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体外受精ってどんな治療

2024/01/14

2024/02/13

 不妊治療が保険適用となり「体外受精」という言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。体外受精と聞いてどんなことをイメージしますか?世界で初めて体外受精で妊娠・出産したのは1978年のことでした。体外受精はそれだけ歴史のある治療です。

 「体外受精ってどんな治療か」お話しをしていきたいと思います。
 

看護師/生殖医療相談士 濱田亜紀

約20年間、生殖医療に従事。現在、大阪府下の不妊治療専門クリニックに勤務。 オンラインでも心が通い合うような寄り添える可能性を広げていきたい。 ひとりで悩まずいつでも気軽に私たちを頼ってくださいね。

自然妊娠のプロセス

 体外受精のお話の前にまずは自然妊娠のプロセスからお話します。


 排卵日あたりで性交渉を行うと膣内で精子が射精され、精子は膣から子宮、子宮から卵管内に進入し卵管を遡り卵管膨大部という受精が行われる場所までたどり着き、卵子が来るのを待ちます。

 女性の卵巣で卵胞が発育し排卵、卵管采が排卵した卵子をキャッチし卵子が卵管内に取り込まれます。そうすると、待っていた精子が一斉に受精に取りかかるのですが、1個の卵子が受精できる精子は1個のみで、受精が完了すると胚は細胞分裂を繰り返しながら卵管を通過し子宮にやってきます。子宮にたどり着いた胚は孵化をし、子宮内膜に侵入して着床が完了します。ここまできてやっと妊娠が成立するのです。


 体外受精は端的に言うと前述の受精以降のプロセスを体の外で行い妊娠を目指す治療です。

                                        このプロセスを考えると、女性側では、排卵がうまくいかないと受精以降のプロセスに進めませんし、卵管が閉塞しているまたは切除後の場合は卵子と精子が出会うことができません。                                   

 男性側では、精子の数は膣で射精してから卵管膨大部にたどりつくまでさまざまな要因で減少します。数や運動率が極めて少ない場合は精子が卵管膨大部までたどり着かない可能性があります。無精子症の場合一般不妊治療では妊娠はできません。そのような場合に体外受精を行えば妊娠に至る可能性が出てきます。
 

体外受精の適応症

 体外受精は不妊治療専門病院に受診すればオートマチックに進められるような治療ではありません。以下に該当する方々が適応症になります。


・卵管因子(両側卵管閉塞)
・男性因子
・免疫性因子(抗精子抗体陽性)
・原因不明不妊症


 原因不明不妊症の場合に「原因がないのにどうして体外受精までしないといけないのか?」と悩むカップルは多くいます。不妊検査で「原因が見当たらなかった=原因がない」のではありません。妊娠に至らない原因はどこかにあるのだけれど、現在の不妊検査では見つけることができないということで、体外受精をして初めて不妊の原因が見えてくることもあります。
 

たまごの育て方・どうやって選ぶ?

 体外受精はまず、卵巣内で卵胞を育てることから始まります。施設により考え方が違うので、刺激方法については各施設の個性が出るところかもしれません。低刺激、中刺激、高刺激があります。
 その他、自然周期といって薬を使用せず自然に育ってくる卵胞を採卵する方法や、IVMといって未熟卵を採卵し体外で成熟卵に成長させたものを治療に使用する方法もあります。


 どの方法になるかは、アンチミューラリアンホルモン(AMH)の数値や、卵巣刺激開始時の血液検査で卵巣機能の確認、経腟超音波検査で胞状卵胞(月経時にエントリーしている卵胞)の状態を確認して刺激方法を決定します。


 AMHは女性の卵巣の中に卵子がどれくらい残っているかを調べる血液検査です。この数値で卵巣の予備機能を知ることができます。

 例えば、卵巣機能が低下しているのに排卵誘発剤の注射をたくさんしたとしても発育する卵胞数は増加しません。卵巣予備機能が低下している場合、刺激は少量にして数は少なくても良い質の卵子が獲得できることを目指します。自然周期や低刺激法を選択されることが多いです。場合によると卵胞が発育しない、採卵したが卵子が獲得できない場合があります。

 卵巣機能が高い場合は卵巣刺激により1回の採卵で複数個の卵子が獲得できることを目指します。採卵はリスクを伴う処置であるため、採卵を実施する回数を最小限に妊娠を目指すというイメージです。中刺激または高刺激が選択されることが多いです。ただし、発育する卵胞数が多すぎると卵巣過剰刺激症候群を発症してしまうリスクがあるため注意が必要です。


 卵胞がいいサイズに大きくなりホルモン値が上昇したらいよいよ採卵です。
 

体外受精のながれと合併症

採卵・受精


 採卵は無麻酔、局所麻酔、静脈麻酔下で経腟超音波の画面を確認しながら経腟的に卵巣を穿刺、卵子を採取する日帰り手術です。

 獲得した卵子は採卵当日に精子と受精させます。精液所見が極めて不良である場合や、女性の免疫性因子である抗精子抗体が強陽性の場合、無精子症で精巣内精子採取術での凍結精子を使用する場合、一般体外受精で受精障害を認めた場合は顕微授精が適応になります。

 施設によっては一般体外受精と顕微授精を半々に分けて行うスプリット法を実施することもあります。スプリット法のメリットは一般体外受精で受精障害が認められる場合でも顕微授精で受精が認められれば、受精卵が1つもなかったという事態を防ぐことができます。ただし、さまざまな要因で卵子が獲得できない、受精しない、胚の培養が進まない、胚の質が不良などで胚移植ができない、または胚凍結ができないという可能性はあります。
 

胚移植


 受精後は胚の培養を行い、採卵3日後(初期胚)か5日後(胚盤胞)または両方(2段階胚移植)に胚移植を行う、または胚を凍結保存しておき、違う周期で胚移植を行います。
 胚移植は超音波検査(経腹か経腟)で子宮を見ながら専用のチューブを使って子宮の中に胚を戻す処置です。

 

妊娠判定
 

 胚移植後2週間前後で血液検査を行い、妊娠した時に出るホルモン(hCG)が血中に確認されるか否かで妊娠の可否が確認できます。
 なかなか妊娠が成立しない場合や流産を繰り返してしまう場合は、経過により先進医療を併せて治療を行う場合があります。

 

合併症

卵巣過剰刺激症候群
 卵巣刺激により複数個の卵胞が育つと卵巣が腫れた状態になり、腹水や血栓症などの重篤な症状を引き起こす場合があります。


異所性妊娠
 体外受精においても異所性妊娠の可能性はあります。(自然妊娠と同程度)


採卵後の腹腔内出血や麻酔薬による副作用などのリスク
 採卵処置に伴い卵巣以外の臓器を穿刺してしまう可能性や麻酔薬による副作用を起こす可能性は皆無ではありません。
 

最後に

 体外受精は一般不妊治療に比べて妊娠率は高いですが、どなたでも妊娠できる魔法の治療ではありません。胚移植までは簡単に実施できると思われている方が多いように感じますが、胚移植に至るまでにさまざまな難関があります。

 妊娠という目標に向かって一目散に走っていく!というよりも、

①卵胞が育った、一歩前進!

②採卵で卵子が獲得できた、一歩前進!

③受精できた、一歩前進!

④胚移植できた、一歩前進!

 という風に、足元を見ながら一歩ずつ進んでいくような治療です。①~④の過程いずれも治療がストップしてしまう可能性はあります。


 しかし、①~④で治療がストップしたとしても、体外受精を実施すると不妊検査では見えない卵子の状態や受精状況、胚の状態を知ることができるため、その上で新たな対策を講じることができる可能性はあります。治療におけるメリット・デメリットを理解し、治療を選択する場面が来たら二人でよく話し合い、より良い選択ができるように正しい知識と情報を得るようにしてくださいね。