と弱りそうな自分を褒めまくっていました。ママになるための道のりを楽しむこともありました。


 みなさんにもどうか自分を大切にしながら採卵に臨んでほしいです。
 ちょっとでも辛くなってしまったら、心身の痛みを感じてしまいそうになったら。痛みを感じる前に私たちへご相談ください。
 専門家や同じ経験をした私たちを頼ってください。