【採卵するなら】自然周期と刺激周期 どっちがどっち?
2024/01/20
2024/02/13
体外受精をする際、「採卵に向けてどう卵巣を刺激し、卵子を育てていくか」は、妊娠できるかを決める大きなポイントの一つです。
卵巣刺激法は、薬を多く使用して多くの卵子を確保する方法から、薬を使用せずに自然に発育した卵子を獲得する方法まで、様々な種類があります。
ここでは刺激周期と自然周期について、それぞれの特徴や対象者、メリット・デメリットに焦点を当ててみましょう。
自然周期とは?
身体の負担の軽減を目的にする場合や、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが高い場合や、卵巣予備能が低く過去の刺激周期で採取卵子数が少なかった場合は自然周期を選択します。
自然周期は一般的によく行われているロング法やショート法と違って、注射を打たずに、完全の自然の排卵周期に合わせて排卵直前に採卵するか、内服の排卵誘発剤のみでの周期で採卵する方法です。
メリット:
何度も注射を打つ必要がない
採卵の針を刺すのは1-2回なので麻酔なしでも行える
自然に近い排卵周期で採卵できる
厳選されて自然に大きくなった卵胞から採卵するため、質のいい卵の可能性が高い
注射を使っての採卵で質のいい卵が採れなかった場合に期待できる
OHSSになる可能性が非常に低い
デメリット:
先に排卵してしまって採卵がキャンセルになるケースが刺激周期に比べ多い
1度に採れる卵が1~2個のため妊娠するまで毎月採卵になる
自然に任せているため採卵の時期が予定として組みにくい
刺激周期とは?ー「高刺激」
刺激周期では卵巣をホルモン注射によって刺激し、卵子を増やすことを目指します。この方法を「高刺激」といいます。これに対して「低刺激」という方法があり、これは内服薬を併用し、これにより注射の回数や量が少ない方法です。
「高刺激」
メリット:
複数個の卵子を得ることによって、よい受精卵が含まれる可能性も高まること
複数の凍結胚を得られる可能性があがることなど
デメリット:
毎日注射を打つことによる身体的・心理的・経済的負担
OHSSの可能性
①アンタゴニスト法
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を起こしやすい卵巣予備能力の高い症例に用いられます。月経周期3日目よりFSH/hMG投与が開始され、卵胞径15mm程度でアンタゴニスト投与が開始されます。卵胞径18mmを超えたところでトリガーが投与されます。ただしOHSSのリスクが高い場合にはアゴニストによるフレアーをトリガーとして使い、卵子成熟を促すことでOHSSの発生を抑制します。
*卵巣刺激症候群(OHSS)
女性の卵巣は親指大ほど(3~4㎝)の臓器ですが、その中の乱費王が不妊治療における排卵誘発剤に過剰に刺激されることによって、卵巣が膨れ上がり、お腹や胸に水が溜まるなどの症状が起こることです。重症例では腎不全や血栓症など様々な合併症を引き起こすことがあります。
メリット:
はじめの段階から下垂体ホルモンの抑制をしないので、ロング法・ショート法にくらべ卵胞が発育しやすい
OHSSのリスクがある場合は卵子成熟をHCGを用いずにアゴニスト点鼻薬を行うことができる
デメリット:
アンタゴニスト製剤を使用してもまれに早期に排卵してしまうことがある
アンタゴニスト製剤が高価なため、卵胞発育が遅い場合は費用負担が多くなる
②ロング法
採卵周期直前の高温期から排卵を抑制する点鼻薬を開始します。この点鼻薬を毎日使い続けることで、LHサージを抑制し、採卵日までに排卵してしまわないようにします。卵巣刺激注射は、アンタゴニスト法と同様に生理3日目から開始します。ロング法では、採卵34-36時間前のトリガーとしてHCGの注射しか使えませんので、OHSSにならないように注射の量に注意が必要です。卵巣予備能が中等から高い症例に用いられ、適応範囲が広いのが特徴です。
メリット:
前周期から薬でコントロールできるため、下垂体ホルモンを完全に抑制してから排卵誘発剤を使用するため、卵胞発育が均一になる。
排卵してします可能性がほとんどない。
採卵日のコントロールが容易
デメリット:
強い刺激で多くの卵子を確保できる方法ですが、抗ミュラー管ホルモン(AMH)が高く多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などが疑われる方の場合OHSSになる可能性が高くなる。
恒例の方や卵巣内に残っている卵子の数が少ないからは注射の反応が悪くなり卵胞が育たない可能性がある
注射量が多く、点鼻薬が追加で必要となるため費用が多くなる
前周期の避妊が必要
*多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
PCOSとは卵巣で男性ホルモンがたくさん作られてしまうせいで、排卵しにくくなる疾患で、女性の20~30人に1人の割合でみられます。排卵されない卵胞は卵巣内にとどまるため、超音波検査で見るとたくさんの卵胞を認めることから多嚢胞性卵巣とよばれます。
③ショート法
排卵を抑制する点鼻薬を投与初期に卵巣刺激ホルモンを上昇させる作用があるためそれを利用してロング法よりさらに強い刺激をすると同時に自然排卵も抑制する方法です。
点鼻薬と注射を同時に開始します。卵巣予備能が充分にあり、かつ卵巣の排卵誘発に対する反応性が低い場合に使用されることが多いです。
メリット:
アゴニスト開始直後2~3日間は、下垂体ホルモンのフレアアップを卵胞発育に利用できる
デメリット:
卵子成熟法にアゴニスト製剤を使用できず、HCGを使用するため、OHSSになる可能性がある
卵巣予備能が低い場合は、抑制が効きすぎて卵胞発育が悪くなることがある。
薬の影響が次周期に残りやすくなる
④PPOS法
PPOS法とは、黄体ホルモン製剤で採卵前の排卵を防ぎつつ複数の卵胞を育てていきます。排卵前から黄体ホルモンを投与するためその周期の子宮内膜の状態が着床に適さなくなりますので、新鮮胚移植はできません。
メリット:
アンタゴニスト注射に比べ黄体ホルモンの内服薬は安価のため費用が抑えられる
OHSSのリスクが高い時はトリガーを点鼻薬で行えるので安全
デメリット:
黄体ホルモンを使うため高温期のホルモン状態になってしまし、新鮮胚移植が出来ない
またデータが少なく、他の刺激法に比べ歴史が浅く方法が確立されていない
刺激周期とは?ー「低刺激(マイルド法)」
マイルド法とは、卵巣刺激法のうち、卵巣刺激が比較的緩やかな方法のことです。質の良い卵子を1つでも多く採卵するために卵巣を刺激する点は高刺激法と同じですが、刺激の方法が緩やかなのが特徴です。
月経3日目よりクロミッドやレトロゾールが5日間投与され、卵胞を育てます。卵胞の発育状態を確認しながら、必要な場合は少量の排卵誘発剤を注射。必要がない場合は内服薬のみです。
メリット:
注射の回数が少なく、経済的な負担を抑えることができる
OSHHの副作用の心配がほぼない
年齢が高くAMHの値が低めの方にも適応できる
*抗ミュラー管ホルモン(AMH)
AMHとは発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンで、女性の卵巣予備能を知る指標になると考えられています。AMH値を調べることで、卵巣が赤ちゃんとなりえる卵子をどの程度排卵する能力があるか(卵巣予備能)を知ることが可能です。
デメリット:
獲得できる卵子の数が少ない
子宮内膜が薄くなることがある
卵胞の育ち具合によって、刺激法が変更になることもある
さいごに
いかがだったでしょうか。卵巣刺激といっても高刺激から自然周期までさまざまな選択肢があります。ご自身の卵巣予備能などから最適な刺激方法を選択していただく一助となれば幸いです。
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2023.12.10 2024.02.13