2人に1人は知らずに損?不妊治療の助成金、認知度低いことが明らかに
2017/10/31
不妊治療net では、20代~50代の女性を対象に、「不妊治療における社会からのサポート」に関する意識調査を行いました。調査の結果、6割以上の方が十分なサポートを得られていないと感じていることが分かりました。その中で、「助成金の拡充」を求める声が多い一方で、不妊治療中であるにも関わらず助成金に関して十分に理解していない方が2人に1人いるということも明らかになりました。
2017年6月に厚生労働省が発表した人口動態統計によると、2016年に生まれた子供の数(出生数)は97万6,979人となり、1899年に厚生労働省が人口動態統計をとり始めて以来はじめて出生数が100万人を割り込むなど、少子化に歯止めがかからない状況が続いています。また、先日2017年10月22日に衆議院総選挙が実施されましたが、今回の衆議院総選挙では自民党・公明党・社民党が不妊治療に関する公約を掲げているように、今不妊治療への関心が高まってきています。
不妊治療netでは今回、 20代~50代の不妊治療患者(※1)、不妊治療経験者(※2)、不妊治療未経験者(※3)、合計500名の女性に対して、社会からの不妊治療へのサポートに対する意識を調査しました。調査の結果、不妊治療経験者の6割以上の方が社会からのサポートに対して、十分得られないと感じていることがわかりました(図1)。
また、どのような社会からのサポートを欲しいかを調査したところ、6割以上の方が「助成金の拡充」を希望されていることが分かりました(図2)。加えて未経験者においては、「不妊治療患者、 予備軍の方への情報提供」、「不妊治療について相談できる窓口の拡充」について、不妊治療患者や不妊治療経験者よりも求めている割合が多い結果となりました。未経験者が情報不足に対して不安を抱えている実態が示唆されています。
さらに、助成金について不妊治療患者における利用実態を調査したところ、利用したことがある方は全体の3割程度に留まる一方で、約5割、つまり2人に1人は助成金の存在や手続きの方法を知らないということが明らかになりました(図3)。つまり、助成金は金額の拡充以上に利用促進に向けた認知の獲得が課題かもしれません。
社会で活躍する女性が増えている現代、晩婚化も進んでいます。そして仕事と子育ての両立に対するハードルの高さがあるため、結婚しているものの子供を産むことに積極的になれない女性も増えているようです。
先日の選挙でも、少子化対策として、「子供を育てるための支援」を公約に掲げている政党は多いですが、不妊治療に関する内容は自民党、公明党、社民党などでした。自民党は費用の助成、相談支援に加えて不妊の知識の普及啓発、公明党は費用の助成や相談窓口の設置、社民党は不妊治療を健康保険の適用にすることという内容でした。
少子化対策のためには、子供を育てるための支援のみではなく、妊活・不妊治療の支援も重要であると考えます。2014年に国内で実施された体外受精で4万7322人生まれたと発表されているように、不妊治療を受けるべき人が、適切なタイミングで適切な不妊治療を受けることで、出生数を引き上げられることが予想されます。そのためには、不妊に対する啓蒙(例えば、卵子の老化などの知識、妊活一年以内に病院へ)とハードルのクリア(例えば、不妊治療と仕事との両立できる環境整備、不妊治療支援金の利用促進)が大切になってくるでしょう。
不妊治療netは、引き続き調査を通じて妊活・不妊治療の動向を明らかにしていきます。
(※1)不妊治療患者:不妊治療を現在行なっている方・n=141
(※2)不妊治療経験者:不妊治療を現在行なっていないが、過去に行なっていた方・n=109
(※3)不妊治療未経験者・n=250
…ここでの「不妊治療」とは、病院等の医療機関の診断・指示を受け、行なう治療(定期的に通院するタイミング法も含む)を指します