胚移植のタイミング、移植前後の過ごし方
2024/02/03
2024/02/13
体外受精に挑戦している中で、特に胚移植の前後の過ごし方が気になっている方は多いのではないでしょうか。
注射をして卵を育て、採卵し、受精し、分割して大事に育ててきた胚を向かい入れることはこれまでの治療の集大成と言えます。これまでの治療で痛みに耐え、頑張ってきた努力の結晶でもあり、新しい命の始まりでもある胚移植は、体外受精の一連の治療の中でも特別な日です。
今回は気になる胚移植のタイミングや移植前後の過ごし方についてお伝えしていきます。
胚移植の方法
胚移植といってもいくつかの方法があり、どの方法が良いのか迷われる方も多いと思います。
まずは新鮮胚移植が良いのか、凍結胚移植が良いかという選択があります。
新鮮胚移植は採卵の周期に胚移植を行う方法です。
現在わが国で多いのは凍結胚移植になります。凍結胚移植は採卵で得られた受精卵(胚)を胚盤胞まで培養し、凍結保存します。胚移植日の朝に融解し、融解した胚を移植する方法です。
移植はどのタイミングでも良いわけではありません。適切な時期があるのですが、採卵で強い刺激を行うと移植のタイミングがずれてしまう可能性があります。そのため一度凍結し、改めて移植した方が凍結しやすいためこちらの方法が多く、また実際の妊娠率も凍結胚移植の方が高くなっています。
また凍結胚移植には自然周期とホルモン補充周期があります。こちらは通院の負担などが異なってくるのでご自身のライフスタイルなどに合わせて選ぶのが良いと言えます。
胚移植までに注意することは?
「内膜を少しでも厚くするためにやったほうが良い事は?」というご質問をよく頂きます。
移植する子宮は血流が豊富な場所でもあるので、血流が良い方が環境としては良いと言えます。
そのため適度に運動を取り入れてください。激しい運動ではなくストレッチやヨガなどで大丈夫です。毎日15分程度の運動を取り入れると良いですね。また身体を冷やしすぎるのも良くはないため身体を冷やす飲食を控え、お風呂もゆっくりと入浴できると良いです。
ストレスは移植前だけではなく、移植周期全体を通して少ない方が理想的です。
また、内膜がなかなか厚くならない場合は、ホルモンの補充方法の工夫や移植までの工夫で改善することが必要となるので、内膜の厚さが気になる場合には担当医と相談されると良いですね。
胚移植当日に注意することは?
胚移植当日の質問で多いのは、移植後の安静に関してです。
胚移植後の安静は医療機関によっても異なりますが、どちらかというと移植直後の安静時間は必要ないとしている医療機関が多くなっていると思います。
これは胚移植後の安静の有無が着床率に影響がないということが判ったからです。
そのため移植後の安静は必ずしも必要なものではありませんし、もちろん帰宅後も安静の必要はありません。
当日の入浴
入浴に関しては各医療機関で少し異なっていますが、胚移植の当日は入浴を避けシャワーのみにしましょう。移植への影響というよりは感染症を起こす可能性が考えられるからです。なお、プールに入るのもお控えください。
翌日からは血流を促す目的で湯船にしっかり入ることをお勧めします。ただし、長風呂やサウナなどは避けましょう。
胚移植後から妊娠判定までに注意することは?
一番質問が多いのはこの時期です。大事な胚を移植した後は自分自身がどのように過ごしたら良いのか一番気になるところですね。
「安静が良いの?」「運動はしても良いの?」「仕事は?」など様々な疑問と、より良い過ごし方が知りたいところです。
まず知って頂きたいのは胚移植後も通常の生活で良いということです。「良い」というよりも「そちらが良い」程度に思っていただけるといいですね。
安静にし過ぎてしまったり、胚移植後だからといって多くのことを制限してしまったりすると、通常と異なる生活にストレスを感じてしまいます。それは逆に良い環境では無くなります。
運動
運動に関しては妊娠のために日頃から取り入れておくことは良いことです。胚移植後は受精卵が着床するまで、じっと動かない方が良いと思われがちですが、胚移植後の安静は医療機関によっても異なりますが、どちらかというと移植直後の安静時間は必要ないとしている医療機関が多くなっていると思います。
これは胚移植後の安静の有無が着床率に影響がないということが判ったからです。
そのため移植後の安静は必ずしも必要なものではありませんし、もちろん帰宅後も通常通りの生活で問題ありません。
安静を意識することで動かずに血流が滞る可能性があります。横になるばかりではなくウォーキングのような適度な運動をして頂いた方が良いでしょう。ただし、運動強度が強いものは避けましょう。
自転車の使用に関しては、
胚移植後は振動が多いよりも少ない方が理想的です。自転車は車などに比べると体に感じる振動が大きいため、可能な限り控えると良いかもしれません。
仕事
仕事に関しては、人それぞれ仕事の内容が違うため、一概には言えませんが、基本的にはこれまでと同様の仕事であれば問題ありません。
いつもと変わらない業務を行うことで判定日まで気が紛れるということもあるかもしれません。
しかし仕事の内容が力仕事や肉体労働の場合は控えたり、今後を想定してこの機会に業務内容の見直しができると良いかもしれませんね。
食べ物
胚移植後の食事はどのような物が適切でしょうか。何か特定の食材を取り入れることで着床率を上げることはできませんが、着床環境を整えるという意味ではビタミンDの摂取が推奨されています。
ビタミンDは食事での摂取はなかなか難しいため、サプリメントでの摂取がお勧めです。また、卵巣や子宮は冷えの影響を受けやすい臓器と言われています。
暑い環境で育つパイナップル、マンゴーなど南国の食材やトマト、きゅうり、ナス などの夏野菜は体内の熱を下げる働きがありますので注意が必要です。
アルコール
移植後のアルコールの影響に関してははっきりしていませんが、妊娠中にアルコールを摂取すると、胎児の発育不全に繋がり、悪影響を及ぼします。不妊治療は妊娠に向かっての治療を行いますので、禁酒をお勧めしております。。
カフェイン
日本では妊婦へのカフェイン量の制限は明確にはしておりませんが、世界保健機関(WHO)は流産や新生児の低体重リスクを低減するために、1日のカフェイン摂取量が300mgを越える妊婦に対して妊娠中はカフェイン摂取量を制限するように注意喚起をしています。いずれも摂り過ぎはよくない、ということですので適度な量を心がけることが大切です。なお、コーヒー1杯(100ml)に対してカフェイン量は60㎎と言われているため、移植後はコーヒー1〜2杯程度にすると安心ということになります。
喫煙
より着床しやすくするためには喫煙を控える必要があります。
喫煙は子宮内膜血流低下から子宮性不妊症を引き起こします。卵巣の排卵機能低下を引き起こすとされています。また、移植の時期でなくても喫煙により、排卵機能低下・染色体異常の卵子増加の原因にもなります。たとえ妊娠できたとしても早期破水・前置胎盤など、胎児の成長にも関係するため、喫煙は控えていただくことをお勧めします。
性交渉
性交渉による子宮への直接的な刺激がオキシトシンというホルモンを分泌し子宮収縮を促します。また、乳頭への刺激も同じくオキシトシンを分泌します。また、精液の中にはプロスタグランディンという子宮を収縮させるホルモンが含まれています。これらの理由により、胚移植後の性交渉は子宮収縮を誘発し胚の着床を妨げる可能性があるためお勧めできません。
おわりに
胚移植後から妊娠判定までは通院がないことも珍しくありません。
だからこそ不安も多くなると思います。妊娠判定を迎えるその日まで気持ちが揺らいだり、不安になることが多いかと思います。インターネットで、検索をしたくなったり、体調の変化に敏感になりやすい時期です。
神経質になりすぎる必要はありませんので、過度に気にし過ぎずしっかりと栄養のある食事を取りながら穏やかな気持ちで過ごすと良いでしょう。今まで頑張ってきた自分やパートナーのことをしっかりと労ってあげる、日常生活はいつも通り過ごし、リラックスできる時間をあえて作ってみても良いかもしれませんね。ストレスを溜めないようお過ごしください。